金沢行きのしらさぎ、乗り納め!
金沢行きのしらさぎ、乗り納め!
『週刊プレイボーイ』で連載中の「ライクの森」。人気モデルの市川紗椰(さや)が、自身の特殊なマニアライフを綴るコラムだ。今回は市川紗椰が廃止された「敦賀−金沢間」の特急について語る。

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9年前に東京−金沢間が開通した北陸新幹線ですが、先日ついに福井県まで延伸しました。これで、東京駅から乗り換えなしの2時間51分で福井駅まで行けます(終点は敦賀【つるが】駅)。「やっと福井に新幹線が!」と便利になる一方で、鉄道好きにとっては寂しさもあります。

今までは、JR金沢駅を中核に、各方面に向かうたくさんの特急列車が北陸本線を行き来してました。本数の多さから「特急街道」とも呼ばれていましたが、このたび、敦賀−金沢間の特急が廃止に。

地域輸送や貨物輸送の路線としては残りますし、近畿・中京方面から敦賀までの区間の特急も残りますが、やっぱり寂しいですね。金沢駅で、特急「サンダーバード」と特急「しらさぎ」がもう見られないなんて。

実は運行最終日にしらさぎに乗ってきました。東海道新幹線ひかりで米原(まいばら)に行き、米原から金沢まで、ラストランの4本前で。米原駅は乗り換え人数の多さからすると狭い駅で、いつ行っても混雑しているイメージ。日常的に利用している人はイライラするでしょうけど、たまにしか使わない者としては、知らない街の日常に巻き込まれている感じがしてワクワクします。

今回は金沢行きのしらさぎの見納めなだけに、いつも以上にざわざわしてました。写真を撮ってる鉄道ファンはもちろん、「金沢行き」のアナウンスを録音している人もたくさん。よくわからなそうだけどつられて写真を撮る人もちらほらいて、独特な高揚感が漂ってました。今後は金沢に行くのに乗り換えが増えるから不便になる、とぼやいてる地元民もいましたね。

さて、乗車したのは681系のしらさぎ。681系は「ぷおん」と鳴る加速音が素晴らしい車両。存在感のある走行音で、夜の静けさに響き渡るその音を体感して以来、ファンです。今回は金沢行きのアナウンスも併せての録音・録画を試みましたが、微妙な結果に。

とにかく敦賀−金沢の雄大な景色と心地よい揺れを堪能しながら、金沢に向かいました。北陸本線はロングレール化されてない箇所が多いのか、ガタンゴトンというジョイント音も魅力的。北陸本線+特急の速度じゃないと味わえないこの乗り心地、最後に噛み締めました。

ちなみに次の日、新幹線延伸記念特番の生放送を終えてから、延伸に合わせて新しく開業した並行在来線「ハピラインふくい」に乗りました。ハピラインふくいは、新幹線が通るようになった区間の一部をJR西日本から移管された、第三セクターの鉄道。前日にしらさぎ号で乗った所の一部を、今度は出来たてほやほやのローカル線でなぞることになります。

とはいえ、駅名標がピンク色になったこと以外は、北陸本線の頃とほとんど変化なし。車両もJR西日本から引き継いだ521系を使用しており、カラーリングをピンクとグリーンに変えた1編成以外は今までと同じ見た目だし、駅の接近メロディも変更なし。

しかし、大きな違いも! なんと、快速列車が誕生! 福井駅から敦賀駅までを38分で爆走します。北陸本線には快速はなかったし、そもそもローカル線で快速は珍しいので、第三セクターによる新たな地域の足として頑張ってほしいです。

●市川紗椰
1987年2月14日生まれ。米デトロイト育ち。父はアメリカ人、母は日本人。モデルとして活動するほか、テレビやラジオにも出演。著書『鉄道について話した。』が好評発売中。福井で食べたピーマンがおいしすぎた。公式Instagram【@sayaichikawa.official】