フィリピン英字メディアのマニラ・タイムズは7日、米中「交戦」のさなか、米トップ企業は中国への投資を拡大しているとする記事を掲載した。

中国メディアの環球時報が要約して伝えたところによると、記事はまず、「イエレン米財務長官の最近の訪中は、米中関係の健全性によって大きく動かされる世界の複雑で絡み合った運命を浮き彫りにした」と指摘し、同氏が訪問先の広州市でスピーチし、中国との関係の重要性を強調した上で、米中間の完全な経済の切り離しは「現実的でも望ましいものでもない」と語ったことを取り上げた。

記事は、クアルコム、フェデックス、ブラックストーン・グループ、ブルームバーグ、米中ビジネス評議会(USCBC)、ハーバード大学ケネディ行政大学院の関係者らが北京で習近平国家主席と会談したことについて、西側メディアが「米国との地政学的な緊張の中で、外国からの投資を強化する中国政府の最新の取り組み」として報じたことにも触れた。

一方で、「報道の多くがごまかしているか、完全に見逃しているのは、この会談が中国発展フォーラムと同時開催されていたことだ」と指摘。「同フォーラムは、3月の中国の重要政治会議である両会後に、外国のビジネスリーダーが中国高官らと交流できる国家レベルの国際会議で、国際通貨基金(IMF)やアジア開発銀行のリーダーら100人を超える世界の経営者や投資家が出席した。米アップルのティム・クック最高経営責任者(CEO)も、中国のサプライヤーが同社のカーボンニュートラル目標に対して『多大な貢献』をしてきたことを称賛した。同社は最近、上海にアジア最大規模のストアをオープンしたが、これを上回るのはニューヨーク5番街の旗艦店だけだ」と伝えた。

記事は、中国経済が不動産不況やデフレ、人口減少など数多くの課題に直面しているとした上で、「中国の経済問題の複雑さには、より長い分析が必要だ」とし、「中国は40年足らずで8億人以上を貧困から救い出しただけでなく、多くの伝統的な経済モデルを飛び越えて達成した技術的に統合された社会とキャッシュレス社会では、何億もの人々が家庭に必要なものをすべてオンラインで効率的かつ手頃な価格で購入できる。今後の道筋は依然不透明だが、中国の政府と経済界のトップは予期せぬ結果と進行中の課題を認識しており、さまざまなツールを活用して経済を『充電』するだけでなく、新たな現実の中で経済を再構築している」と指摘した。

記事は「興味深いこと」として、イエレン氏が訪中期間中に「中国では中流階級が大きく成長しており、米国の製造業やこの場にいる企業を含む他の企業にとって巨大な市場となっている。輸送機器から集積回路に至るまで、中国への輸出は70万を超える米国人の雇用を支えている」と述べて、米企業に対し中国への投資を増やすよう呼び掛けたことを取り上げ、「実際、批評家や予言者が宣伝する一方で、米国の最も裕福な人々と最も利益を上げている企業は、何十年にもわたって中国の成長ストーリーを利用してきた」と指摘した。

そして「これらすべてがフィリピンにどう関係するのか」については、「アップルは、ベトナムとインドに新たな拠点を設けて生産を多角化する一方、中国でのサプライチェーンと研究開発の拡大にも取り組んでいる。フィリピン人の創造性とエンジニアリング能力が世界的に認められているのに、なぜアップルはフィリピンに来ないのか」とした。

記事は「中国との切り離しや対話チャンネルの使用禁止を主張する批評家は、現在起きているメガトレンドに逆行している。米国と中国は無数の課題を抱えてはいるが、生産的ではないにしても、少なくとも継続的な最高レベルでの関与のためのオープンなチャンネルを維持し続けることを重要視している。ドイツ、英国、オーストラリア、日本などの主要国も同様だ」とし、フィリピン華人商工会連合(FFCCCII)のトップが「われわれは西フィリピン海(南シナ海)の問題を脇に置いて、より良い理解を促進するために貿易を継続しなければならない」と念を押したことに触れた。(翻訳・編集/柳川)