華人向け経済ニュースサイトの「加美財経」は20日、「中国はドナルド・トランプ氏の復帰をどれほど恐れているのか」とする英誌エコノミストの記事を取り上げた。

記事はまず、「米大統領選挙でトランプ氏が勝利する可能性について中国がどのように感じているかを知りたい場合、中国のSNSがいくつかの暴露的なシグナルを提供している。ここ数週間で怒りと嘲笑が沸騰し始めた」とした。

さらに「トランプ勝利の見通しは、オンライン上だけでなく、中国のエリートの間でも議論の対象となっている」と指摘。トランプ氏のホワイトハウス復帰がさらに激化する貿易戦争につながり、巨額の経済的損失をもたらす可能性を懸念する声がある一方で、最近の北大西洋条約機構(NATO)に対する攻撃的発言など、トランプ氏の「同盟軽視」が巨額の宣伝効果をもたらし、アジアにおける米主導の安全保障体制を弱体化させ、中国が台湾などに対して自由に行動できるようにする可能性があると信じている人もいると伝えた。

記事は「習近平(シー・ジンピン)氏にとって、北京での宴会から(トランプ氏の別荘)マール・ア・ラーゴでのステーキディナーに至るまで何度も遭遇した二人の関係が十分合理的であるとしても、トランプ氏再選に伴う予測不可能なトレードオフを検討するのは特に難しい」とした。

他方、「バイデン氏のより体系的な統治アプローチは、トランプ氏の1期目とは異なる種類の脅威を中国にもたらしている。米国はトランプ関税を維持しているが、それに加えて、西側の技術の中国への流出を制限するための包括的なシステムも構築している。そして、オーストラリア、インドからフィリピン、韓国に至るまで、米国の安全保障パートナーシップや同盟に投資することで、中国を抑止し封じ込めるアジアの安全保障体制を活性化させてきた。トランプ氏よりも抑制的ではあるものの、ある意味ではトランプ氏よりも手ごわい相手でもある」とした。

記事は「貿易と関税の観点からのみ判断すると、習氏はバイデン氏の勝利を支持している可能性が高い。バイデン政権はおそらく中国製電気自動車(EV)の輸入制限を拡大し、半導体、人工知能(AI)、量子コンピューティングなどの分野で米国の最先端技術の中国への流入をさらに妨げることになるだろう。しかし、トランプ政権と比べれば、不安定化する貿易ショックを引き起こす可能性ははるかに低い」とした。

他方、「米中関係には経済学以上のものが含まれており、ここで習氏の計算が違う方向に傾く可能性もある」と指摘。「習氏は西側主導の世界秩序に憤り、中国を代替権力の中心地として確立したいと考えている。トランプ氏が再選された場合、対中政策をめぐる同盟国との結束を損なう可能性がある。防衛費を十分に投入できない同盟国には米国の保護を提供しないとの示唆を含め、NATOに関する軽蔑的な発言は中国の耳には音楽のように聞こえる。中国はNATOを、西側諸国がその優位性を維持するために利用する冷戦時代の遺物であるとみなしている」とした。

また「中国は同じ理由で、日本と韓国の政府が米軍駐留経費負担の大幅増に同意しなければ、両国から米軍を撤退させると脅したことで引き起こされた米国と日韓との緊張の高まりを喜んでいる」「台湾に関しても同様に、中国にとってはトランプ氏の方が好ましいかもしれない。バイデン氏は、台湾に対する米国の取り組みについて、従来のあいまいな表現を超えて、中国が侵略した場合には米軍が台湾を守ると繰り返し述べてきたが、中国の激怒を受けて側近らが発言を撤回した。トランプ氏はおそらく台湾の保護にはそれほど熱心ではない。2018年と19年にトランプ氏の国家安全保障担当大統領補佐官を務め、その後苦い別れを経験したジョン・ボルトン氏は回顧録の中で、台湾への武器売却に対するトランプ氏の『不満』について述べている。トランプ氏は台湾について『消化不良』だったとし、『民主的同盟国』に対するコミットメントを欠いていることを示唆した」とした。

記事は「習氏は何よりも安定を望んでいる。中国の学者の見解はおそらく公式の考えを反映している」と指摘。清華大学の政治学者、閻学通(イエン・シュエトン)氏が1月に国営メディアのインタビューで、候補者は「どちらがより反中国的であるか」を示すために競争するとし、「両国間の対立が制御不能になって紛争にエスカレートすることを防ぎたいなら、わが国は何らかの積極的な措置を講じる必要がある」と述べたことに触れた。

記事は「バイデン氏の中国に対するアプローチは、より予測可能であると同時に、より組織的かつ強制的なものとなる可能性が高く、おそらく長期的にはより大きな脅威となるだろう。トランプ氏の混乱と行き過ぎは、中国が米国を出し抜く機会を生み出す可能性があるが、同時に中国が懸念する不安定性をもたらす可能性もある」とした。(翻訳・編集/柳川)