傾向解説

3歳限定のハンデ重賞・ラジオNIKKEI賞。出世が遅れた素質馬たちが秋に向けて賞金加算を狙う一戦ではありますが、小回りの芝1800mで行われるハンデ戦だけに一筋縄ではいかないのも本レースの特徴。本記事では血統面を中心に、ラジオNIKKEI賞のレース傾向を整理していきます。

最初に取り上げたいデータは前走距離別成績。過去10年の距離短縮馬は複勝回収率が115%と優秀で、距離短縮馬をベタ買いするだけでプラスになるのが本レースの大きな特徴です。これは3歳春の牡馬クラシック路線が芝2000m以上を中心に大レースが組まれており、レースレベルが高いことがこの成績に繋がっています。特に前走オープン組は信頼度が高く、前走で芝2000m以上のオープンクラスに使っている馬には要注目です。

過去10年の前走距離別成績,ⒸSPAIA


<過去10年の前走距離別成績>
距離延長【1-2-4-33】勝率2.5%/連対率7.5%/複勝率17.5%/単回収率20%/複回収率58%
同距離【3-2-1-42】勝率6.3%/連対率10.4%/複勝率12.5%/単回収率59%/複回収率28%
距離短縮【6-6-5-41】勝率10.3%/連対率20.7%/複勝率29.3%/単回収率68%/複回収率115%
⇒前走オープン【6-4-3-22】勝率17.1%/連対率28.6%/複勝率37.1%/単回収率114%/複回収率140%

また、ラジオNIKKEI賞は2回福島の開幕週に行われるため、内先行馬有利になりやすい点も大きな特徴。雨の影響は考慮する必要がありますが、基本的には内枠や先行馬に注目です。

過去10年の枠別成績,ⒸSPAIA

過去10年の初角位置別成績,ⒸSPAIA


<過去10年の枠別成績>
1枠【3-1-2-10】勝率18.8%/連対率25.0%/複勝率37.5%/単回収率200%/複回収率146%
2枠【2-1-2-11】勝率12.5%/連対率18.8%/複勝率31.3%/単回収率43%/複回収率71%
3枠【2-1-1-12】勝率12.5%/連対率18.8%/複勝率25.0%/単回収率96%/複回収率100%
4枠【0-1-0-17】勝率0%/連対率5.6%/複勝率5.6%/単回収率0%/複回収率18%
5枠【1-3-1-15】勝率5.0%/連対率20.0%/複勝率25.0%/単回収率49%/複回収率101%
6枠【0-2-0-18】勝率0%/連対率10.0%/複勝率10.0%/単回収率0%/複回収率31%
7枠【1-0-3-16】勝率5.0%/連対率5.0%/複勝率20.0%/単回収率42%/複回収率61%
8枠【1-1-1-17】勝率5.0%/連対率10.0%/複勝率15.0%/単回収率22%/複回収率55%

<過去10年の初角位置別成績>
5番手以内【5-8-3-41】勝率8.8%/連対率22.8%/複勝率28.1%/単回収率82%/複回収率115%
6番手以下【5-2-7-75】勝率5.6%/連対率7.9%/複勝率15.7%/単回収率33%/複回収率42%

血統面ではヨーロッパの主流血統であるNureyev≒Sadler's Wellsに注目。血統以外のポイントでの重要度が高いレースではありますが、前半1000m58〜59秒台の引き締まったラップを刻むことが多いため、日本的な瞬発力よりも欧州的な底力が輝く舞台という点も忘れてはいけません。近年では2020年2着馬パンサラッサ(7番人気)や2021年1着馬ヴァイスメテオール(4番人気)などNureyev≒Sadler's Wellsの増幅形で穴を開ける馬も多く出ています。

過去10年の血統別成績,ⒸSPAIA


<過去10年の血統別成績>
Nureyev【7-4-3-33】勝率14.9%/連対率23.4%/複勝率29.8%/単回収率119%/複回収率87%
Sadler's Wells【2-3-3-21】勝率6.9%/連対率17.2%/複勝率27.6%/単回収率38%/複回収率117%

血統解説

・シリウスコルト
芝1200mの新馬戦を勝利して、皐月賞でも2番手で運べるほどスピード能力に優れた馬。北米血脈主体の血統構成で、ワンペースなスピードで押し切る競馬がベストでしょう。馬場は向きそうですが、血統面はもっと重厚さがほしいところ。馬場と展開をどれだけ味方につけられるかが鍵となりそうです。

・アレグロブリランテ
3代母アサーションから繋がる牝系に属し、母センティナリーはアドマイヤジュピタ(2008年天皇賞・春)の全妹。セダブリランテスとエルトンバローズという2頭の勝ち馬を出すディープブリランテ産駒でもあり、父は本レースと相性の良いNureyevの血を内包しています。シリウスコルトと同じく皐月賞を先行している点も魅力で実績面、血統面ともに非常に楽しみな一頭です。

・ミナデオロ
母ゴールデンドックエーはラスヴァージネスSを制したNureyev系の米GⅠ馬で、本馬の半兄にはアルバートドック(2016年小倉大賞典、七夕賞)やリライアブルエース(2019年福島テレビオープン)などがいます。レイデオロ産駒の本馬はNureyevの5×3を持ち、優れた先行力からも兄以上に高い福島適性を見込める一頭です。

ラジオNIKKEI賞に出走予定の有力馬、血統と評価,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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