毎月ピエール瀧さんと一緒に公園の魅力を探求していく「ファンキー!公園」! 前回に引き続き、千葉県いすみ市『ポッポの丘』からお届けします。

ピエール瀧

1967年、静岡県出身。1989年に、石野卓球らと電気グルーヴを結成。音楽活動の他、俳優、声優、タレント、ゲームプロデュース、映像制作などマルチに活動を行う。
近著は『ピエール瀧の23区23時 2020-2022』(産業編集センター)。

マンツーマンで動かし方を教えてもらえるなんて!

—— 前回に引き続き『ポッポの丘』にお邪魔して、代表の村石愛二さんに施設をご案内していただいております。村石さん、引き続きお願いします!

村石 はい、よろしくね! この車両は入替動車といって、駅構内で貨物列車を動かす車両です。せっかくなんで、ちょっと動かしてみましょう。そこに汽笛の鳴らし方書いてあるんで、その通りにやってみてください。

本当だ、ドアの内側に油性マジックで殴り書きされてある。車両動かす手順も(笑)。ポッポー! 出発しまーす。うわ、本当に動いたよ! いやー村石さん、まさか動く車両にまで乗れるとは思わなかったです。というか、ここに動く電車があると思ってませんでした。

村石 線路も50mくらいしか引いてないんだけど、これでも結構お金かかるんだよね。良かったらどうぞ歩いてみてください。今は線路歩くと捕まっちゃうけど、うちの線路の上ならどんだけ歩いてくれても大丈夫なんで。

お、こっちは東海道線の車両だよ。俺の地元でも走ってたよこれ!

—— 乗ったことある車両ですか?

あるある。この車両に描かれてる“荷物”って文字を見て思い出したんだけどさ、俺が子供の頃って、小包が送られてくると静岡駅まで取りにいってたんだよね。宅配便っていうシステムがまだなかったから。うちの母親の田舎の佐賀から母親宛に送られてくる荷物が駅留めになっててさ。おばさんから「荷物送ったよー」って電話が来ると母親と一緒にバスに乗って受け取りに行ってたな。

村石 じゃあこれから、また別の入替動車を動かしてみますから、ちょっと一緒に手伝ってもらえますか? 子供たちを乗せる時なんかもやってもらってるんですよ。

はい、もちろん! まずは何からやればいいでしょうか?

村石 (扉を開く)これ見てください。こんなデッカいディーゼルエンジンで走ってるんですよ。まずは燃料コックを上げてください、そこの奥のヤツですね。

開くんすね! こんなデカいディーゼルエンジン初めて見ました。では上げまーす。はい、燃料コック上がりました!

村石 こいつをかけて走るんですけどね、冬場はエンジンの立ち上げが大変でね。はい、じゃあ次は手歯止めを取ってください。縦にして、置くところがありますんで。

—— 僕やっていいですか? はい、置きました!

村石 じゃあ、後ろにくっついてるこの車掌車を動かします。これね、木造の車両を改造して、1953年に作ったものなんです。

電車の車両ってかなり長持ちするものなんですね!

村石 うちの電車は塗装とかもメンテナンスしてるんで。千葉県内でやってくれる人を探して、安くやってもらってます。じゃあみなさん乗ってください! 運転席が結構広いんで、全員入れますんで。こいつの鍵ね、いかにも鍵みたいな鍵が付いてるんだよね。じゃあ誰か2分半計ってくれるかな?

—— はい。エアコンないんですね。

村石 そう。その時代の車両です。エンジンは1961年に新潟鉄工所が作った物で、それを使ってボディを1965年に国鉄が作ってね。数両しか作られてなくて、珍しいんだよ。それで、鍵を入れたら2分半押さえておかなきゃいけなくてね。これが結構指が痛いんだよ。

—— (時計見る)2分半経ちました!

村石 じゃあ動かしますねー。

うわ、すげえ馬力! これ1台で後ろの数両も全部引っ張ってんすね!

村石 そう、だからこう見えて燃料すごい食うんだよ。だから帰りに卵いっぱい買っていってよ(笑)。

いやあ、ポッポの丘すごい所ですよ! このラフな感じで動く車両に乗れるっていうのが! 卵いっぱい買って帰ります。

アナログさを体感した後は、物販だって楽しめちゃう

ここは、土日は結構混むんですか?

村石 うん。だけど冬の間はあんまり来ないね。平日も。今日はここにいる全員でお客さん終わりだよ、きっと(笑)。じゃあ、そろそろエンジン止めますね。これを握って、こっちを倒すだけだ。これで止まるんですよ。

やっぱり操縦のアナログ感というか、旧式機械感が半端ないですね。味わい深いです。いやーまさかのマンツーマンでのレクチャーありがとうございました! 最高でした。

村石 俺の解説はこんなもんです。ありがとね!

—— では、物販を見てから、最後に食堂車へいきましょうか。

そうね。最初は物販用に車両使ってたんだもんね。やっぱり卵は売ってるな、しかも大量に。食堂には何があるの?

—— おすすめはTKG(卵かけご飯)みたいです。いすみ米にこの辺でとれた卵をかけて食べるとのことです。買ってきましょうか?

じゃあそれにしよう! こっちが食堂車か。車両を食堂として再利用してるんだな。

—— お待たせしました。TKGです。

味噌汁と出汁醤油も付いてんのね。いただきます。うん、おいしい! 窓から風景が抜けて見えるのもいいね。

—— 読者に超おすすめできますね。

やっぱ読者はさ、きっと東京の人が多いわけじゃない。車でアクアラインを渡ってきて高速を降りたら、まず道の駅(木更津うまくたの里)があるでしょ。そこ寄ってピーナッツとか買ってさ。そのあと田園風景眺めながらのんびり歩いたりしたら、それだけで楽しそうじゃん。そしてさらに『ポッポの丘』を訪れて、電車を堪能して、最後に卵買って帰るっていうプラン。会社サボったりした日の昼下がりにやってほしい。それが俺のおすすめかな!(笑)

いすみ市・ポッポの丘

いすみ鉄道上総中川駅から徒歩30分。駐車場あり。入場料500円(駐車場利用の場合は不要)。いすみ鉄道大多喜駅・国吉駅にレンタサイクルあり。

電車SDGs度 ★★★★★
開園エピソー度 ★★★★★
突然現れ度 ★★★★★

水飲み場:あり  トイレ:あり
自販機:あり  灰皿:なし

構成=カルロス矢吹 撮影=横井明彦
『散歩の達人』2024年4月号より