JR西日本山陰支社の佐伯祥一支社長が23日、木次線の出雲横田(島根県奥出雲町横田)−備後落合(広島県庄原市)間の沿線自治体と公共交通の在り方を協議する意向を示した。利用が低迷し、大量輸送を目的とする鉄道の特性を発揮できていないことを理由に挙げた。島根、広島両県、関係自治体の雲南市、島根県奥出雲町、広島県庄原市の対応が注目される。

 同日、米子市弥生町のJR西日本山陰支社であった定例会見で、佐伯支社長は木次線の現状を「通勤通学のニーズを含めて鉄道の維持に努力してきたが、生活利用をメインとした利用は限定的で、ニーズに応え切れてないのも事実だ」と指摘した。

 特に出雲横田−備後落合間は厳しい状況が続いているとの認識を示し、「できるだけ早いタイミングで地元に伺い、持続可能な地域交通体系を、前提を置かずに今後の進め方を含めて相談したい」と述べた。意向表明のタイミングについては「これまでも問題提起はしており、交通体系の再構築が必要であると考え、会見の場で話させてもらった」と話した。

 存廃を話し合う国の再構築協議会での議論が念頭にあるかどうかは「選択肢の一つにはなるかもしれないが、前提ではない。議論の進め方も含め、自治体や住民と協議する」と述べるにとどめた。

 今後、佐伯支社長が島根、広島両県知事、奥出雲町長、庄原市長にそれぞれ説明する。時期は未定としている。

 JR西の意向に対し、島根県の丸山達也知事は「木次線は県民生活を支える大切な路線であるとともに、鉄道ネットワークを形成する路線だ。相談内容が廃止を前提にしたものであれば応じられない」とのコメントを出した。木次線利活用推進協議会会長の石飛厚志雲南市長は「協議会として利用促進を進めている中で、信頼関係を損なうことがないようにしていただきたい。引き続き存続するために、島根県、沿線自治体、関係機関と連携し、全力で取り組んでいく」とコメントした。

 国は赤字が続く地方鉄道再編に向け、自治体か鉄道事業者の要請に基づいて存廃を協議する再構築協議会制度を2023年10月に開始。1キロ当たりの1日平均乗客数が千人未満の区間を優先して協議し、3年以内をめどに鉄道を存続させて利用促進策を講じるか、廃止してバスに転換するかなどの方針をまとめる。

 JR西は、岡山、広島両県にまたがる芸備線の備中神代(びっちゅうこうじろ)(岡山県新見市)−備後庄原(びんごしょうばら)(広島県庄原市)間で設置を求め、今年3月26日に議論が始まった。木次線の出雲横田−備後落合は同区間と接続し、22年度の1日平均乗客数は54人と低迷している。