春の花粉症シーズンは終わりに近づいてきました。九州では、春のスギとヒノキの花粉アレルギーによる鼻炎と結膜炎は、とても多い病気です。スギやヒノキほど注目されませんが、イネ、カモガヤ、ヨモギ、ブタクサなど多くの植物の花粉もアレルギー抗体をつくり花粉症の原因になります。

 アレルギー外来では、ぜんそくや食物アレルギーで通院している子どもたちの多くが、同時に花粉症の症状と皮膚の湿疹があります。

 また最近、“果物や野菜を食べると口や喉がイガイガして痒(かゆ)くなるので食べない”という子をよく診ます。年齢的には小学校高学年くらいから上に多いようです。

 これは、花粉に対するアレルギー抗体が花粉アレルゲンとよく似た構造をもった果物や野菜のタンパクと結合して、口や喉の粘膜でアレルギー反応を起こすために起こる症状です。アレルギー抗体の産生には、皮膚や粘膜を通してのアレルゲンの侵入が重要と考えられています。外部環境にいつもさらされているのは手足、首、顔で、特に顔は目と口、鼻の粘膜なので、侵入部位として重要です。皮膚は粘膜よりはるかにバリアー機能が高いので、健常な皮膚からは花粉を含めてアレルゲンはなかなか侵入ができません(ほとんどのアレルゲンはタンパクで分子量が大きいため)。

 しかし、アトピー性皮膚炎や手の湿疹、乾燥肌による肌荒れなどがあるとバリアー機能が低下し、そこからアレルゲンが侵入して抗体ができます。体内のアレルギー抗体を上昇させないことは、発症の予防および症状の軽減に有効です。

 アレルゲンを体内に侵入させないこと、すなわち花粉の時期にはマスクやゴーグルは有効と考えられます。しっかりと全身の皮膚のケア(特に手足、顔、首)をおこない、皮膚バリアー機能を高めてアレルゲンが侵入しないように注意することが、アレルギー疾患対策の基本です。

 (佐賀整肢学園からつ医療・福祉センター顧問、佐賀大学名誉教授 浜崎雄平)