4月12日(金)から14日(日)まで開催された北米最大級のオーディオショウ「AXPONA(アクスポナ)」。天候にも恵まれ、非常に活気あふれる3日間となったが、改めてこのショウならではの魅力、そして傾向を振り返ってみたい。

一つ前の記事でも触れた通り、こちらでは音楽ソースはほぼほぼネットワーク再生が活用されているのが印象的だった。ストリーミングサービス(qobuz)もしくはRoonのいずれかが多く、一部ローカルファイル再生も見受けられたが、レコードやCDは相対的に少なめであった。

興味深いのは、韓国のaurender製品をデモンストレーションに使用しているブースが非常に多かったことだ。日本国内におけるDELAやfidataのポジションに近い、といえば多少イメージが湧くだろうか。次点でポルトガルのInnuos、香港のLUMINの存在感が大きい。

Innuosは残念ながら国内未導入なので触ったことはないが、aurenderとLUMINに関していえば、操作系の使い勝手が良く、ネットワークやデジタルのノイズ対策を丹念に研究し、音質を追い込んでいるメーカーという共通点がある。オーディオ機器としての安定性・信頼性がデモンストレーションでも活用される大きな理由に違いない。

Innuosのフロントパネルが直線的にもりあがった独特のデザインを見たことがある方も多いだろう。ネットワークプレーヤー、CDリッピング可能なプレーヤー(ストレージ内蔵)、強化電源などをラインナップしているようだ。

アメリカ市場では音楽再生の主流はストリーミングに完全に移行した、というのはしばしば報道される話だが、オーディオ市場においてもその影響は顕著に表れている。会場でqobuzが多く使われていたのはおそらくスポンサードの関係と思われるが、いくつかのメーカーからは「TIDALよりもqobuzの方が音がいいかも」という声が聞かれた。サービスごとの音質差も今後の大きなトピックになりそうだ。

LUMINの開発スタッフにも話を聞くことができた。フラグシップモデルの「X1」を中心に、最新機種のネットワークプレーヤー「D3」やサーバーとハブが一体化した「L2」を中心にデモンストレーションを実施。部屋は2つ用意され、ひとつはMAGICOの「S3」、もうひとつはDeVore Fidelityをスピーカーとして組み合わせている。

LUMINは、Amazon Musicへの対応を進めていて、年内には対応できそうとのこと。「LUMIN App」から楽曲選択・再生ができるように準備をしているという。またQobuz Connect(TIDAL ConnectのようにTIDALアプリ側からプレーヤーを操作できるようになるもの)もまもなくサービスインが予定されており、そちらにも対応予定。またSpotifyについても「まもなくHiFi(相当のサービス)がスタートするという話を聞いています」という情報も教えてくれた。

aurenderでもLUMINでもInnuosでもないところは、ほぼ「Roon」である。アメリカ市場ではRoonはもはや必須と言われるくらいに影響力を持っているらしく、Roon Ready対応機がここまで増えているのか、というのは新鮮な驚きでもあった。

もうひとつ印象的だったのはGrimm Audioのブース。先日、最新のRoon Server「MU1」「MU2」についてもいち早くレポートしているが、こちらではLTAの真空管アンプとZELLATONのスピーカーを組み合わせてデモストレーションが行われていた。

Grimm Audioの機材を録音に使用しているチャンネル・クラシックスからレイチェル・ポッジャーの「パッサカリア」を再生してもらったが、非常にピュアでストレートで、バロックバイオリンの豊穣さをここまで引き出してくれることに驚嘆。上流でなるべくストレートで低ノイズな出力を実現することの意味を改めて感じさせてくれた。

またDALIについては、アメリカのディストリビューションはLenbrookが担当している。Lenbrookは傘下にNADやBluesoundを擁するカナダの一大オーディオカンパニーであり(先日MQAを買収したニュースも記憶に新しい)、「EPIKORE 11」を中心にNADのネットワークプレーヤーでデモンストレーションを行っていた。

いうまでもなく、自社でネットワークプレーヤーを開発しているメーカーも多数出展していた。代表的なブランドとしてはLINN、ケンブリッジオーディオ、ATOLL、Eversolo、ARCAMなどである。それぞれのブースの様子を写真にてレポートしよう。