かつてのチームメイトででもある“兄弟”セルヒオ・ラモスについて質問されたルカ・モドリッチは自分に重ね合わせるようにこう答えた。

「セルヒオは偉大な選手だ。誰もが年齢を指摘したがるにもかかわらず、トップレベルを維持していることを示している」

 その言葉には、契約延長を判断する際には身分証明書を見るべきではないという思いが込められていた。かねてから強調していたこの願望は、今シーズン限りで契約が切れることで、自分の身に降りかかる事態になっている

 2021年以降、モドリッチはシーズンごとに契約を更新してきたが、今回は去就が完全に宙に浮いている。「今シーズン限りで契約が満了する選手は何人かいる。しかしこの種のテーマは、シーズンが終わりに近づく頃に、話し合われるべきことだ。モドリッチ、(トニ・)クロース、ナチョについても今日明日で解決できるものではない」とマドリーの関係者は答える。
 
 一般論としては確かにそうだが、しかしその中で今年9月に39歳を迎え、今シーズン、出場機会が激減し、控えの立場を受け入れることに拒否反応を示しているモドリッチはやはり特殊なケースだ。契約延長に疑問が投げかけられている所以でもある。

 現場を預かるカルロ・アンチェロッティ監督も難しい立場にある。セビージャ戦(第26節)後、「すべてはルカの手中にある。テクニカルな問題で、私が立ち入るべきものではない。今後数か月の間に、すべてを解決する時間があるはずだ」と深い言及を避けたように、モドリッチに関するデリケートな質問に対処するため、毎週、マイクの前で最高のレパートリーを引き出すことを余儀なくされている。

 アンチェロッティだけではない。モドリッチの去就は、クラブ全体が、サンティアゴ・ベルナベウの人気者でチームの顔が、できうる限りトップレベルのままキャリアを閉じるという複雑なシナリオに直面している。

 その断絶のプロセスは数年前から始まっていたが、キャリアの終焉が近づくにつれてノイズが増えている。セビージャ戦で決勝点を奪ったように、出番が減少する中でもモドリッチが健在ぶりを示していることが余計にそのマネジメントを複雑にしている。
【動画】絶妙トラップから右足一閃!モドリッチがセビージャ戦で決めた衝撃弾
 昨シーズンが開幕したばかりの頃、アンチェロッティはモドリッチ、クロース、カゼミーロの不動のMF3人に対し、若手に道を譲るための世代交代が進行中であり、プレータイムが減少することを受け入れなければならないと伝えた。その直後に退団したカゼミーロを除いて、モドリッチとクロースの2人は、重要な試合で重宝され続けたが、チャンピオンズリーグ準決勝第2レグでシティに0−4の完敗を喫したことが決め手となった。

 今シーズン開幕前にクラブの上層部は指揮官に、世代交代をさらに加速しなければならないと命じた。序盤、2人はベンチスタートが続いたが、その後、完全に明暗が分かれた。クロースが状況を覆すのに時間がかからなかった一方で、自身の役割がバックアッパーあることを知ったモドリッチは、フラストレーションを蓄積させていった。

 もちろん2人の間に、約4歳半の隔たりがあることはクラブの方針に影響を与えている。キャリアの幕の下ろし方に対する考え方も対照的で、モドリッチが1日でも長くトップレベルでプレーすることにこだわっているのに対して、クロースは近い将来の引退をほのめかしている。

 モドリッチが存在感の低下に憤りを感じていることは、シーズン開幕以来、日々の態度にも表れている。アンチェロッティも先発から外されることが多くなっていることに不満を抱いていることを、否定していない。ひと夏を経て、重要な試合で替えがきかない存在だったのが、今シーズン、ここまで行われた2回のクラシコいずれもベンチスタートに甘んじている。全盛期の頃から試合を欠場することを極度に嫌っていたモドリッチにとって耐えがたい状況であろうことは想像に難くない。
 
 モドリッチは母国メディアの『Sportske novosti』で心境を吐露している。

「クラブは残留を望み、僕の希望も同じだった。僕から出した唯一の条件は、これまでと同じように競争力のある選手として扱われることであり、過去の実績に基づいてチームに留まることではなかった。ステータスが変わるようなことは一言も言われなかった。だから契約書にサインしたんだ」

 ラ・リーガとCLで好成績を収め、平穏を保っているドレッシングルームにおいて、モドリッチの去就はアンチェロッティにとって、最も複雑な問題となっている。

「私も現役ラストシーズンに同じような経験をした。自分の立ち位置を受け入れるのはとても難しい。モドリッチがプレーしないときに何を考えているのかは想像できる。誰もがキャリアの終焉が近づいていると考えている中、異を唱えている。確かに39歳(実際は38歳)には見えない」

 決勝ゴールを叩き込み、ピッチ上で喜びを爆発させ、ドレッシングルームでチームメイトから祝福を受けたセビージャ戦の主役のジレンマを指揮官は代弁した。

文●ロレンソ・カロンヘ(エル・パイス紙レアル・マドリー番)
翻訳●下村正幸

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