動力電池の分野では、高いエネルギー密度、安全性、低価格は「不可能な三角」と呼ばれている。

NIO(蔚来汽車)の李斌(リー・ビン)最高経営責任者(CEO)は2023年末に1000キロに及ぶ超長距離の航続を生中継したが、車両に搭載されていたのは半固体電池だった。しかし、NIOの秦力洪(チン・リーホン)総裁によると、この電池パックのコストは高く、発売価格29万8000元(約625万円)のNIOの小型EVセダン「ET5」1台の価格に相当し、量産までにはまだ距離がある。

現在の液体リチウムイオン電池に比べて、固体電池はより高いエネルギー密度を持ち、より長い航続距離を有するだけでなく、電池の体積を縮小し、重量を低減し、完成車により良い省エネと消費削減を実現させるとともに、自動車内部の空間を拡大することができる。安全性の面では、固体電池は液体リチウムイオン電池のリチウムデンドライト析出の問題を解決し、電池内部短絡の危険性を大幅に低減できる。

先日開催された中国電気自動車百人会フォーラムで、中国科学院の欧陽明高(オウヤン・ミンガオ)院士は固体電池の発展の必要性を改めて強調した。しかし、現在、固体電池技術の前に横たわる難題は大規模な量産と車への搭載だ。

上海汽車集団傘下の新エネ車ブランド、智己汽車(IM Motors)は25日、「間もなく発売される「智己(IM)L6」は業界初の量産車に応用する超急速充電固体電池を率先して搭載し、新エネ車を固体電池時代に導く」と発表した。


航続距離で1000キロの超長航続を実現しただけでなく、充電速度においても準900Vの超急速充電を実現したと同時に、熱暴走や発火が起きない超安全設計という特徴を備えており、ユーザーの航続距離や充電に関する不安や電池の安全性への懸念を解消する。

智己L6が固体電池を搭載するというニュースは市場の注目と一部の疑問を呼んでいる。BYD(比亜迪)傘下のDENZA(騰勢)の趙長江(ジャオ・チャンジャン)社長は「今、半固体車載電池を宣伝しているのは文字ゲームだ」と発言した。

固体電池と液体電池を区別する重要な指標は電池内の液体の質量比率だ。現在の業界観点によると、液体質量が5〜15%を占める電池は半固体電池であり、5%以下は固体電池または準固体、類固体と呼ばれ、電池内に電解液が全く含まれていなければ全固体電池となる。業界関係者は、技術の進歩に伴い、電池内の液体の割合が徐々に減少し、固体電池は「半固体-固体-全固体」の順に漸進的に発展するとみている。

市場状況を見ると、固体電池の開発に参加する企業は多いが、量産の新エネ車に応用される固体電池はまだない。NIO、東風汽車、広州汽車、長安汽車など多くの自動車メーカーが半固体電池の搭載進展を絶えず披露しているが、量産可能な固体電池の発売に成功した企業は1社もない。

智己L6に搭載された半固体電池は上海上汽清陶能源科技から提供された。同社は上海汽車集団と清陶(昆山)能源発展の合弁会社だ。

上汽清陶が開発した初代固体電池の搭載試験が23年8月に行われた。単体のエネルギー密度は368Wh/kgに達し、試験車両の最大航続距離は1083キロで、10分間の充電で航続距離は400キロ増加した。


智己汽車は4月8日に「智己L6技術発表会」を開催する予定で、固体電池を搭載した智己L6は5月に発売される予定だ。実際の使用状況が宣伝通りかどうか、引き続き注目していきたい。(編集/CL)