2024年は暖冬に加え季節外れの暖かさが影響し花粉の飛散開始が早く、既にスギ花粉症がピークを迎え、早くもヒノキの花粉症が始まり、花粉症の方にとって、辛い季節を迎えています。

お薬での予防や治療もさることながら、マスクやゴーグルといった日常生活での自己防衛方法をされている方も多いと思います。しかし、医師の梶尚志さんによれば、その対策のキーは意外にも腸内環境によるのだそう。詳しくうかがいました。


花粉症とは

花粉症は、特定の植物の花粉に対する過剰な免疫反応が原因で引き起こされるアレルギー性の病気です。春や秋に花粉が飛散する時期に症状が現れ、これらの花粉が呼吸器や目の粘膜に触れ、免疫系が誤って異物とみなし反応を引き起こします。主な症状は、くしゃみ、鼻水、目のかゆみなどで、特に日本人で多いのは、スギとヒノキの花粉症です。


花粉症が増えている主な理由とは

日本でスギやヒノキの花粉症が増加している理由にはいくつかの要因が考えられています。一つは、都市化と緑地の減少が考えられています。都市部の拡大に伴い、緑地が減少し、代わりに建築物や舗装道路が増えたことで、植物の種類や数量が変化しました。これが花粉源の減少を引き起こし、スギのような強い花粉症を引き起こす植物が優勢になった可能性があります。

二つ目は気温の上昇です。温暖化により気温の上昇が原因でスギの成長期が長くなり、花粉の放出が増加、それに伴って花粉の飛散を促進することが考えられます。

三つ目は、二酸化炭素の増加です。大気中の二酸化炭素の増加が、一部の植物にとっては成長を促進する影響を与えます。これが特にスギのような花粉症を引き起こす植物に影響を与え、花粉の生産を増大させる可能性があります。

これらの要因が複合的に作用して、スギ花粉症の発生や患者数の増加に寄与していると考えられています。


花粉症になりやすいタイプ

花粉症になりやすいタイプの人は、次のような特徴があります。

1.家族に花粉症の人がいる場合
2.元々他のアレルギー疾患(食物アレルギー、アトピー性皮膚炎、気管支喘息など)の既往があると、花粉症の発症リスクが高まります。
3.幼少期から腸内環境が良くない人(便秘・下痢などの便通異常)は、様々なアレルゲンに曝露されやすく、将来的な花粉症の発症に影響を与える可能性があります。


日常生活での花粉症対策

1.マスクの着用: 外出時には、花粉を防ぐためにマスクを着用しましょう。
2.衣類の変更: 外から帰ったら、外での接触があった衣類を着替えてから家に入り、花粉を家に持ち込まないようにしましょう。
3.室内の清掃: 室内の掃除をこまめに行い、花粉を室内に取り込まないようにしましょう。
4.窓の閉鎖: 花粉の飛散が多い季節には窓を閉め、室内の空気をきれいに保ちます。
5.外出時のタイミング調整: 花粉が多い時間帯を避けて外出し、雨が降った後など、花粉の飛散が少ない時を選びます。


医学的な面での花粉症対策

1.抗アレルギー薬の使用: 症状を軽減するために、抗アレルギー薬(抗ヒスタミン剤や抗炎症薬)の服用や症状に応じて点鼻薬や点眼薬を医師の指示に従って使用します。お勧めは、シーズン少し前から薬を服用すると、花粉の飛散が始まっても症状が軽く済むことが知られています。

鼻スプレーの利用: 鼻づまりやくしゃみに対処するために、医師の指示で鼻スプレーを使用することがあります。

2.舌下免疫療法: 重度の花粉症の場合、舌下免疫療法(減感作療法)がお勧めです。花粉飛散シーズンの前から始める治療法で、アレルゲンに対する免疫反応を緩和させる治療法です。


花粉症の症状軽減のために摂るべき栄養素とは?

栄養学的なアプローチで、花粉症の症状を和らげるのに役立つことがあります。

1. 腸内環境の改善

花粉症は、腸内環境が悪くなると免疫のはたらきに異常が起こり、花粉を異物だと判断するでアレルギー反応が起こり発症します。腸管には、免疫細胞の約70%が集まっており体の免疫にとって重要な働きをしています。そのため腸内環境を整え、腸管免疫を高め正常なはたらきをさせることが必要です。

腸の免疫力を高めるには、腸内にいる善玉菌と悪玉菌のバランスが重要です。そこで、プロバイオティクス(ビフィズス菌や乳酸菌など人の腸に存在する善玉菌)を摂取して腸内の善玉菌を増やし免疫力を高めましょう。乳酸菌製剤や発酵食品から摂取できます。

代表的な食品としては、納豆、ヨーグルト、チーズ、その他、漬物や甘酒、味噌なども発酵食品です。発酵食品はこまめに摂取しないと腸に善玉菌が定着しないので毎日少しずつ摂取することを心がけます。

ただし、それぞれ注意も必要です。例えば、ヨーグルトはカゼインという成分が腸管粘膜を傷つけ、お腹の調子を壊す恐れもあるため、植物性のヨーグルトに代替えしてもいいでしょう。また、漬物やチーズなど塩分の強いもの、甘酒のように糖分の多いものは摂り過ぎには注意しましょう。

そして、同時に摂取して欲しいのがプレバイオティクスです。プレバイオティクスとは、プロバイオティクスを含む腸内にもとから存在する善玉菌を増殖させる作用を持つ微生物のことで、オリゴ糖や食物繊維が代表的です。

オリゴ糖は大豆や玉ねぎ、にんにくやバナナなどに含まれます。また、食物繊維は不溶性食物繊維と水溶性食物繊維に分類され、不溶性食物繊維は豆類、水溶性食物繊維はきのこやこんにゃく、ごぼうなどに多く含まれています。


2. ビタミンとミネラルの摂取

【ビタミンDの摂取】
花粉症のときに、最も威力を発揮するのがビタミンDです。

ビタミンDは、腸の粘膜を丈夫にして、さまざまアレルギーの原因となる物質や病原体、毒素などの有害物質の侵入をブロックしています。また、免疫機能を高めてアレルギー反応を和らげます。よって、血液中に含まれるビタミンDの量を増やすことが重要です。

できれば日々の食事から摂取したいところです。では、スーパーなど身近なところで購入でき、調理しやすく日常的に摂取しやすいビタミンDを多く含む食品とはなんでしょう。

それは、きのこ類、魚介類、卵類、乳類です。きのこ類では、乾燥きくらげや干し椎茸、舞茸に多く含まれています。また、魚介類では、しらす干し、紅鮭(生)、まいわし(生)が多いです。

ビタミンDは脂溶性なので、脂質を多く含む動物性食品から摂取した方が吸収されやすいのですが、きのこ類でも炒め物や揚げ物にして油とともに摂取することで吸収率を上げることができます。魚、きのこ類、卵類を食材に使ったバランスの良い食事を心がけたいものです。

しかし、日々忙しく食事からだけでは1日に必要な量を摂取できない方にはサプリメントを取り入れることをお勧めします。サプリメントは天然由来型のビタミンD3のサプリメントを選ぶようにしてください。

【ビタミンCの摂取】
ビタミンCには抗酸化作用があり、抗アレルギー作用もあるため、果物や野菜、サプリメントなどでの摂取を心がけましょう。にんじん、ほうれん草、ピーマン、モロヘイヤのような緑黄色野菜はビタミンA、C、Eを豊富に含み強い抗酸化作用が期待できるので積極的に取り入れましょう。

【亜鉛の摂取】
亜鉛は免疫機能のサポート役になります。含有量が多いのは牡蠣です。その他、赤身肉、レバー、豆類、ナッツ、種子などが亜鉛の良い摂取源となりますので、これらの食品を多めに摂取することがお勧めです。


3. 食事の工夫(抗炎症食品の摂取)

体内の炎症反応を抑制し、花粉症などのアレルギー症状の緩和に有効であると言われている抗炎症作用のある食品も摂取して欲しいです。魚に含まれるオメガ-3系脂肪酸、EPAや DHAといったオメガ-3系脂肪の成分が炎症性の免疫細胞のはたらきを制御します。

例えば、サーモンやサバ、イワシ、サワラといった脂身の多い魚にはオメガ-3系脂肪酸が豊富に含まれています。魚以外ではナッツ類もおすすめです。その他、亜鉛が豊富な食品、抗酸化作用のあるケール、チンゲン菜、ほうれん草、ブロッコリーといった緑黄色野菜や果物を積極的に摂り入れバランスの良い食事を心かげてください。

以上の点をご参考に、もうしばらく続く花粉症の時期を乗り切ってください。