プレジデント 2024年5月17日号 掲載

■日本人が知らない米国民の本音とは

ドナルド・トランプとジョー・バイデンを中心に進んでいるアメリカ大統領選挙戦も、もう半年後に迫ってきた。誰が当選するかを予言するつもりはない。今アメリカに住む私の目線で、共和・民主両党の対立のあり方とそこから見える日米社会の相違について述べてみたい。

2024年4月13日、「ニューヨーク・タイムズ」はシエナ大学と共同で行った大統領選の世論調査を発表した。同年2月の調査ではトランプがバイデンに5%の差をつけて優位だったのが、今回の調査では差が縮まり、トランプ投票者46%・バイデン投票者45%となった(調査の推定誤差は3.3%)。次期大統領選が実に伯仲しているのがわかる。

トランプは非常に個性的な政治家である。親の経済力を利用してわがままの限りを尽くしてきた。法的な問題が起これば、法的手段を最大限に自分の都合のいいように利用し、アメリカ最高裁をはじめ、多くの裁判所で自分と共和党に有利な判事を任命しつづけてきた。対立する人物がいれば強硬な手段を使うことも辞さない。いわば悪ガキが成長して政治家になった人物なのだ。

さらにトランプは、白人優位の社会に育ち、男性的魅力を誇示する「マッチョ」の価値観を持っている。女性の人権も無視していて、ポルノ女優との関係の口止め料を政治資金から支払った疑いがあり裁判沙汰になっている(4月15日からニューヨークでその裁判が始まるので、反トランプ派は彼の得票が減ることを期待しているのだが……)。

トランプの態度はわがままな男性社会の再現にほかならない。核戦争にもつながりかねないアメリカ政府の秘密資料を私物化し、ジョージア州の選挙責任者に大統領としてトランプ票の捏造を命令するなど、無法な行動が積み上がっている。