1年前に2部降格を免れたボーフムは、2シーズン連続となるブンデスリーガ残留を果たせるだろうか。他クラブと比べて、戦力的な見劣りは否めない。シーズン開幕から6連敗を喫したようにスタートは最悪で、トーマス・ライス監督を早々に解任している。

 トーマス・レッチュ新体制で迎えた9節のフランクフルト戦(ホーム)で今季初勝利を飾ったが、カタール・ワールドカップによる中断を迎えた時点で17位に沈み込んでいた。

 だが、ボーフムは諦めることを知らないクラブだ。かつては1部の常連で、UEFAカップ出場(現ヨーロッパリーグ)経験もある。経営やチーム作りの失敗により、もう立ち上がれないと感じさせたのは一度や二度ではない。でも、そのたびに立ち上がってきた。

 ボーフムは炭鉱町だ。サポーターは選手に、チームに、そして監督に、飽くなき闘争心を求める。勇敢に立ち向かい、限界まで走り、そうやって身体を張って戦う姿に共鳴する。

 選手たちは先日、バーベキュー決起集会を催した。「チーム一丸となるために重要だった」。37歳ながら中盤の底で精力的な動きを見せ、チームを支える主将アントニー・ルジアの言葉だ。

 ここ最近は左サイドバックでの起用が多いCBドミニク・ハインツは、「これまで以上にチームとなれているし、誰もが思ったことを口にできている。チームとしてまとまる。それが大事なんだ」と手応えを口にしている。
 
 やれることはすべてやる。セットプレーのバリエーションは豊富で、ロングスローもレパートリーのひとつ。たとえ右サイドからのスローインでもゴール前まで届く位置なら、左ウイングのクリストファー・アントウィ=アジェイがわざわざ投げにくる。

 敗色濃厚だった33節ヘルタ・ベルリン戦では、アディショナルタイムにCKから途中交代のDFケベン・シュロッターベックが打点の高いヘディングシュートを決めて、アウェーに詰めかけた大勢のボーフムサポーターを熱狂させた。

 興奮冷めやらぬまま、ミックスゾーンで気持ちのこもった受け答えをしていたシュロッターベックの姿が強く印象に残る。

「この勝点はものすごく大事。シーズンが終わった時に決定的な意味を持つはずだ。ファンのサポートはものすごかった。1万2000人もアウェーに来てくれるなんて。試合が終わった後も、僕らに次の試合へ向けての力を与えてくれたよ」

【動画】33節ヘルタ戦で生まれた起死回生の同点弾
 シュツットガルトがマインツに勝利した翌日の結果により、ボーフムは2部3位との入れ替え戦に出場する16位に順位を下げた。27日15時30分(日本時間22時30分)にキックオフとなる最終節の相手は、6位レバークーゼン。ヨーロッパリーグ出場を確定させるために勝利が必要なチームが相手なだけに、非常に厳しい試合になるのは間違いない。

 勝点32のボーフムが自動残留するにはレバークーゼン撃破が必須条件だろう。勝利できた場合、シュツットガルト(勝点32)かアウグスブルク(同34)の負け、あるいはシュツットガルトの引き分けで逆転残留。引き分けだと、17位シャルケ(同31)に抜かれ、自動降格圏に落ちる可能性がある。ボーフムとしては負け、引き分けは絶対に避けたい結果だ。
 
 待ち受けるのはクラブの命運をかけた戦いだ。ボーフムに所属する日本代表FW、浅野拓磨の気持ちも最終戦に鋭く向けられている。ヘルタ戦後の談話を紹介しよう。

「自分がチャンスで決めていれば……。とにかく残り1試合に向け、切り替えて準備するしかないなと。これまでも目の前の試合に100パーセントで臨んできましたし、今まで通りやるだけかと思います。チームやサポーターの雰囲気は(普段と)すごく変わると思いますけど、僕は逆に流されずに。どの試合も大事で危機感はあります。ただ、やるべきことは変わらない」

 シーズンを問わず、ブンデスリーガの最終節はかならず何かが起こる。ボーフムは幸運を引き寄せることができるだろうか。ルジアが力強く言葉にしている。

「ホームでもう1試合ある。ファンタスティックなファンの前で全力のプレーをするよ」

 来季もまたブンデスリーガでプレーできることを信じて。

取材・文●中野吉之伴