群馬県高崎市吉井町の上信電鉄踏切で6日、小学4年生の女児が列車にはねられて死亡した。事故現場は警報機や遮断機のない「第4種踏切」だった。第4種踏切は通常の踏切に比べて事故率が高いが、2023年3月末時点で全国に2408カ所存在。秩父鉄道(本社・埼玉県熊谷市)の第4種踏切は私鉄では全国最多の85カ所あるが、安全対策は思うように進んでいない。

■警報機、遮断機なし

 22年1月17日、熊谷市川原明戸の秩父鉄道の第4種踏切で、羽生発影森行き普通列車と軽自動車が衝突する事故が発生。市内在住の女性=当時(51)=が運転する軽自動車は大破し、女性も全身打撲などのけがを負った。列車の乗員や乗客計19人にけが人はいなかった。

 踏切の廃止には地元の同意が必要となるが、市は「地元の同意が得られた」と本年度に第4種踏切を閉鎖し、隣接する警報機と遮断機のある「第1種踏切」の拡幅整備を実施することに。第1種踏切の幅を4メートルから6メートルに広げ、接続道路の約50メートル区間も幅5メートルから6メートルへ拡幅する。車両の擦れ違いが可能となり、地域住民や付近にある県立熊谷特別支援学校の送迎などの安全性、利便性の向上を図る。

 第4種踏切は1960年度には全国に6万カ所以上あった。都市化が進むにつれて事故が急増し、国は統廃合や遮断機の設置などを鉄道事業者に求めた。廃止や第1種踏切化によって大幅に減少したものの、近年は減少のペースが鈍っている。一方で2019年に起きた100カ所当たりの踏切事故件数は第1種が0・59件に対し、第4種は1・02件と高い。

■多額の費用、遠回り

 秩父鉄道の踏切292カ所のうち、第4種踏切は85カ所を占める。第4種踏切では過去10年で2件の死亡事故も発生している。踏切事故防止策として、踏切を渡る際に注意を呼びかける音声システムを40カ所に設置している。

 第4種踏切は少しずつ減ってきているが、地元の要望を受けて、死亡事故が起きた第4種踏切を第1種化した場所もある。第4種踏切を第1種踏切に切り替えると、1カ所で多額の費用が発生し、継続的に生じるメンテナンス費用も地方鉄道にとっては大きな負担となる。

 秩父鉄道としては第4種踏切を第1種化するのはコストが大きく、危険性も伴う踏切は廃止を要請するのが基本だが、遠回りを強いられる地元住民が反発することもあり、大きな課題になっている。秩父鉄道の担当者は「第4種踏切はできる限り廃止していきたい」と話している。