ものづくりの裏側を取材する連載記事「Behind the Product(ビハインド・ザ・プロダクト)」の第2回目はレクサス「LBX」です。これまでトヨタの「小さなクルマ」を得意としていたトヨタ自動車東日本で生産されています。なぜこの場所なのか、その理由に迫ります。

「小さな高級車」ことLBX、東北から世界に羽ばたく

 レクサスが手掛けた「小さな高級車」こと「LBX」。ブランドホルダーのひと言から開発がスタートしたと言います。
 
 そして生産拠点となる場所も、様々な想いが詰まった場所でした。

 LBXは、2023年6月5日にワールドプレミア。そして日本では11月9日に発売されました。

 2024年3月時点の国内におけるLBXの販売は、5200台となり好調なようです。

 そして発売から約4か月後となる2024年4月17日にLBXが生産されるトヨタ自動車東日本の岩手工場で式典「新型LBX-東北と走る-」が開催されました。

 トヨタグループ17社のひとつとなるトヨタ自動車東日本は、1946年に設立された関東自動車工業、セントラル自動車、トヨタ自動車東北と名前を変えつつ、歴史を紡いできました。

 2011年3月の東日本大震災の後、一過性の寄付というカタチではなく、震災で多くのものを失った東北で「自動車産業の基盤を構築する」という継続的な想いから名前をトヨタ自動車東日本に変えて設立されます。

 そんな同社では、これまで様々なトヨタ・レクサスのクルマを手掛けてきましたが、トヨタ自動車東日本になって以降、トヨタのコンパクトカンパニーに一体になって「小さなクルマ」をメインに生産してきました。

 現在では、ふたつある工場のひとつ宮城大衡工場では「ヤリスクロス」「カローラアクシオ」「カローラフィールダー」「シエンタ」「JPN TAXI」の生産や、自動車部品(エンジン・トルクコンバーター・アクスル・電子制御ブレーキなど)も手掛けています。

 もうひとつの岩手工場では「アクア」「ヤリス」「ヤリスクロス」を生産していましたが、今回新たにレクサスのLBXが加わりました。

 昨今のトヨタ自動車東日本は、小さなクルマを作ることに長けていた、そして新たなチャレンジとして高品質なレクサスを手掛けるということなど様々な想いが重なったことで岩手工場での生産となったようです。

 なお現在は、アクアと同じラインで組み立てる混流生産となりますが、LBXのために専用工程を新設。

 ここでは、レクサスとしての高品質を確保するために、パワーウインドウなどの電子パーツの異音を確認する「静音ブース」、動的な異音を確認する「ラフロードテスタ」、塗装面の仕上げを確認する「照明ブース」、を設けています。

 なおLBXの生産には組み立てや専用工程などに関わる人がほかのレクサスを手掛ける工場で研修を受けるなど「高品質なLBX」を作り上げることにこだわっていました。

 そうした取り組みにより、トヨタ自動車東日本の全体でレクサス品質を通した「もっといいクルマづくり」が浸透しているという良い効果も見られているようです。

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 なお前述の式典「新型LBX-東北と走る-」では、東日本大震災後に設立されたトヨタ自動車東日本がLBXの生産をきっかけに地域や関係各所に感謝を伝える機会となる場となりました。

 本式典には、トヨタの豊田章男会長やトヨタ自動車東日本の石川洋之社長をはじめ、岩手県の達増知事、金ケ崎町の高橋町長(「高」は、はしご高)など多くの来賓が参加し、東北から羽ばたくLBXに想いを馳せていました。

ところでLBXとはどのようなクルマ?

 前述の通り、レクサスの新たなモデルとして登場したLBX。

 レクサスのブランドホルダーとなる豊田章男氏の次のような想いから誕生したと言います。

「これまでの高級車の概念を変える、コンパクトサイズながらも走りやデザインも上質であるサイズのヒエラルキーを超えたクルマをつくりたい」

 プラットフォームは、LBX専用に鍛え直したコンパクトカー向けTNGAプラットフォーム「GA-B」を採用。トヨタのコンパクトSUV「ヤリスクロス」などでも使われていますが、細部に渡り異なっています。

 見た目は、機能的本質や動的性能に根差したプロポーションと上質で存在感のあるデザインに。

 なお正月の定番「鏡餅」からインスピレーションを受けたというエピソードもあるようです。

 質感の部分では、クラスレスコンパクトで新しいラグジュアリーの価値を提供することを目指して開発されました。

 また電動化技術を進化させてきたレクサスによる新開発のHEVシステムを採用するなど走りの面でも「レクサスらしさ」を体現しています。

様々な想いが詰め込まれて誕生した「LBX」

 なおLBXでは、オーダーメイドシステム「Bespoke Build」を採用しています。

 これは多くのお客様のライフスタイルや好みにマッチする世界観や、内装色・シート素材・刺繍パターンなどを選ぶことで、唯一無二の1台を作りあげるものです。

 こうした部分でも「小さな高級車」としての価値を高めています。

 なお価格は「“Cool”(2WD)」の460万円から「“Bespoke Build”(AWD)」の576万円です。