世界的にもネコアレルギーの人は10〜20%いるといわれている(イラスト:長崎訓子)

 ネコと暮らしているヒトの多くは、ネコアレルギーを持っていないラッキーな人たちです。でも、自分がネコアレルギーかどうかは専門の検査をしたり、実際に一緒に暮らしてみたりしないとわかりません。今回は、ネコアレルギーが飼い主とネコとの関係にどのような影響をおよぼしているかを調査した論文“Human allergy to cats: A review of the impact on cat ownership and relinquishment”を紹介します。

ネコアレルギーの人は世界中に

 世界では10〜20%の成人がネコアレルギーを持っているといわれています。アレルギーの中でもイエダニに次いで2番目に多い事例といわれ、目のかゆみや充血、くしゃみなどを引き起こします。ネコアレルギーの原因物質は8種類あり、ネコアレルギーの8〜9割の人が「Fel d 1」と呼ばれるアレルゲンに反応しているといわれます。Fel d 1は主に唾液(だえき)に含まれ、ネコが毛づくろいをすることで環境の中に広がっていくと考えられています。

 自分がネコアレルギーだと知っていれば、ネコと暮らすことを最初から諦める人もいるでしょう。しかし、ネコと暮らしたことがない人がネコと暮らし始めたことで、自分がネコアレルギーだと気がつく場合もあるようです。もしネコアレルギーだった場合、ネコとの暮らしにどのような影響を与えるのでしょうか。

 そこで、イギリスの獣医師は、2020年12月までに公開されたネコアレルギーに関する論文を調査しました。すると、ネコアレルギーによるネコとの暮らしへの影響理由は大きく3つに分類することができました。①そもそもネコと暮らさないという選択をする、②一緒に暮らしているネコを手放す、③保護施設から引き取ったネコを手放す、という結果です。

アレルギーがネコを手放す理由になる

どんなにキレイにしてもネコのアレルゲンは無くならない(イラスト:長崎訓子)

 アメリカやオーストラリア、ヨーロッパでの調査結果によると、ネコを手放す理由の上位3〜5位にネコアレルギーが入っていたとのこと。またネコアレルギーを理由に5〜35%の人がネコと暮らすことをちゅうちょすることがわかりました。アメリカではネコアレルギーはイヌアレルギーの2倍いるとされ、ネコアレルギーの人はネコと暮らさない選択をすることが多いそうです。

 また、ネコアレルギーを理由に手放されて保護施設に戻されてしまうネコは 5〜15%いるとのこと。これは細かく論文を分析すると、ネコアレルギーを手放す言い訳として使っているわけではなく、本当にアレルギーで泣く泣く手放していたようです。

 自分がネコアレルギーであっても、手放さないで一緒に暮らしている人もいます。ネコアレルギーへの対策には、 こまめにネコをお風呂に入れたり、部屋の掃除をおこなったり、ネコの入れる部屋を区別したりといった方法があります。また倫理的に抵抗がある人は多いと思いますが、アレルギーを抑えるワクチンやフードも開発されています。

 しかし、ネコアレルギーの物質をもっていないネコはいません。もし初めてネコを引き取るならば、飼育放棄にならないよう、事前に家族全員のネコアレルギー検査をしておくとよいでしょう。

あまり毛づくろいをしないタイプの愛猫スカイ

今回ご紹介した論文

Human allergy to cats: A review of the impact on cat ownership and relinquishment

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