ドジャースの大谷翔平(29)が25日(日本時間26日)、敵地シカゴでのホワイトソックス戦に「1番・DH」で出場し、1回に先頭打者で2試合ぶりの24号ソロを放ち、4回には二死一、三塁からライト前に決勝タイムリーをマークしてチームの3連勝に貢献した。ドジャースの最長記録に69年ぶりに並ぶ9試合連続打点。6月だけで10本塁打、22打点という大谷の絶好調の理由をデーブ・ロバーツ監督(52)は「制球眼にあり」と分析している。

 「ボール球をしっかりと見送れているのが一番」

 バットの先。しかも片手で打ってもホームランになるのだからもう手がつけられない。1回だ。早打ちの大谷が珍しくカウント2−2になるまで1球もスイングしなかった。そして5球目のカーブ。ライトへ打球を運んだが芯を外した。相当手がしびれたのだろう。一塁へ走り始めた大谷は顔をしかめた。フェンスを越えるか微妙な距離。打球の行方を追った大谷は一塁ベースを回ってもまだバットを持ったままだった。打球はライトのグラブの先に当たってフェンスを越えた。かなりオーバーランしていた大谷は、もう一度、一塁ベースを踏み直してからダイヤモンドをゆっくりと一周した。
3−3で迎えた4回二死一、三塁のチャンスにも、見送ればおそらくボールのひざ元のカットボールをライト前へ運んだ。この勝ち越しのタイムリーが決勝点。大谷のバットが3連勝を導いた。
4打数2安打で、打率は.320でパドレスのジュリクソン・プロファーを3厘上回ってトップをキープ、本塁打はブレーブスのマーセル・オズナに3本差、長打率.634、OPS1.032でもリーグトップに立った。そして打点も60となり、64でトップで並ぶ、オズナ、フィリーズのアレク・ボームと4差となり射程内となった。
9試合連続打点は、ドジャースでは1955年にロイ・キャンパネラが記録して以来、69年ぶりのタイ記録。しかも、その9試合での打撃成績は打率.441、出塁率.545、長打率1.147、7本塁打、16打点。死球を受けて左手を骨折して離脱したムーキー・ベッツに代わって1番に入ってから、特に、その打棒に磨きがかかっている。6月の成績で見ると、22試合で、打率.306、10本塁打、22打点、出塁率.412、長打率.706、15四球という無双ぶりだ。
なぜ大谷は6月に大爆発したのか。
試合後にフィールド上でスポーツネットLAのインタビューを受けて、好調の理由を聞かれた大谷自身は、「打つ球をしっかりとまず打てているので、それが一番いい。ボール球をしっかりとまず見送れているのが一番いいところかな」と自己分析した。
「本当に自分のしっかりとしたアットバットを繰り返すことで、チームにとってもいい結果が生まれるんじゃないか」とも付け加えた。
ロサンゼルスタイムズ紙によると、ロバーツ監督は「好調理由はパワーだけでなく選球眼にある」と指摘した。

 「たとえ打者が有利なカウントであってもボール球を見逃してストライクゾーンをコントロールすれば、良いことが多く起こるということをショウヘイは理解していると思う。過去のシーズンでは、彼は積極的なスイングを好むためにボール球を追いかけるという傾向があった。しかし(悪いボールを見分けることで)ストライクゾーンに(甘い)投球を呼び込むことができている」
MLB公式サイトによると、ホワイトソックスの第2戦前の時点での大谷のチェイス率(ボール球を振るスイング率)はキャリア平均の28.3%に対して27.7%と下がっていた。さらに6月で見るとチェイス率は22.3%となっている。これは大谷のキャリアにおいて50打席以上立った1か月間では、2020年9月の17.2%、2018年5月の20.9%に次いで3番目に低い数字だという。つまりボール球にいかに手を出していないかを示すデータだ。先頭打者アーチを放った第1打席も追い込まれるまで難しい球に見向きもしなかった。
また同サイトは大谷の6月の四球率が14.3%、三振率が18.4%であることに注目した。キャリア平均では四球率12.1%、三振率25.5%だから、いかに四球を選び、三振が減っているかを如実に表している。
MLB公式サイトは、ロバーツ監督の「そのために、本塁打、打点、得点のすべてにおいて良いことが起きている」という言葉を付け加えている。
またロサンゼルスタイムズ紙によるとシーズンの半分を終えた時点での24本塁打、60打点のペースは「2021年の46本塁打、100打点、2023年の44本塁打、95打点のペースを上回っている」という。
同紙は「アナハイム(エンゼルス時代)では先発投手と指名打者でシーズンを過ごした大谷が、ほぼ打撃のみに集中することで、ア・リーグのMVPを受賞した2021年、2023年以上に驚異的な強打者となれるだろうか?今の数字はイエスと言っている」という表現で、大谷の絶好調ぶりを伝えている。