Lewis Krauskopf

[ニューヨーク 28日 ロイター] - 2024年の米株式市場は、米景気と利下げに対する楽観論に人工知能(AI)のビジネスチャンスを巡る高揚感が重なり、極めて好調なスタートを切った。

S&P総合500種株価指数は年初来で10%超上昇し、第1・四半期としては2019年以来最大の上昇率を記録。昨年後半の急騰を足掛かりに、1月下旬に過去最高値を2年ぶりに更新すると、その後は大きな戻りもなく、十数回にわたり過去最高値を更新した。

ハイテク株の比率の高いナスダック指数も、2月下旬に21年11月以来の最高値更新となった。

今年の株価上昇の鍵は、米経済はインフレが緩やかになる一方で深刻な景気後退を回避して「ソフトランディング」に向かうと投資家が確信している点にあった。

バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチが3月に発表した最新の月次調査によると、ファンドマネージャーの3分の2近くが今後12カ月間に米景気はソフトランディングする可能性が高いとみており、「ハードランディング」の予想はわずか11%だった。

米連邦準備理事会(FRB)が3月の連邦公開市場委員会(FOMC)で景気見通しを上方修正する一方、年内3回の利下げ予想を維持するというハト派的な見解を示したことも、多くの投資家を勇気づけた。

米株式市場は昨年、米国債利回りの上昇に圧迫されたが、今年は国債利回り上昇の影響を跳ね返すことができた。指標となる10年物米国債の利回りは昨年末の3.86%から上昇し、直近では4.2%前後で推移している。

ブラックロック・インベストメント・インスティテュートのストラテジストチームは今週のメモで、「第2・四半期が始まるが、短期的には好材料が増えてリスク選好の動きが強まるだろう」と予想。「AIを採用するセクターが増加し、最近のFRBのメッセージやインフレの大幅な鈍化により市場の信頼感が高まるにつれ、リスク選好の動きがハイテク以外にも広がると考えている」とした。

こうした楽観的な見方を背景に株価バリュエーションは上昇。LSEGデータストリームによると、S&P500種構成企業の業績予想に基づく株価収益率(PER)は21倍と2年上ぶりの高水準となっている。

年初来の株式市場をけん引したのは昨年と同じ超大型株だ。

しかし昨年大幅に上昇した超大型ハイテク株「マグニフィセントセブン(壮大な7銘柄)」や成長株は今年に入って銘柄ごとの動きにばらつきが見られる。

エヌビディアはAI向け半導体の好調にけん引される形で年初から80%超急騰し、輝き続けている。メタ・プラットフォームズも年初来で37%と大幅に上昇し、2月に初の配当を発表した。

一方、他の顔ぶれはあまり芳しくない。アップルは中国事業への圧力と独禁法当局からの締め付けで痛めつけられ、株価が年初来で11%下落。テスラは電気自動車(EV)需要への懸念から29%下げた。

S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによると、マグニフィセントセブンがS&P500種の年初来の上昇に占める比率は先週末時点で40%。この比率は昨年60超だった。

今年は他の銘柄がマグニフィセントセブンの一角の不振を埋めており、相場上昇の幅に広がりが出ている。

ハイテクと通信サービスの両セクターは、マグニフィセントセブンのうち5銘柄を占め、S&P500種構成銘柄の中で今年も上位を占めている。しかしエネルギー、金融、工業もS&P500指数をアウトパフォームしている。

アメリプライズのチーフ・マーケット・ストラテジスト、アンソニー・サグリンビーン氏は25日のマーケットコメントで、「最近の株式市場の動きは投資家がビッグテック(巨大IT企業)以外のビジネスチャンスを探し始めており、今年後半の金利低下を予想していることを示す初期的な兆候だ」と指摘した。

投資家はAIの普及が業績の追い風となる企業にも注目している。

エヌビディアはAIブームの申し子だが、スーパーマイクロコンピューターやアーム・ホールディングスなど半導体メーカーとその他のハイテク銘柄も株価が大幅に上昇。半導体のアステラ・ラボの株価は1週間前の公開価格から2倍以上に値を上げた。