滋賀県守山市の市立守山南中学校(生徒数1101人)で、新3年生(11クラス、381人)のクラス分けが定まらず、授業も開かれないという前代未聞の事態が起きた。一旦決まっていたクラス編成が「生徒指導上の配慮不足」という意味不明な理由で急きょ「やり直し」されることになり、4月8日に予定されていた始業式を取りやめて新3年生は臨時休校。「正式なクラス」は10日に発表されるはずが、「生徒の不安に配慮するためのヒアリングに時間を要している」と再延期され、12日朝、学校の体育館に新たなクラス編成の表がようやく貼りだされたという。

新3年生一人ひとりと面談をした、

今回の守山南中学校でのクラス替え騒動、そもそもは保護者からの“クレーム”が発端だったという。守山市教育委員会学校教育課の担当者が経緯を説明する。

「4月5日に『学級開き』があり、そこで発表された新しいクラスでレクリエーションや始業式の準備を行ない、その日は午前中で解散となりました。

ところがその後、保護者から『人間関係で問題があるんじゃないか』と新クラスの編成についてご指摘をいただき、学校側でも確認したところ、配慮が足りない部分が発覚したので、学級の再編成を決定しました。

お子さんの個人情報もありますので具体的にお伝えするのは難しいのですが、人間関係の問題があり、それを教員たちも把握していた状態であったにも関わらず、配慮が足りない学級編成を行なってしまったことに気がついたため、異例のことではありますが、このような判断に至りました」

市教委が「異例」と認めるように、生徒同士の組み合わせが悪かったことが判明したからといって、一度発表したクラス編成をいじり直すとは異常事態といえる。始業式の予定だった8日は新3年生のみを臨時休校とし、同日夜に保護者説明会を開催したが、校長からは具体的な説明はなかったという。市教委の担当者が続ける。

 「子どもたちの個人情報特定に繋がらないようにご配慮していただきたいというお願いもしつつ、もう一度学級編成させていただくことについてお願いをしました。その翌日、新3年生にも学年集会を開いて謝罪をし、新しい学級編成をするのでもう少し待ってほしいという説明しました。10日に新たなクラス分けを発表しようと教員たちも夜まで作業をしたのですが、今度も不手際があってはいけませんので、しっかりと確認するためにはもう少し時間が必要なのではないかということになりました。学年集会のあと、新3年生一人ひとりと面談をして、新しい学年を迎えるにあたって不安な点などを確認し、そこで出てきた子どもたちの思いも踏まえて学級編成をする必要もあったため、このような判断に至りました」

数年前にもある事件が…

学級編成が決まらなければ授業も始められない。そうまでして「配慮」する事情といえば、いじめの加害者と被害者を同じクラスにしてしまっていたことが発覚したケースが想定されるが、今回はそうではないのだという。8日の保護者説明会に参加した男子生徒の母親が、こう証言した。

「説明会に参加した保護者は100人近くはいたと思います。校長先生が『この度はこのような事態になってしまい申し訳ございませんでした』と頭を下げて、クラス替えやり直しの理由を『人間関係に問題がある生徒が一緒になったから』とか言ってましたけど、もちろんそんなので納得いくはずないじゃないですか。

その子たちに学年全体が振り回されて授業もまだ始められていない状況なわけですから。それで質疑応答になって、一人の保護者さんが『それってイジメとかじゃないですよね?』と聞いたところ、校長先生が『今回はイジメが原因ではありません』と話したので、じゃあなんでクラス替えなんてするの?という思いになりました。

その後も、他の保護者さんが『人間関係に問題があるとは、具体的になにがあったんですか?』と問い詰めても、『それは個人が特定されかねないので、お答えできない』と繰り返すばかりでした」

ある守山市議会議員はこう証言した。

「私も教育委員会に『人間関係に問題があるとは具体的にどういうことか?』と問い合わせましたが、『準備ができ次第、またご連絡します』とお茶を濁されただけで、まだ連絡がありません。

そもそもこちらの中学では、数年前にもある事件があり、学校自体に問題があるのではないかという指摘はありました。だから今回の件が報道されてから、市内の小学校の児童の保護者たちも不安視する方が多いし、『そもそもここ数年、守山南中は教育絡みの不祥事が多すぎませんか』という声も上がっています。

とりあえずは、在校生が学業に専念できるようになることが最優先ですが、新たなクラス編成についても、保護者たちから『どうして一部の人の意見は採用されて、私の子どもの意見は反映されないんだ』という類の意見が噴出する可能性はあるでしょう」

「学校側は『イジメではない』と言うだけ」

学校教育の場でいちいち生徒や保護者の好き嫌いを反映していたらキリがないし、そもそも小学校や中学校の「学級」とは、集団と個の関係性を学び、社会性を身に付ける場所である。それでもクラス替えをやり直さなくてはならなくなった背景に、いったい何があったのか。前出の男子生徒の母親もこう首をかしげる。

「たしかにこの中学校は、過去にもいろいろな問題がありました。でも新3年生にはヤンチャな子も少ないし、問題が起きたこともなかったので安心していたんです。それなのにクラス替えをやり直す事態になり、学校側も『イジメではない』と言うだけで、具体的なことには一切ふれない。

中学3年生は高校受験も控えているというのに、なぜ少人数の生徒のためだけにクラス替えをもう一度行なうのか疑問でなりません。実際にあの説明会だけで納得した保護者は少なかったはずです」

結局、新しいクラス編成が発表されたのは12日の早朝だった。前出の市教委の担当者はこう話した。

「今朝、体育館にクラス表を貼りだして、子どもたちが新しいクラスごとに整列したうえで、学年主任から『いろんな思いはあるだろうけど、このクラスで1年頑張っていこう』といった話をさせていただきました。その後、新クラスへ荷物をもって移動して、学級開きを行なったという感じです。

また、学習指導のスケジュールはコロナやインフルエンザなどによる学級閉鎖が起こる可能性も考慮して、ゆとりをもって時間数の設定をしております。今の段階では当初の(学習指導の)予定からは遅れていますが、これから学習活動を本格的に始めさせていただきますし、そこは回復に努めてくれると思っております」

いじめのない平和な学級で、配慮しなければならない生徒同士の人間関係とは何だったのか。生徒も保護者も“謎”が残ったまま遅い新学期がやっとスタートした

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班