先日、CSスポーツチャンネル「GAORA」さんのお仕事で、甲子園球場の阪神−ヤクルト戦の中継をやらせていただきました。地元の阪神寄りになりがちな主音声に対して、副音声は「スワローズ寄り」にしたいということで、ヤクルトOBの舘山昌平さんと一緒にお邪魔しました。

副音声ブースに実況の方はおらず、「ふたりで好きなことを喋っていい」とのことで、時には試合展開も忘れて自由にとことん野球談義ができ、とても楽しかったです。肝心の解説のほうも、館山さんから興味深いお話をたくさん引き出せて、納得のいくお仕事ができた気がします。

甲子園球場で目に入ったのが、スタンドのあちこちに掲出された広告でした。これはスポンサーが球場にお金を払って広告を出しているのですが、テレビ中継のたびに私たちの目に入ってきます。真剣な表情の選手の後ろにユニークな広告があったりすると、思わずクスッとしてしまうことも。

一般的に、スタジアムで一番料金が高いのは内野のフェンス近くに掲出される広告で、聞いたところによると、1000万円以上の金額が球場に支払われているそうです。内外野のフェンス以外にも、広告は球場のいたるところにあります。たとえば、神宮球場でもお馴染みですが、球速が表示されるバックスクリーンディスプレイには球速と同時にスポンサー名が表示されます。

変わったものでは、リプレーやリクエストを検証する動画が流れる際に表示される広告です。バックスクリーンにリプレー動画が表示されている横にスポンサーの名前が表示される仕組みで、1試合で平均、数十回再生されるそうです。甲子園球場の広告資料を見ると、その金額はなんと年間2500万円!しかし、みんなが間違いなく注目する場面ですから、広告効果も高いのでしょう。

あらためてそういった目で見ると、野球をはじめとしたプロスポーツは広告と不可欠であることがわかります。先日には、我が軍の親会社であるヤクルトが大谷翔平選手のドジャースとスポンサー契約を結びました。レフトスタンドに看板を出すそうです。

金額は公表されていませんが、ドジャースが大谷選手と約1000億円という大型契約を結んだ意味はここにこそあったと言えるでしょう。成績や集客のみならず、広告までも集めてしまう。スター選手の経済効果は計り知れません。

館山さんのお話が本当に面白くて、3時間半ずっと昂っておりました。
館山さんのお話が本当に面白くて、3時間半ずっと昂っておりました。

ヤクルトのスター・村上宗隆選手が2年前に三冠王を達成したことを祝って、スポンサーから3億円の家をプレゼントされたことは記憶に新しいですね。それは大きなニュースになりましたし、スポンサーは私たちと一緒にペナントレースを盛り上げてくれていることがわかります。

松山の坊っちゃんスタジアムで行なわれたヤクルト戦を見に行った時には、ローカル色の強い広告が印象に残りました。地元を代表する企業もあれば、私の勉強不足で聞いたことがない社名もありました。地元に根ざした立派な企業で、スタジアムに広告が掲出されることを誇りとしているのでしょう。

プロ球団のスポンサーになるには大きな資金が必要ですが、一方で独立リーグなどでは、比較的に少額でもスポンサーになれます。独立リーグのチームはスポンサー集めに苦労しているところも多いようで、ルートインBCリーグの福島レッドホープスで「社長」兼「監督」を務める岩村明憲さんは、「球団社長の一番大きな仕事はスポンサー探しだ」とおっしゃっていました。おかげで、一年中休まることがないそうです。

プロ野球のペナントレースでも、スポンサーの名前がいたるところに冠されていることに気づきます。SMBC日本シリーズ、日本生命セ・パ交流戦、マイナビオールスターゲーム......。もし、自分のお父さんやお母さんが勤めている会社の広告が目に入ったら、お子さんはきっと鼻が高いでしょうね。

過去の映像を見ると、球場に掲出されたスポンサー名が今と違うことも多々あります。広告は時代を映す鏡で、時代とともに移り変わっていくもの。現在の広告を懐かしく思う日もくるのでしょう。

それにしても、私たちは意外とスタジアムの広告を見ているんですよね。愛する球団やスタジアムを支えてくれるスポンサー様に、あらためて敬意を表したいと思います。それではまた来週。

構成/キンマサタカ 撮影/栗山秀作