今季限りでパリ・サンジェルマン(PSG)を退団することを明かしていたGKケイラー・ナバスが23日、自身の公式Instagram(@keylornavas1)を通して、コスタリカ代表から引退することを表明した。


 ナバスは1986年12月15日生まれの現在37歳。クラブレベルでは母国でキャリアをスタートさせた後、2010年夏にヨーロッパへ上陸。アルバセテ、レバンテとスペインで活躍し、2014年夏には国内随一のビッグクラブ、レアル・マドリードへ加入を果たした。1年目は元スペイン代表GKイケル・カシージャスのバックアッパーに甘んじたが、カシージャスが退団した翌シーズンからは正守護神として活躍。チャンピオンズリーグ(CL)3連覇や2016−17シーズンのラ・リーガ優勝に貢献した。2019年夏から加入したPSGでも、当初は正GKとしてゴールマウスを守りながら、イタリア代表GKジャンルイジ・ドンナルンマの加入後は出場機会が減少し、2022−23シーズン途中にはノッティンガム・フォレストへレンタル移籍。PSGへ復帰した今季も公式戦わずか6試合の出場にとどまり、契約が満了を迎える今季限りでの退団が発表されていた。


 そんなナバスが欧州トップレベルのクラブから注目を集めるきっかけの1つとなったのが、FIFAワールドカップブラジル2014だ。同大会のコスタリカ代表は、ウルグアイ代表、イタリア代表、イングランド代表と、3カ国が優勝経験を持つ“死の組”のグループDに入った。前評判は高くなかったものの、このグループDを2勝1分で終えて首位通過を果たす。最終的には同国史上初となるベスト8入りを果たしたが、この大会の全5試合でコスタリカ代表のゴールマウスを守っていたのがナバスだった。2013−14シーズンにレバンテで見せたパフォーマンスが高く評価されたのはもちろんのこと、FIFAワールドカップでの活躍もあり、大会終了後にレアル・マドリード加入を果たしていた。


 代表レベルでのナバスは2008年10月に21歳でデビューを飾ると、その後は不動の守護神に君臨。前記のブラジル大会から数えて、FIFAワールドカップでも3大会連続で正守護神を務めている。これまでに国際Aマッチ通算では114試合でゴールマウスを守っていた。


 ナバスは23日、自身の公式Instagramに1本の動画を投稿。その中では次のような言葉を口にし、代表チームからの引退を宣言した。


「子どもの頃から、僕は素晴らしいことをたくさん夢見てきた。そのなかの1つが、代表チームの一員になることだった。実現不可能とも思えたけどね。その道のりは決して平坦ではなかったし、犠牲を強いられたこともたくさんあった。でも、僕はいつも自分の夢のために戦い、自分の目標を明確にしていた。神様、家族、そしてサッカーというスポーツは、常に僕の味方でいてくれた。忍耐強く、愛情と感謝の気持ちを持ちながら、一生懸命日々を過ごした」


「16年以上前、神は私に初めてコスタリカのゴールを守る機会を与えてくれた。その日のことを一生忘れることはない。その日から、僕は代表チームで数多くの時間を過ごすことができた。子どもの頃から夢見ていた出来事が現実になり、一瞬たりとも楽しむことを忘れたことはない」


「3度もワールドカップに出場し、コスタリカ代表の選手として100試合以上に出場できるとは想像もしていなかった。信じられないほどの幸運を手にできたし、特権だったと感じている」


「この夢を現実のものとしてくれた、すべての人々に感謝を伝えたい。ここに至るまでのプロセスで時間を共にしてくれた人々、アカデミー時代からA代表に至るまで、僕を指導してくれた数々の監督、彼らからは多くのことを学んだ。神様が時折僕らを助けてくれるように、監督として指導してくれたみなさんは僕に手を差し伸べてくれた」


「そして両親、家族、妻、子どもたちは、良い時だろうと悪い時だろうと、常に僕を刺激し、支えてくれる存在でもあった。僕の成長、そして日々進化するための手助けをしてくれてありがとう」


「代表チームでともに戦ったチームメイトは、時間をともにすることで、僕がどれだけ恵まれているのかを感じさせてくれた。彼らは僕にとって、チームメイトというより家族のような存在だ。確かに血はつながっていないかもしれないが、共に生活し、長年にわたる経験を共にすることで、家族のような絆ができた」


「僕は本物の『団結』から得た喜び、思い出、そして忘れられない瞬間を手放すつもりはない。僕らは無条件に支え合い、この誠実さ、そして忠誠心が本物だと感じられた。そして、最も重要なことは、彼らが僕を人生の一部だと認めてくれたことだ。僕が心の底から大切にしたい、そしてこれからもずっと持ち続けていきたい感情だ」


「このチームで多くの思い出を作らせてくれたのは、コスタリカ代表のチームメイトがいたからだ。心の底からの感謝を伝えたい。(2014年のW杯で)世界中の優れた選手たちを相手に、僕らは共に歴史を作った。コスタリカという名前を世界に知らしめることができた。君たち家族なしでは、このような快挙を達成することなどできなかっただろう」


「そして、ファン・サポーターのみなさんは、彼らの情熱、信念、そして貢献が、この旅のなかで一歩を踏み出す原動力となった。僕らを勇気付けるだけでなく、誇りと責任感を感じさせてくれた。支えてくれて、情熱を傾けてくれて、そして愛情をくれてありがとう。君たちの信頼と情熱、困難を乗り越えさえてくれたパワーを、そして君たちなしでは成し遂げられなかった目標を達成する原動力となってくれたことを、何よりも称えたい。この歴史の一部でいてくれて、絶え間ないサポートで僕らの日々を彩ってくれてありがとう。僕らはピッチの上で国を代表したが、ファン・サポーターのみなさんはスタンドや自宅から国を代表して共に戦ってくれた」


「挑戦、敗北、そして勝利に満ちた僕の人生の一部は、これにて終わりを迎える。感謝の気持ちに溢れたまま、次のステージへ進むことができる。僕は先を見据えている。僕らの親愛なるコスタリカ、決して広い国ではないが、偉大なる魂を持ったコスタリカの魂が消えることはない。本当に難しい決断だったけど、僕のコスタリカ代表としての人生はこれで終わりだ。『さよなら』ではなく、『またね』だ。僕らの道が再び交わることは知っている。コスタリカ代表、ありがとう、そして永遠に。プーラ・ビダ!」


 今夏、コスタリカ代表は2023−24シーズンのCONCACAFネーションズリーグで上位チームに入った関係で、南米勢がメインとなるコパ・アメリカ2024に参戦することが決まっている。今回、ナバスの発表のなかで、コパ・アメリカ2024の出場に関しては触れられていない。だが、スペインメディア『アス』など複数のメディアの情報によると、コパ・アメリカ2024に出場することなく代表チームを離れることとなりそうだ。