カブスの今永昇太(30)が1日(日本時間2日)、敵地シティ・フィールドでのメッツ戦に先発し、7回で87球を投げ3安打無失点7奪三振の好投で開幕から無傷の5連勝を飾った。スコアは1−0。メジャー初の中4日登板でストレートの球速は出ていなかったが、抜群の投球術が冴えて得点圏に走者を背負ったのは一度だけ。防御率は0.78となり勝利数と防御率で両リーグを通じてトップに躍り出た。両チームの監督やチームメイトからは絶賛の言葉が並んだ。

 デビュー6試合での防御率ではメジャー歴代4位の記録

 今永が無双だ。
敵地のニューヨークに乗り込んで7回3安打無失点。7つの三振を奪い、4月1日のロッキーズ戦での初登板初勝利以来、6度の先発で無傷の5連勝をマークした。メジャー移籍後初の中4日登板の影響からか、この日の球速は平均91.2マイル(約146.7キロ)、最速93.4マイル(約150.3キロ)だったが、スプリットを武器にストライクゾーンを立体的に使う投球術でメッツ打線を牛耳った。
三塁を踏ませず得点圏に走者を背負ったのは2回一死一、二塁の一度だけ。このピンチも7番のハリソン・ベイダーをアウトコースのスプリットで誘い、ショートゴロのダブルプレーで切り抜けた。今永は天を仰いで胸をポンポンと叩きホッとした笑顔を浮かべた。
0−0の展開から5回に犠飛で待望の援護点をもらうと、今永のピッチングはさらに凄みを増した。7回にはメッツの4番ピート・アロンソのタイミングを完全に外し、打ち損じたボテボテのゴロが一塁方向へ転がったが、今永はそれを必死に追いかけて捕球すると一塁へダイビングトス。「OK!」の言葉と共にサムズアップポーズで笑った。
MLB公式サイトによると、カブスのクレイグ・カウンセル監督は、飛び出す一塁手に目で合図を送っていたこのプレーに感銘を受け「グラウンド全体を意識できている証拠だ。賢いプレーだった」と絶賛した。
試合は1−0のまま9回まで進みクローザーのエクトル・ネリスが一死二、三塁の一打逆転サヨナラのピンチを招いたが、ジェフ・マクニールのレフトフライでタッチアップしたアロンソを見事な中継プレーで本塁でタッチアウトにしてゲームセット。メッツはミゲル・アマヤ捕手のブロックを「コリジョンではないか?」と抗議しリプレー検証を求めたが、結果は変わらず今永は5勝目を手にした。
MLB公式サイトは、今永の「今日は速球が一番上がらなかったけど、(捕手の)アマヤとコミュニケーションをとって調整できた。メッツ打線がハードコンタクトできるようなところに甘い速球を投げないように気をつけた。運が良かった部分もあったけれど順応することができた」というコメントを紹介した。
87球を投げた今永は、そのうちストライクが58球で、15個の空振りと見逃しを奪った。9個がスプリットで5個がストレート。防御率0.78&勝利数で両リーグトップに躍り出た。
MLB公式サイトによると、キャリアの最初の6試合での防御率0.78は、1981年のドジャースのフェルナンド・バレンズエラ(0.33)、1945年のレッドソックスのデーブ・フェリス(0.50)、1913年のアスレチックのボブ・ショーキー(0.75)に続く歴代4位の記録だという。
チームの内外から今永への賞賛の声が相次いだ。

 カウンセル監督は「彼は傑出していた。本当に力強い7イニング。困った場面はなく、サクサクした投球が爽やかだった」と評価した。
米スポーツサイト「ジ・アスレチック」によると、9回に鮮やかな中継プレーで今永の勝利が消えるピンチを阻止した途中出場の三塁手ニック・マドリガルは、こう今永を称えた。
「彼は何も怖がっていない。彼はただ男として自分の進む道をいく。彼の作品(投球)は信じられないものだ。あらゆる球種をどんなカウントでも投げる。球数も少ない。10年も前からメジャーいるみたいだ。不思議な話だ。彼はMLBに来たばかりなのにベテラン投手なんだ」
今永は横浜DeNAで8年のキャリア(通算64勝50敗)を積みポスティングでメジャーに移籍した。マドリガルの「10年も前からメジャーにいるみたい」の感想は間違っていない。
バッテリーを組んでいるアマヤも「初めて会った日からえげつなかった。自分を信頼し、自分の強みを信じて、どんなことでも実行できる。しかも自分を見失わずに楽しんでいる。彼はいつもそうしてきた」と今永を称えた。
味方だけではない。ニューヨークメディア「「AMニューヨーク」によるとメッツのカルロス・メンドーサ監督も、こう今永について語ったという。
「彼はピッチングができる。速球がいい。スプリットもかなり良いボールだ。彼は少しためらいがちに、塁上に走者がいない状態では、素早いテンポで投げ込み、打者のタイミングを狂わせる。全体的に今日の彼はかなり良かった」
敵将も今永の投球術に舌を巻いた。
今永の次回登板は、本拠地で6日(日本時間7日)から始まるパドレスとの3連戦になる予定だ。