映画『バジーノイズ』栁俊太郎さん

むつき潤の同名コミックを原作に、JO1の川西拓実、桜田ひよりのW主演で5月3日(金・祝)に公開される映画『バジーノイズ』。DTM(デスクトップミュージック)を題材にした音楽青春映画は、今を生きる若者たちの繊細でリアルな心理描写や、それにリンクするような音楽表現、登場人物それぞれの人生に変化をもたらし合うストーリーが魅力の注目作だ。smart Webでは、主人公の清澄の音楽に衝撃を受け、共に音楽を奏でることになる大浜陸を演じた栁俊太郎にインタビュー。今の若者たちをリアルに描いた本作の魅力について聞いた。

演じたのはベーシスト・陸。リアリティを出すためにベースを猛練習

映画『バジーノイズ』栁俊太郎さん

──今回演じられたのは、JO1の川西拓実さん演じる主人公の海野清澄とバンドを組み直すベーシストの大浜陸です。どんな役どころですか?

栁俊太郎(以下、栁) ベース以外のことは不器用で、人に気持ちを伝えるのが下手なんですが、心の内にはすごく熱いものを持っている人ですね。本当に音楽が好きなだからこそ自分のやりたい音楽ができる道へトライしたくて、方向性が違う今の環境から抜け出したいと思っていて……という役です。

──方向性が違う今の環境から抜け出したいと思っている陸は、清澄と再会し音楽の楽しさを取り戻していきます。陸に共感した部分はありましたか?

 やりたいことを続けられずにいるっていう人が大半だと思うんです。やっぱり難しいことってあると思いますしね。陸自身は「続けた人しか見えない景色はある」とわかってはいるんだけど、動かなかった人間なんです。そんな陸が、清澄に動かされて、(桜田ひよりさん演じる)潮に動かされて、行動していくっていうところに共感しました。素晴らしい仲間がいて、仲間たちに“動かされた”んですよね。僕も結局、自分で動いたっていうよりは、いろんな人に動かされ、助けられてこそ、やりたいことができているなって思う人生なので、そこに共感しました。

映画『バジーノイズ』

──ベーシストを演じるにあたって、どのくらいベースの練習されたのでしょうか?

 今回はほぼほぼ全く弾けない状態で一から臨みました。やはり“音楽もの”の映画ですし、ベースがうまく見えないと説得力がないので、練習期間は1カ月いただいて。それに加えて、ライブのシーンの撮影まではクランクインしてから時間があったので、毎日ベースを持って現場へ行って、撮影の合間の空いた時間で練習をしていました。

──劇中の音楽は、ベースラインが奏でるメロディーも印象的でした。実際演奏されてみて、難しかった部分や楽しめた部分はありましたか?

 ずっと一人で練習をしていたときはキツかったですね。ベースって、例えばアコースティックギターやピアノみたいに、自分一人で楽しめるって感じではなくて、人と合わせたりスタジオで音を聴いたりしないとなかなか楽しめなくて。でも、スタジオのスピーカーで弾いた時や、大きな音で聴いたときなんかは「すっごく気持ちいい!」って思いました。

映画『バジーノイズ』栁俊太郎さん

──主人公の清澄から生まれる音楽は全て、人気楽曲を数多く手がけるYaffle(ヤッフル)さんが制作されたとのことですが、劇中の音楽の印象をお聞かせください。

 めちゃくちゃかっこいいっすよ!かっこよすぎて「え……俺、これを演奏するの?」みたいな感じで最初はちょっと想像できなかったですね(笑)。「(演奏するのは)絶対無理だ」と思いましたし。実際ベースラインを動かして演奏をやってみて、やっぱり難しかったです。

──DTM(デスクトップミュージック)というジャンルをテーマにした映画ですが、普段こうした音楽は聴かれますか?

 普段からDTMは聴きます。(Yaffleさんプロデュースの)藤井風さんの曲も、Yaffleさんの音楽もいつも聴いていたので、Yaffleさんが作った曲に参加できるっていう時点で、感動でしたね。

ピュアさが魅力で努力家の川西拓実、センシティブな演技力も光る桜田ひより。「素晴らしい作品になる!」と確信

映画『バジーノイズ』栁俊太郎さん

──主演の海野清澄役・川西拓実(JO1)さんと岸本潮役・桜田ひよりさんについて、共演した感想をお聞かせください。

 川西君は超天然で、すごい愛されキャラなんですよ!弟っぽい感じがすごくあって、めちゃ可愛いんです。透明感があってちょっとフワッとしてる感じもあって。韓国と行ったり来たりだったからすごく疲れていたと思うんですけど、すごく頑張っていました。頑張り屋さんで努力家ですね。(川西さんが演じた)清澄は、まっすぐでピュアがゆえにいろいろ考え込んでしまう……という役どころなので、ピュアさがある人じゃないと、こういう役ってできないと思うんです。演じている時のまっすぐな目も含め、映像を観たときに「素晴らしい作品になる!」と思いましたね。

映画『バジーノイズ』

 (桜田)ひよりちゃんとは『東京喰種 トーキョーグール』っていう映画で共演していて、当時(桜田さんは)13、4歳くらいだったんですよ。なので「めっちゃ大人になってる!」と感じました。でも芝居はやっぱりすごくて。辛くてセンシティブな場面が多かったと思うんですが、毎回感動させられましたね。

映画『バジーノイズ』

──監督はフジテレビの人気ドラマ『silent』の風間太樹氏でした。風間監督の演出はいかがでしたか?

 この作品は、言葉にできない“空気感”みたいな部分を“間”や“音”を通じて伝えるので、演出もなかなか難しかったと思うんです。絶妙な気持ちのズレが音楽におけるズレにもなっていく……というように、全部がリンクしていく作品なので。俺らもわからないところがあって「どうしたらいいですかね?」と監督に聞いたことがあったんですが、監督はちゃんと準備して言葉にしてくれたんです。「例えばこういう状況、こういう気持ちになったときに、彼はこういう気持ちになるでしょう?“例え話”、ね」という感じで。それを伝えるのって、だいぶ考えて準備しておかなければ相手には伝わりにくいことだと思うんです。そういう意味でも、演出にすごく一生懸命になってくださったと感じました。

現代の繊細さを表現している音楽青春映画は大人でも楽しめる

映画『バジーノイズ』栁俊太郎さん

──「今を生きる若者たちの心に届く音楽青春映画」がコンセプトの本作ですが、どのあたりが“今を描いている”と感じましたか?

 僕が10代の頃も『ソラニン』とか『BECK』とかいう音楽映画にはだいぶ影響されました。あのとき考えていた繊細な感情って、言葉にはできないんですよね。それを映画とか漫画とかで代弁してくれたことに、すごく救われていたっていう気持ちがあります。この作品も、そういう意味では昔と変わらないというか。もし僕が10代の頃にこの作品を観ていてもそう思うだろうし、その気持ちは割と一緒だと思うんですよ。若者が「やりたいことを見つけられない」とか「やりたいことに向かって行きたいんだけど……」っていう葛藤みたいなものって大枠としては変わらないと思います。でも『バジーノイズ』が「ちょっと現代っぽいな」と思うのは、まず音楽そのものがやっぱり全然違いますよね。昔のものに比べてもうちょっとプラトニックというか、無機質な色が強いと感じます。

映画『バジーノイズ』

──若者の葛藤や不安にも“今っぽさ”を感じましたか?

 “不安なもの”っていうのは、昔はもっとわかりやすく大きく「ドーン!」ってあったと思うんですよ。例えば「学校でのいじめ」とか「やりたいことが見つからない……」みたいに、“不安のプラットフォーム”みたいなのが一つだったと思うんですよね。昔はトピックが大きかった気がするんですけど、それがもっと細分化されていて、一つになるのが難しい……というところに“今っぽさ”を感じます。

──昔と比べて多様化している悩みも映し出されているんですね。

 昔みたい悩みがわかりやすかったら、わかり合える人の分母がでかいじゃないですか。でも多様化している中で悩みが細分化されていると、全部合致する人ってなかなか見つけにくいと思うんですよね。たぶんその細かさというか繊細さみたいなのが、『バジーノイズ』独特のもので、今までにない感じかなと思って。それがやっぱり音楽にも表れていると感じます。

映画『バジーノイズ』栁俊太郎さん

──改めて映画『バジーノイズ』の見どころをお聞かせください。

 この映画は「一人で音楽をやるのもいいし、バンドでもいい。ただ『お前のやりたいことを、俺は応援するぜ!』」っていう背中を押す感じが今の時代に合っていて、優しく柔らかさのある映画だと思います。“説教くささ”は一切ありません。音楽青春映画なので、ティーンの子たちには絶対響くと思いますし、30代40代の方にも懐かしいって気持ちを抱かせつつ、メッセージ性のある映画でもあると思っています。人によっていろいろな青春があって、大人にだって青春はあると思うので、いろんな人に楽しんでもらえる作品だと思っています!

(了)

Profile/栁俊太郎
1991年5月16日生まれ、宮城県出身。2009年、第24回MEN’S NON-NOモデルグランプリを受賞。2012年、俳優デビューした後、『東京喰種トーキョーグール』シリーズ(17-19)、『弱虫ペダル』(20)、『るろうに剣心 最終章 The Final 』(21)、『猿楽町で会いましょう』(21)、Netflix映画『ゾン100〜ゾンビになるまでにしたい100のこと〜』(23)などに出演。24年1月公開の映画『ゴールデンカムイ』では二階堂浩平/洋平の二役を好演し、話題をよんでいる。

『バジーノイズ』作品情報

映画『バジーノイズ』

主演:川西拓実(JO1) 桜田ひより
出演:井之脇海 栁俊太郎 円井わん 奥野瑛太 天野はな 駒井 蓮 櫻井海音 馬場園梓 /佐津川愛美 テイ龍進
監督:風間太樹
原作:むつき潤「バジーノイズ」(小学館「ビッグスピリッツコミックス」刊)
Music concept design:Yaffle   
主題歌:「surge」 清澄 by Takumi Kawanishi(JO1) ©︎LAPONE Entertainment
音楽プロデュース:菊地智敦 音楽:坂本秀一
脚本:谷口恒平、沖野浩孝、風間太樹
製作:映画『バジーノイズ』製作委員会  
制作プロダクション:AOI Pro.  
製作幹事・配給:ギャガ
2024/日本/カラー/ビスタ/5.1chデジタル/119分  
©むつき潤・小学館/「バジーノイズ」製作委員会

公式サイト:https://gaga.ne.jp/buzzynoise_movie/

5月3日(金・祝)TOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー

写真=田中利幸
インタビュー・文=石野志帆

©むつき潤・小学館/「バジーノイズ」製作委員会