子どもたちが学校にいるとき災害が起きたら、どうやって避難させるのでしょうか。静岡県三島市出身のデザイナーが教育現場を助けようと、床や壁などに貼り付ける「テープ」を開発しました。教員の不安を軽減し、子どもを守るための新たな取り組みです。

<サイレン>
「訓練、訓練。給食室から火災が発生しました。先生の指示に従い『おかしもち』の約束を守って運動場に避難してください」

4月19日、三島市の小学校で行われた訓練です。2年生が列を作り、校庭に向かって避難します。

目印にしているのはテープを「貼る」ことで避難の「ルート」を示す「ハルルート」。考案したのは三島市出身のデザイナー橋本明花さんです。

<デザイナー 橋本明花さん>
「両親や親族が教育関係者が多かったということで、デザインの力でそういった学校の教育現場の課題を解決できたらなと」

学校で災害が起きたら子ども全員を守る自信があるか、聞いたアンケートです。
「ない」と答えた人が全体の74%と、学校での避難誘導に不安を抱く教職員が多くいることが分かります。

<竹川知佳記者>
「階段のテープは高さ130cmの位置に貼られていて、低学年の児童の目線に合わせています」

「ハルルート」は子どもたちの視界に入りやすいように廊下の床の中央や壁の低い位置に貼られています。

「おさない」、「かけない」、「しゃべらない」、「もどらない」、「ちかづかない」。
避難の際に心掛けてほしい合言葉「おかしもち」が書かれているほか、子どもたち全員を守るための様々な工夫が施されています。

<デザイナー 橋本明花さん>
「結構試しましたね。デザインもよく見ると、ちょっとずつ変えていまして。お子さんの中には色弱の方ももしかしたらいらっしゃるかなと、そういった方にもきちんとケアできるような色としてより視認性が強い色をセレクトしています」

テープの色は煙が充満する中でも見やすいだけでなく、色の認識が難しい、赤などの刺激的な色に過剰に反応してしまうなどの特性を持つ子どもに配慮し、「非常灯の緑」を採用しました。

<三島市立東小学校 五十川紀子教頭>
「思っていたよりもド素人でも貼りやすい、子どももやれるかもしれない」

素材の種類や厚みも工夫されています。今後は、子どもたちにもテープを貼ってもらい、避難ルートを学んでほしいと考えています。

新たにテープが貼られた校舎で訓練をした児童たち。「おかしもち」の約束を意識し避難開始からおよそ5分でグラウンドに逃げることができました。

<2年生>
「分かりやすくて、すぐ避難ができるようになっていて、安心して下に降りることができました」

<2年生>
「あるほうが逃げやすいと思います」

<渡邉絵里子教諭>
「ちゃんと意識するんだなってびっくりしました。いつも教師がついているとは限りませんしね。子どもたち自身が喋らない、近づかないって朝のうちに読んでましたので、いつも意識してこれで逃げられるなって安心しました」

今回、貼ったハルルートは普段から、子どもたちに意識してもらうため、訓練が終わった後もそのままにします。

<デザイナー 橋本明花さん>
「生徒さん一人一人が防災意識を持つということが、先生の避難誘導のしやすさにつながってくると思うので、そういったお子様一人一人の防災意識の変化に寄与できたらよいと思っています」

どうしたら子どもたち全員を守れるのか。大人も子どもも、一緒の目線で考えることが大切です。

現在は製品化に向けた試作の段階ですが、今後は素材などの改善を重ねて、学校以外での活用も視野に入れています。具体的には、病院や高齢者施設、商業施設にも利用の範囲を広げていけたらと、考えているということです。