峯信幸さん(奥)が育て、粒状の花をつけた軸を伸ばすカンノンチク=有田町

 「珍しいと聞くので…」。自宅で育てるカンノンチクが花を咲かせたと、有田町の峯信幸さん(72)が佐賀新聞「こちら さがS編集局」(こちさが)に投稿した。45年ほど前に義父から譲り受けたが、花を見たのは初めて。カンノンチクが開花するのは珍しく、「ありがたく感じる」と喜んでいる。

 4月上旬、妻の久美子さん(73)が室内を掃除中、鉢の異変に気づいた。葉の根元に、薄い桃色のつぶつぶが集まった房のようなものが。「これ、何だろう」。調べて花と分かり、「明太子じゃなかぞ」と東京の子どもたちに写真を送った。房は徐々に伸びて広がり、粒状の花が開き始めた。

 カンノンチクは中国南部原産のヤシ科。福岡市植物園によると、一つの株が花を咲かせるまでは数十年かかるとみられる。

 植物好きの義父・森園鳳吉さん(故人)からカンノンチクと聞いていたものの「花が咲くとは思っていなかった」と信幸さん。1年前まで暮らした伊万里市内の家では鉢だけで130を超す植物を育てたが、転居時に半分以上を処分した。ただカンノンチクは「頂いた物だし」と手放せなかった。

 義父は亡くなって30年以上がたつ。「前の家に比べ、冬も暖かい家に移ったことが作用したのかな」と2人は顔を見合わせ、「義父からのメッセージなのかも」と、じんわり喜びに浸っている。(志垣直哉)