衆院3補選は28日午後8時に投票が締め切られた。山陰中央新報社が投票日に行った出口調査に取材を加味した結果、島根1区は立憲民主党元職の亀井亜紀子氏(58)が自民党新人の錦織功政氏(55)=公明党推薦=を破り、当選を確実にした。唯一の与野党対決で自民は手痛い敗戦を喫し、岸田文雄首相の政権運営や衆院解散戦略に影響を与えそうだ。

 自民は1996年の小選挙区制度の導入以来、島根で初めて議席を失った。自民が派閥の政治資金パーティー裏金事件で逆風を受ける中、亀井氏は無党派層に加え、与党支持層も取り込み、自民が長年勝利を重ねてきた「保守王国」で歴史的な勝利を飾った。

 亀井氏は連合島根の推薦や候補を取り下げて自主支援に回った共産党、県連レベルで国民民主党の支援を受けた。企業・団体献金の禁止などの政治改革や、衆参10年の国会議員の経験を生かし、労働環境の改善や農林水産業の振興などに取り組むと訴えた。

 立民党本部も泉健太代表ら幹部や国会議員を相次いで投入し、裏金事件で自民批判を展開。企業や業界団体を回り、保守票の切り崩しを図った。その結果、亀井氏は大票田・松江市を中心に無党派層に浸透し、比例復活した2017年衆院選以来の国政復帰を果たした。

 錦織氏は連立政権を組む公明や県市長会など約160団体から推薦を得た。裏金事件を踏まえて政治改革を進めると主張。賃上げやインフラ整備などに力を入れ、財務省など約30年の行政経験を生かして国とのつなぎ役になると訴えた。

 さらに、自民党本部主導で総力戦を展開。小渕優子選挙対策委員長が選挙区に張り付き、国会議員が企業や業界団体を回り、岸田文雄首相も2度応援に入った。しかし、裏金事件への有権者の反発は強く、巻き返せなかった。

 島根1区補選は、細田博之前衆院議長の死去に伴って実施された。島根は1996年の小選挙区制導入以降、2021年衆院選まで全国で唯一、県内全小選挙区の議席を自民が独占した保守王国で、全国から注目を集めた。

 略歴 党島根県連代表。父の亀井久興元衆院議員秘書を経て、2007年参院選に国民新党から立候補し、初当選。17年に立憲民主党入り。同年衆院選で比例復活当選した。学習院大法学部、カナダ・カールトン大卒。松江市西津田6丁目。当選1回。