マンションの物件では、タワーマンションに代表される「高層マンション」が多く存在します。一般的に、高層マンションの「高層階」は人気が高い傾向にありますが、「実際どうなの?」「デメリットが気になる」といった疑問の声も聞かれます。マンションにおける“高層階ならでは”の実情とは、どのようなものなのでしょうか。不動産鑑定士・宅地建物取引士・賃貸不動産経営管理士の竹内英二さんに聞きました。

眺望や景観、日照には優れているものの…

Q.そもそも、マンションにおける「低層」「上層」「高層」「超高層」の定義はあるのでしょうか。

竹内さん「『低層』や『上層』、『高層』、『超高層』といったものに、確固たる定義は存在しません。

『低層』は、一般的に1〜2階を指すことが多いです。『上層』は、高い建物の上の方にある階のことを指し、特に階数を指し示す言葉ではありません。エレベーターが下層階行きと上層階行きに分けられていれば、半分より上の階が上層階と呼ばれます。

また、『高層』も高い建物を指す言葉であり、具体的な階数を表す用語ではありません。エレベーターが低層階行き、中層階行き、高層階行きに分かれていれば、上の階の3分の1が高層階ということになります。

そして『超高層』も、特に階数の定義は存在しない言葉です。建築基準法では、高さが60メートル超の建物は『時刻歴応答解析』という特殊な構造計算が必要となることから、住宅の階高(床から上階の床までの高さ)が3メートルとすると、20階超が超高層に分類される、と捉える人もいます」

Q.一般的に、マンションの「高層階」以上の階は人気が高いようですが、これはなぜだと思われますか。

竹内さん「高層階は、眺望や景観、日照に優れている点がメリットです。特に都市部のマンションは、周囲に高い建物があることから、低層階と高層階では眺望が大きく異なります。周囲の建物よりも高い位置にある高層階では、眺望が開けるため、同じマンションでも見渡せる景色がかなり違います。

また、周囲の建物よりも高くなると、周辺から影を落とされなくなり、日照条件もよくなります。日照条件のよい高層階の部屋は、朝から夕方まで比較的明るいです」

Q.一方で、高層階“ならでは”のデメリットもあるのでしょうか。

竹内さん「あります。高層階ならではといえるデメリットとしては、次の3点が挙げられます」

【地震時の揺れが大きい】

一般的な耐震構造のマンションであれば、高層階ほど地震時の揺れが大きくなります。高層階は、地震時にすぐに逃げにくい点もデメリットです。

【停電時に困ることが多い】

停電でエレベーターが止まると、階段での昇降が必要となります。給水ポンプも止まれば、水も断水するため、生活に困ることが多いです。

【風が強い】

高層階は風が強いという点がデメリットです。タワーマンションでは洗濯物の外干しができない物件もあります。一般のマンションでも、高層階で洗濯物を干す場合は、風で飛ばされないようにしっかりと固定することが必要です。

Q.高層階の物件を選ぶ(購入する)際にチェックしておいた方がよいポイント、注意点とは。

竹内さん「竣工(しゅんこう)前に購入する新築マンションは、実際に部屋を確認することができないため、どのような眺望になるか想定しておくことが必要です。最近では、販売会社がドローンで撮影した映像を見せてくれる場合もあります。映像がない場合は、近隣の建物で同じ高さまで行き、眺望を確認してみるのも一つの方法です。

中古マンションは、実際に眺望を確認できる点がメリットといえます。西向きの部屋であれば、夕方にどの程度の西日が差し込むかを確認しておくと安心感があります。北向きの部屋であれば、日中、暗くないかを確認することがポイントです」