山陽新聞社(岡山市)など西日本の地方紙6社が地域の資源を「ふるさとの光」と位置付け、魅力を発掘、発信する連携プロジェクトが8日始動した。人口流出や高齢化といった課題を抱える地方に人を呼び込み、持続的な発展につなげる狙い。第1弾は新見市が舞台で、同社などが企画の概要を発表した。

 プロジェクトでは、新聞社が強みとする地域ネットワークを生かし、歴史や自然、食といった分野で「ふるさとの光」を選定。各社の紙面で紹介し、旅のプランも提案する。新見市は初開催のアートイベント「森の芸術祭」(9〜11月)の他、今春にJR西日本が新型車両を投入した特急やくも(岡山―出雲市)の停車駅もあり、旬の話題が多いことから実施を決めた。

 選定されたのは、幕末の備中松山藩で財政改革に尽力した儒学者・山田方谷ゆかりの地▽観光名所の鍾乳洞・井倉洞と内部の案内板▽特産の千屋牛▽帰り道に見上げる星空―など15件。ちゅうぎんフィナンシャルグループ(岡山市)の宮長雅人会長=新見市出身=や新見公立大の学生有志ら4個人・団体が推薦した。

 岡山市内で開いた概要説明会で山陽新聞社の松田正己社長が「ユニークで意欲的な初めての取り組み。秘められた魅力に光を当て、楽しみ方のメニューも提供することで多くの人に足を運んでもらいたい」とあいさつ。特別協賛するJR西の長谷川一明社長は「趣旨に賛同し、各地の地域活性化に貢献したい」と述べた。選定者によるエピソード紹介、新見市の特産品を味わう交流会もあった。

 プロジェクトは山陽、北國、福井、京都、神戸、中国の各新聞社でつくる実行委の主催。今後2〜3年かけ順次、各新聞発行エリアで「ふるさとの光」を選定する予定。

恵まれた自然や歴史評価 新見の選定者

 持続可能な地域づくりにつなげるため、西日本の地方紙6社の連携プロジェクトが始動した8日、第1弾の舞台となる新見市の「ふるさとの光」の選定者たちは、地元の人にも地域の魅力を再発見してもらうチャンスだと期待を寄せた。

 ラインアップされた15件は、種類や場所に応じて分類。岡山市内で開かれた概要説明会では、移動時間なども考慮し、ローカルフード▽自然▽歴史―を主なテーマに「ふるさとの光」を満喫できる三つの旅行プランも示された。

 選定者はそれぞれお薦めスポットやこだわりのポイントを口にした。国天然記念物・鯉が窪湿原などを推したちゅうぎんフィナンシャルグループの宮長雅人会長は「恵まれた自然に癒やしを感じてもらえる場所を選んだ」と説明した。

 東日本大震災を機に東京から岡山市に移住した写真家中川正子さんは、岡山県天然記念物の鍾乳洞・井倉洞と、職員が作ったとみられ、ぬくもりを感じるという多くの案内板を選んだ。「大都市では手に入らない手つかずの美しさが残る」と述べた。

 特産の千屋牛や江戸時代から続く「土下座まつり」を取り上げのは岡山大研究・イノベーション共創機構の岩淵泰准教授。「観光客が来れば地元の人も何が『光』なのかに気付くきっかけになる」。新見公立大の学生有志も「市外の人はもちろん、市内の人にも魅力を発信し、興味を持ってもらえばさらなる発展につながる」と力を込めた。