Joe Cash

[北京 1日 ロイター] - 中国経済は今年序盤の指標が軒並み好調で、当面の下振れリスクは回避したとみられている。外国人投資家は2022年終盤のゼロコロナ政策解除以降、景気が持続的な回復軌道に乗ってこないことに懸念を強めてきたが、今年及びこれからの数年間に、新たな成長エンジンを点火できると説得したい当局にとって、ひとまず時間的な猶予ができたと安心できる状況だ。

実際、これらの指標は5%前後と「野心的」にも見える今年の政府の成長率目標達成に期待を持たせてくれる。

しかし、アナリストや投資家の警戒感は和らいでいない。事態がさらに悪化しないとしても、当局がまず、そうした成長エンジンを本当に見つけ出し、それを全開にする方法を解明できない限り、中国経済は年内に再び勢いを失ってしまう、と彼らは予想している。

中国は、これまで幾つもの経済てこ入れ措置を打ち出してきた。具体的には、銀行に対して不動産よりも高付加価値の製造業向け融資を増やすよう指導したり、銀行の所要準備金を減らしたりしている。

ところが、そうした政策は効果が次第に薄れつつあるほか、今後は規模も縮小しかねない。

ナティクシスのアジア太平洋チーフエコノミスト、アリシア・ガルシア・エレロ氏は「中国はもうこれから二度と、昨年以上の成長はできない。成長率をさらに押し上げるための財政コストが非常に大きいからだ」と指摘。現在の中国の成長モデルは、持続可能ではなくなっていると付け加えた。

国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は先週、中国は今一つの「岐路」に直面しており、質の高い成長という新時代に向けて自らを衣替えしなければならないと指摘した。

IMFが今年1月に公表した中国の今年の予想成長率は、政府支出の増加を理由に0.4ポイント上方修正の4.6%となったが、依然として昨年実績の5.2%よりは低い。

中国当局者が信奉するのは、習近平国家主席が昨年9月に提唱した「新質生産力」で、先端産業における技術革新に依拠して経済を発展させるという考えだ。

ただ、アナリストは中国が成長ペースを維持しつつ、同時に経済構造を変化させるのは不可能ではないかとみている。

ナティクシスのガルシア・エレロ氏は、中国は成長ペースがじりじりと切り下がっていく流れをほとんど止められておらず、今年序盤の好調さも新たな成長の芽吹きとは言えないと説明した上で「5.2%は(成長の)底ではなく、天井だ」と言い切った。

ロディウム・グループの見積もりでは、昨年の中国の実質的な成長率は公式統計よりずっと低い1.5%だった公算が大きい。不動産市場の低迷や消費抑制、貿易黒字縮小、地方政府の資金繰りへの打撃などが背景だ。

<不動産に代わる存在>

中国当局は今年、5%前後の成長率目標を達成することに自信を持っている。

それでも投資家が望むのは、当局が不動産セクターの長期的な債務危機が成長に与えているダメージを限定し、米国や欧州連合(EU)が中国製品輸入規制に乗り出そうとしている中で、いかに国内消費を喚起するのか、という一段と詳細な計画を提示することだ。

ライデン大学で中国研究に従事するロジャー・クリーマーズ助教は「中国は(世界)地図の外に置かれている。この問題を巡る中国の苦闘は、これから本格的に始まる」と指摘した。

そして、中国が新しい成長モデルを打ち出すまでに残された時間は少ないとアナリストは警告する。

キャピタル・エコノミクスの中国エコノミスト、チチュン・フアン氏は「各種てこ入れ措置に伴う短期的な追い風のおかげで、しばらくはそれなりの成長が続くはずだ。だが、恐らく年内には政策支援が縮小し、構造的な逆風のために経済(活動)は、また鈍化する公算が大きい」と予想した。

かつて国内総生産(GDP)の25%を占めていた不動産セクターに上向く気配がないという事実も重い。

HSBC(香港)のチーフ・アジア・エコノミスト、フレデリック・ニューマン氏は「不動産セクターが沈滞した後、この先の成長を主導する力は何かという長期的な疑問が存在している」と述べた。