千栗土居

 みやき町の「千栗土居」は県道整備工事に伴い2000(平成12)年、200メートルほどの堤防遺構を残し「千栗土居公園」として整備保存された。

 古来、大雨のたび大洪水となる暴れ川と恐れられた筑後川の治水対策で400年ほど前、元和年間に佐賀藩成富兵庫茂安が、現在のみやき町千栗地区から坂口地区までの約12キロを12年の歳月をかけ完成させた。

 築堤に参加する農民たちの負担軽減を図るため、主として農閑期に工事を進め、佐賀藩家老職であることを隠して作業に汗したとの逸話がある。

 堤防補強で川内に笹(ささ)竹、決壊時の修繕用で川外に杉を植林し、自然力を生かした当時のハイテク工法で施工したことで別名「杉土居」とも言われ、完成後は破堤することなく地域住民の生命財産を守り続け、現代の農業生産の基盤となっている。

 公園の蓮池南側には新緑の6月下旬から8月初旬まで、優美であでやかな「大賀ハス」や「舞妃蓮(まいひれん)」の花が咲き誇る。各地で自然災害が多発する現代、公園内を散策し、先人たちの偉業に深く感謝したい。

絵・錦織瑞穂=青空アトリエみやき教室講師

文・太田家良明=みやき町白壁