通勤や通学のために、毎日起床する時間帯を決めている人は多いと思いますが、日によっては眠気が残っていることがあります。起床時に眠気が残っているのは、なぜでしょうか。朝、気持ちよく目覚めるにはどうすればよいのでしょうか。

 気持ちよく起床するコツのほか、起床時に摂取するとお勧めの食べ物や飲み物について、姿勢科学や健康科学などに詳しい、姿勢調整師の金野正博(こんの・まさひろ)さんに聞きました。

就寝前の行動を見直すこと

Q.そもそも、1日にどの程度の睡眠時間が必要なのでしょうか。適切な睡眠時間について、教えてください。

金野さん「個人の体質や生活習慣によって大きく異なりますが、適切な睡眠時間は、6〜8時間といわれています。年齢によっても適切な睡眠時間は異なり、10代では8〜10時間、成人以降50代までは6時間半〜7時間半、60代以上では平均6時間弱と報告されています。高齢になるほど、必要な睡眠時間が短くなる傾向にあります。

厚生労働省は、働く世代に必要な睡眠時間は6〜9時間と示していますが、働き盛りの20代から40代の人は慢性的な睡眠不足の傾向にあります。できるだけ毎日6時間以上の睡眠を取るよう意識しつつ、自分にとっての理想の睡眠時間を見つけましょう」

Q.起床時に眠気が残っている場合がありますが、なぜなのでしょうか。考えられる原因について、教えてください。

金野さん「起床時に眠気が残る主な理由として、まず睡眠時間の不足が考えられます。睡眠時間が不足すると、体力や脳の機能の回復、体内のリセットが完全に行われず、眠気が残ることがあります。

また、睡眠サイクルの乱れも影響します。夢を見る『レム睡眠』と大脳を休める『ノンレム睡眠』が約1時間半の周期で交互にやってきます。このサイクルが乱れて『ノンレム睡眠時』に目が覚めると、一般にいわれる『寝起きが悪い』状態になり、眠気が残りやすくなります。

睡眠の質の問題もあります。睡眠の質は、日常の生活習慣や睡眠環境に大きく左右されます。質の低下の主な原因は、就寝前のスマホやパソコンの使用、飲酒、喫煙、ストレス、日中の運動不足などがあります。特に寝酒は中途覚醒を引き起こすことがあります。

室内環境も重要で、体に合わない寝具を使うと寝返りが打てないほか、起床時の腰痛や首痛などの原因になります」

起床時に眠気やだるさを感じるのはなぜ?

Q.起床時に眠気が残っている場合や体が何となくだるい場合、病気の可能性はあるのでしょうか。

金野さん「起床時に眠気やだるさを感じる場合は、多くの要因によって引き起こされる可能性があります。これらの症状は必ずしも病気を意味するわけではありませんが、病気の可能性を完全に排除することはできません。考えられる要因や病気は次の通りです。正確に知りたい場合は、専門医による診療が必要です」

(1)睡眠不足、睡眠の質が低い
・不規則な睡眠スケジュール
・睡眠時無呼吸症候群や不眠症などの睡眠障害
・ストレスや不安が原因で寝付きが悪く、十分な睡眠が取れていない

(2)栄養不足や脱水
栄養や水分の摂取不足が原因で体がうまく機能していない

(3)過度のストレスや心理的問題
長期間のストレスやうつ病、不安障害などが原因で体調不良を引き起こしている

(4)慢性疾患
甲状腺機能低下症や糖尿病、慢性疲労症候群など、慢性的な健康問題が原因で疲労や体調不良を引き起こしている

(5)生活習慣病
長期にわたる不健康な食生活や運動不足が原因で体調不良を引き起こしている

(6)その他の病気の可能性
心臓病や肺疾患、感染症など、他の健康問題が隠れている可能性が考えられる

これらの症状が継続する場合は、医療機関を受診し、適切な診断とアドバイスを受けることが重要です。また、適切な睡眠やバランスの良い食事、定期的な運動、ストレス管理など健康的な生活習慣を心掛けることが、体調と眠りの質を改善する上で役立ちます。

Q.起床時に気持ちよく目覚めるための対処法について、教えてください。

金野さん「起床時に気持ちよく目覚めるための対処法をご紹介します」

(1)日中に軽い運動をする
軽い疲労感を感じる運動は、就寝時に速やかに入眠できる環境を提供します。

(2)就寝の数時間前からスマホやパソコンを使用しない
寝る前にスマホやパソコンを使用すると、画面から発せられる青色光(ブルーライト)が、睡眠ホルモンである「メラトニン」の分泌を妨げてしまいます。

(3)飲酒や喫煙、カフェイン入り飲料の摂取を控える
アルコールやニコチン、カフェインが脳を興奮させます。

(4)夕食は就寝の3時間前までに摂取し、軽めに済ませる
食べ物を消化するのに時間がかかり、睡眠の質に影響します。夕食は軽めにしておきましょう。

(5)入浴は就寝の2時間前に済ませ、熱いお湯につからない
入浴はリラックス効果を高めるため、就寝の2時間前に済ませ、過度に熱いお湯につからないようにしましょう。

(6)就寝前の過度な水分補給を控える
寝る前に必要以上に水分を摂取すると、尿意を催して目が覚めてしまいます。

(7)適切で快適な寝具や枕、寝間着を使用する
適度な硬さのマットレスや適度な高さの枕のほか、吸湿性のいい、締め付けのきつくない寝間着を選びましょう。

(8)部屋の温度、湿度、明るさに気を付ける
室温は18〜22度を保ち、湿度は40〜60%を目安にしましょう。また、朝の日光の明るさで覚醒しないように遮光カーテンを使用すると良いでしょう。

起床時にお勧めの飲み物&食べ物は?

Q.起床時に体の活動を活発にするのに効果的な飲み物や食べ物はありますか。

金野さん「起床時に体に良い飲み物や食べ物を取ることは、体の活動を活発にし、1日を健康的にスタートさせるのに非常に効果的です。次のような飲み物や食べ物がお勧めです」

【飲み物】
(1)水、さゆ

寝ている間に失われた水分を補給し、体の代謝を促進します。

(2)緑茶
抗酸化物質が豊富で、脳の機能を向上させる効果が期待できます。

(3)レモン水
ビタミンCが豊富で、免疫力の向上や消化を助ける効果があります。

(4)野菜や果物のスムージー
栄養価が高く、消化に優しいです。

(5)ハーブティー
カフェインが少なく、リラックス効果が期待できます。

【食べ物】
(1)全粒穀物のシリアルやパン

エネルギーを長時間供給するほか、食物繊維が豊富です。

(2)オートミール
心臓の健康維持に良く、満腹感を長持ちさせます。

(3)ヨーグルト
タンパク質を含み、健康な腸内環境を促進します。

(4)果物
例えば、バナナやリンゴ、ベリー類などは、ビタミンやミネラル、食物繊維が豊富なのでお勧めです。

(5)ナッツやシード
アーモンドやチアシードはオメガ3脂肪酸やタンパク質が豊富です。

(6)卵
高品質なタンパク質とビタミンが含まれています。

これらの食品は、エネルギーやバランスの取れた栄養を供給し、1日を通じて健康と活力をサポートします。ただし、個人の健康状態やアレルギー、食事制限の有無に応じて、適切な食品を選ぶことが大切です。また、朝食をバランスよく取ることは、1日の食事管理にも効果的です。

Q.ちなみに、起床時に体が不調な場合はどうすればよいのでしょうか。

金野さん「個人的には起床時に不調を感じたら、スライスしたショウガをさゆに入れて飲むようにしています。ショウガに含まれる成分と温かい水を組み合わせることにより、次のような効果があります」

(1)消化の促進
ショウガには消化を助ける性質があり、胃腸の不調を和らげる効果があります。これにより、朝の胃のむかつきや不快感を軽減することができます。

(2)代謝の向上
ショウガは体を温める効果があり、代謝を促進することが知られています。これにより、体温の上昇や脂肪燃焼の促進に役立つ可能性があります。

(3)抗炎症作用
ショウガに含まれる「ジンゲロール」という成分には抗炎症作用があり、筋肉痛や関節痛、喉の痛みの緩和に効果的です。

(4)免疫力の強化
ショウガには抗酸化物質が含まれており、免疫システムを強化するのに役立ちます。これは特に風邪やインフルエンザが流行する季節に有益です。

(5)血行促進
ショウガは血流を良くする効果があり、全身の血行を促進します。これにより、寒い朝に体を温めるのに役立つとともに、エネルギーの感覚を高めることができます。

(6)吐き気の軽減
ショウガは朝の悪心や吐き気を抑える効果があり、特に妊娠中のつわりや乗り物酔いの緩和に有効です。

これらの効果により、ショウガ入りのさゆは朝の健康的なスタートに役立ちます。ただし、個人によってはショウガが合わない場合もあるため、体調に異変を感じた場合は摂取を控えることが重要です。また、特定の病状や薬を服用している場合は、ショウガの摂取が影響を及ぼす可能性があるため、事前に医師や栄養士に相談することをお勧めします。