PRESIDENT Online 掲載

わが子が保育園や学校でほかの子にケガをさせた場合、損害賠償を請求されることはあるのか。弁護士の佐藤香代さんは「保育園や学校などで子どもがケガをした場合、日本スポーツ振興センターによる災害共済給付制度を利用できることが多い。それでも後遺症が残るような大きな事故の場合は、親や保育園に損害賠償請求がされることがある」という――。

■子どもが集まる場所ではケガはつきもの

保育園や幼稚園に子どもを通わせる保護者から、このような相談を受けることがあります。

※プライバシー保護のため相談内容には一部変更を加えております。

5歳の息子を保育園に通わせています。先日、息子がお友達と追いかけっこをしていたところ、近くで竹馬で遊んでいた女の子とぶつかり、女の子が転倒して、おでこに傷を負ってしまいました。女の子の親御さんの話では、将来傷が残るかもしれないと言われているそうで、子ども同士の事故であっても適切に補償してほしいとのことです。5歳の子どもがしたことであっても、親が賠償しないといけないのでしょうか。また、保育園には、子どもたちを見守る義務があると思いますが、何の責任もないのでしょうか。

学校や幼稚園、保育所などの子どもが集まる場所では、子どもたちがスポーツや遊びなどをする中で、思わぬケガをしてしまうようなことは決して珍しくありません。そうした事態が起きたときでも、子どもたちへの教育活動や保育が円滑に実施できるように、被害者に対して、医療費、障害見舞金、死亡見舞金などの一定額の支給を行う制度(災害共済給付制度)があります。

■学校や保育所でのけがには「災害共済給付」を利用できることが多い

災害共済給付は、日本スポーツ振興センターが運営しており、保育園が保護者等の同意を得て、センターとの間に災害共済給付契約を結び、共済掛金(保護者と設置者が負担します)を支払うことによって行われます。認可保育園や無認可でも一定の要件を満たす保育施設では、センターと加入契約を結ぶことができます。そこで、学校や保育所等で子どもがけがをした場合、まずはこの災害共済給付制度の利用を検討しましょう。

災害共済給付制度に基づく主な給付金は、医療費については医療保険並みの療養に要する費用(いわゆる10割負担をした場合の医療費)の4割に相当する金額と、後遺症が残った場合には、障害等級に応じて14級88万円から1級4000万円の障害見舞金、死亡に至った場合の死亡見舞金、歯の欠損があった場合の歯牙欠損見舞金などです。