6月にNTTドコモの社長に就任した前田義晃氏は4日までに産経新聞のインタビューに応じ、令和6年度中にも銀行業へ参入する考えを明らかにした。グループ内のサービスを連携させて顧客を囲い込む「経済圏」を強化する上で「(銀行を)機能として持っておきたい」と説明。経済圏をスポーツやエンターテインメントなどの領域にも拡大し、幅広い層の顧客獲得を目指す。

ドコモは携帯大手の中で唯一、グループの傘下に銀行を持っていない。前田氏は展開するそれぞれのサービスを切れ目なく利用するには、グループ内に銀行が存在する方が有利だと指摘。「合理的に運営できた方が顧客に還元できることも多い」と述べた。

銀行業への参入にあたっては、他銀行の買収や自社での立ち上げなど、あらゆる手法を検討する。時期は「今年度中にやれたらうれしい」と語った。

経済圏の強化へ向け、プロスポーツやエンターテインメント事業者との提携も推進する考えも示した。例えば、提携するスポーツチームの試合でグッズを購入した際に、ドコモの「dポイント」を追加付与するようなことが考えられるという。ドコモなどは5月に民間事業者として国立競技場(東京都新宿区)の運営を担う優先交渉権者に選定されたが、応募したのもこの一環だと説明した。

前田氏は「顧客が(自社のサービスを)利用したいというモチベーションを引き上げることが重要だ」と指摘。スポーツチームやアーティストのファンらに自社サービスをアピールし「仲間を増やしていきたい」と意気込んだ。

一方、ドコモの全事業の基礎となるのは通信環境だとも強調し、品質改善に努める方針を示した。就任後は都内の電車に機器を持って乗り込み、自ら各地の通信品質を計測したという。

前田氏は「例えば、決済アプリの起動速度を上げても、通信環境が悪いところでは神経を注いでいた機能にパフォーマンスが出ない」と指摘。実地調査も積極的に行い、つながりにくい場所をしらみつぶしに減らすと宣言した。(根本和哉)