「『あっ、やばい』と思ったシーンはなかったです。前からの守備がハマり、ハイボールを放り込まれれば(GK谷)晃生が出てくれて。特に大きな仕事をすることなく終えられたと思います」

 これは、5月3日にFC町田ゼルビアが柏レイソルに2-0と完勝した後の昌子源のコメントである。続けて、ベテランDFは成功体験の重要性を話した。

「スペースが点を取るわけではなく、人が点を取るので。そもそも走らせないように守備をすればいい。そこを徹底して無失点という成功体験があるからこそ、みんながこれをやれば勝てると確信を持てています。(J1リーグの)11節を終えた段階で数多くの成功体験がある一方で失敗例もある。そこを怠ったたら失点するとか、そういう経験もあるから、チームのみんなは(徹底して)やるんじゃないですか」

 J1初昇格で旋風を巻き起こす町田の強さの正体は何なのか。この問いに対し、昌子は「徹底力じゃないですか」と答えた。

「『徹底しよう』と言われて簡単にできるものじゃないですよ。「ここは監督だけじゃなく、コーチもめちゃくちゃ求めてくる。どこにも厳しい目があるから、サボれない。もちろん優しく接してくれる時もありますが、基本的にはそういう環境。J1に昇格してトップチャレンジと言い続けていて、今何位にいようがチャレンジャーの気持ちを持つ。これが徹底されているのは凄いです」
 
 昌子の心に響いている黒田剛監督の言葉が「良くも悪くも全員お前を見ている」だった。

「ベテランはベテランの守り方ができます。相手のキックモーションを見てこれは来ないなとか、正直、分かる。相手の持ち方次第でサボろうとか、そういう打算が働きます。でも、キャンプの時、監督に厳しく言われたんです。『良くも悪くも全員お前を見ている。特に若い、同じポジションの選手は。だから、(打算的にならず)やってくれ』と」

 昌子は言葉を継ぐ。

「もちろん試合の中で息を落ち着かせる時間をあえて作る局面はあります。それを理解して監督は自分に言ってくれている。シーズンが始まってからも実は言われたんです。『キャンプの時に言ったけど、そこをもう1回やってくれ』と。変な意味じゃなくて、やるしかないですよね。キャプテンとして監督も期待してくれているので。ハセさん(長谷部誠)、ミツオさん(小笠原満男)を見て育ったので、やりたい。彼らにはなれないけど、少しでも近づければという思いで」

 徹底力を磨くうえで、キャプテン昌子の役割は極めて重要だ。

取材・文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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