コンビニエンスストアチェーンのファミリーマート(東京都港区)は23日、国内第1号店として50年以上にわたり営業してきた埼玉県狭山市水野の「ファミリーマート入曽店」を約100メートル離れた場所に移転オープンした。売り場面積や駐車台数の拡張に伴うもの。前日午後1時にオープニングセレモニーが行われ、翌23日午前7時にオープンした。

 同店は元々、「コンビニエンスストア」という言葉がまだ一般的に広まっていなかった1973年9月、日本人の消費志向に合わせた実験店舗として狭山市水野に誕生。当時はスーパーマーケットチェーンの西友ストアー(現・西友)が運営を手がけ、国内発祥のコンビニ第1号店として話題を呼んだ。売り場面積は20数坪しかなく、営業時間は午前10時〜午後6時、木曜日が定休だった。生鮮3品(青果、精肉、鮮魚)や日用品、加工食品を中心に約1100品目を取り扱い、現在のコンビニで売れ筋の弁当やおにぎりといった「中食」はなかったという。

 当時の店名は「ファミリーマート狭山店」で78年4月にフランチャイズ転換。85年に現在のオーナーである鈴木武夫さん(73)、彩子さん(75)夫妻が経営を引き継ぎ、「ファミリーマート入曽店」へと店名を変更した。

 妻の彩子さんは「駅前に行かないとお店がなかったので近隣の皆さまには食品スーパーのように毎日ご利用いただいた」と振り返る。その後、競合他社が近隣に続々と出店。鈴木夫妻の店舗は狭小ながら、卵や牛乳といった日配品など地域のニーズに合わせた品ぞろえで乗り切ってきた。現在、店長を務めるのは長男の俊介さん(46)。「一層、地域に愛される店となるよう頑張りたい」と穏やかに話す。

 本部の執行役員で地域代表を務める草間浩昭さんは「こちらのお店は日本発祥のコンビニという挑戦が始まった思い入れの地。今後もこども食堂や献血バスの誘致などにも取り組み、地域に欠かせない店舗になってほしい」と期待した。