顔の産毛を自分でそったり、理容室でそってもらったりする人もいれば、まったくそらない人もいます。顔の産毛は定期的にそった方がよいのでしょうか。それとも、放置しても問題ないのでしょうか。

 顔の産毛をそるメリット、デメリットのほか、そる際の注意点について、「ナチュラルAGAクリニック」(東京都目黒区)統括院長で皮膚科医の新行内出(しんぎょううち・いずる)さんに聞きました。

化粧ノリが良くなる一方で肌を傷つけやすい

Q.顔の産毛は定期的にそった方がよいのでしょうか。それとも、放置しても問題ないのでしょうか。

新行内さん「そもそも、体の毛には軟毛と硬毛の2種類があり、顔の産毛は基本的に軟毛のことを指します。軟毛は顔や体の大部分を覆っている、ほとんど目に見えない綿毛のようなものです。明るい日光の下で顔を注意深く観察すると、頬や額、上下の唇、首、顎、もみあげの部分に軟毛が見えることがあります。軟毛には体温を調節し、汗を蒸発させる役割があります。

硬毛は濃くて太い毛です。男性の場合、上下の唇やもみあげ、首、顎の部分に硬毛が生え、ひげは硬毛に該当します。女性の場合もこれらの部位に硬毛が生えることがあります。

基本的に軟毛、硬毛は自然に生えるものなので、放置しても特に問題ありません。気になる場合は、顔の産毛をそったり、脱毛をしたりするなど、メリット、デメリットを考えた上で処理をしても良いと思います」

Q.では、顔の軟毛(産毛)や硬毛をそるメリット、デメリットについて教えてください。

新行内さん「顔の軟毛や硬毛をそるメリットとしては、毛やごみ、余分な油分、角質が取り除かれ、肌の見た目が明るくなります。また、化粧ノリが良くなるため、化粧持ちも良くなるでしょう。特に男性で硬毛が多い場合は、見た目の印象が悪くなるかもしれないため、顔の毛をそるメリットがあるでしょう。

デメリットとしては、シェービングをすると毛先が鋭くなるため、毛が濃くなったり、太くなったりするような錯覚を引き起こす可能性があります。実際には顔の毛をそっても、毛が濃くなったり、色が変わったりすることはないといわれていますが、毛が濃くなった印象を受けることもあるかもしれません。

また、顔の毛をそる際に肌を傷つけてしまうことがあるほか、硬毛をそると、その後、新しく生えてくる毛が皮膚の下に埋没し、『埋没毛』と呼ばれる痛みを伴う隆起が発生する可能性があります。毛穴が詰まってしまうと炎症を起こす可能性もあるため、注意が必要です。軟毛の場合は、そっても埋没毛が発生することはないといわれています」

Q.顔の軟毛や硬毛をそるのに適切な頻度や注意点について、教えてください。市販のかみそりを使っても問題ないのでしょうか。

新行内さん「顔の毛をそる際は、まずは洗顔をして肌を清潔にしてください。肌がしっとりした状態でそるか、肌が敏感な場合はシェービングジェルや保湿ローションなどを顔に塗ってからそりましょう。顔そり用のかみそりが市販されているため、そちらを使うのが良いでしょう。

かみそりは何回も使用すると切れ味が悪くなるほか、汚れによって雑菌が増えるため、そのまま使い続けると肌荒れの原因となります。かみそりを2〜3回使用したら、新しい製品に交換するようにしましょう。

顔の軟毛をそる頻度は、肌へのダメージを考慮すると、月に1回程度にとどめるのが良いででしょう。もし毛が生えるスピードが早い場合はご自身のペースに合わせて、肌に負担がかからない程度に適切に処理を行いましょう。そった後は保湿を忘れないようにしてください」

Q.頬の軟毛や硬毛をそっているときに皮膚を傷つけてしまった場合、どのように対処すればよいのでしょうか。

新行内さん「まずは雑菌の侵入を防ぐために、傷口を水でよくすすぎましょう。近年は、傷の消毒をしない方が良いといわれています。消毒の必要はありません。傷がひどくない場合はワセリンなどを塗って保湿し、経過を見てもいいかもしれませんが、傷がひどい場合や、ご不安な場合は決して自己判断をせず、皮膚科を受診してください。

また、日焼けやマッサージなど、肌に刺激になるようなことは行わないようにしてください」

Q.ちなみに、顔の軟毛や硬毛が伸びやすい場合、どのような原因が考えられるのでしょうか。

新行内さん「顔の毛の伸びやすさは、ご自身の体質の影響が大きいと思います。ただし、体毛が多い場合は『多毛症』の可能性があります。

女性の多毛症の原因として代表的なものに、『PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)』と呼ばれる病気があります。PCOSは男性ホルモンの過剰分泌と女性ホルモンの低下により、顔の毛をはじめとした体毛の増加を引き起こします。

PCOS以外にも、ホルモン異常を引き起こすさまざまな病気によって多毛症になることが知られています。体毛が多いと感じた場合は何らかの病気の可能性があるため、医療機関の受診を検討してみてください。

このほか、近年は男性、女性問わず、AGA(薄毛)治療に使われる『ミノキシジル』と呼ばれる飲み薬の副作用で多毛症を生じるケースも多いです。ミノキシジルの服用を中止すれば頬のムダ毛が改善されるケースが多く、また同じミノキシジルでも塗り薬では体毛は増えにくいので、もし体毛が気になる場合は飲み薬以外のAGA治療を検討しても良いでしょう」