【ロサンゼルス23日(日本時間24日)=丹羽政善通信員】米大リーグ、ドジャースの大谷翔平投手(29)に三冠王獲得の期待が高まっている。23日現在、23本塁打と打率・321はナ・リーグのトップで57打点は3位。MLB公式データサイト「ベースボール・サバント」によるとコース別に9分割した打率で「内角高め」が1割台と低迷しているが、唯一の弱点も克服しつつある。2012年のミゲル・カブレラ(タイガース)以来、12年ぶり11人目の快挙達成を目指す。

スケールの大きな夢を抱かせる。直近7試合で6本塁打の量産態勢。絶好調モードに入った大谷に、三冠王の期待が日増しに高まっている。

「最近は打つべくして打てている。感覚的には4月、5月よりは全然いいんじゃないか」

21日(日本時間22日)のエンゼルス戦で22号を放った後、自身の打撃をこう自賛した。打率・321と23本塁打はナ・リーグトップ。57打点は1位オズナ(ブレーブス)に7差の3位。ここまで3戦連発、7試合連続打点と死角は見当たらないように映るが、MLB公式データサイトでは顕著な課題が浮かび上がっていた。

今季のコース別打率を見ると、9分割したストライクゾーンでは「内角高め」が打率・136で唯一の1割台。このコースは昨季は・370、22年は・333、21年は・250と苦にしなかったものの、今季は他のコースと比べても極端にアベレージが低い。

とくに対右投手は打率・071と手を焼いている。球種を見ると右投手は大谷に対し、内角高めにフォーシームを42・5%、シンカー(ツーシーム)を12・5%、カットボールを27・5%の割合で投げており、速球系が82・5%を占める。早いカウントでボール気味でも投げ、ファウルや空振りを誘いストライクを先行させるパターンだ。ボール球も含むと、ここまで大谷は右投手に内角高めへ116球(ストライク41球、ボール75球)を投じられ、わずか3安打。そのうち本塁打は1本だ。

今後、早いカウントで内角高めを狙うべきか、あるいは見送るべきか。22日(同23日)のエンゼルス戦で一つの答えが見えた。一回の第1打席、1ストライクから相手右腕プリーサックが投じた2球目は内角高めの真っすぐ。大谷はこれを見送った。結局、右飛に倒れたものの、プリーサックは「少し驚いた。ほぼ振ってくるというデータだったから」と大谷の変化を感じ取っていた。

そして迎えた三回無死一塁の第2打席。今度は初球に内角高めのボールゾーンへ真っすぐを投げた。大谷はこれも見送った。「ファウルを打たせてカウントを稼ぎたかった。インハイに真っすぐを投げればボール球でも手を出してくる、というリポートだったから」。大谷は次の外角高めの直球も見送り2ボールと打者有利のカウントに導くと、3球目の真ん中低めのスライダーを見逃さず、右中間席上段へ23号2ランを放った。

「(調子が)いいときはそこまで大きく(狙いを)張らなくても、ある程度カバーできる範囲が広い」と大谷は21日に話していたものの、この数試合は打席内のアプローチに明確な狙いが垣間見える。

例年調子を上げる6月はここまで打率・308(78打数24安打)、9本塁打、19打点をマーク。24日(同25日)から敵地でホワイトソックスとの3連戦に臨む。昨季は7試合で7本塁打を放った好相性の球団だ。4戦連発となれば自身初。8試合連続で打点と得点を挙げれば、球団では1958年にロサンゼルスに移転以降、78年のレジー・スミス(83、84年には巨人に在籍)を抜く球団新記録となる。

年間ペースは198安打、47本塁打、116打点、32盗塁。2012年のカブレラ(タイガース)以来の三冠王へ、上昇軌道を描き続ける。