35th Anniversary Tour 2023-2024 STAND BY YOU "FINAL"
2024.05.19(sun)LINE CUBE SHIBUYA

日本中を駆け巡った10か月の旅を経て、JUN SKY WALKER(S)の35周年ツアー「STAND BY YOU」がファイナルの地・東京へ帰って来た。昨年6月の日比谷野外大音楽堂をメモリアルイヤーのスタートとすれば、ここが1年にわたる旅のゴール地点だ。NHKホールの向こうの通りにあったホコ天は昔話になり、渋谷公会堂はLINE CUBE SHIBUYAへと建て替わったが、ジュンスカはここにいる。新曲を引っ提げて、今だからこそ歌える歌を思い切り歌っている。

宮田和弥(Vo)

宮田和弥(Vo)

1曲目は「Thee Amigo(S)」。森純太、小林雅之、サポートの市川勝也が全力でぶっ放すロックインスト。とにかく音がデカイ。そしてオーディエンスのノリがいい。革ジャンにサングラスの宮田和弥が登場、「BAD MORNING」を歌い出すと、騒ぎはさらに大きくなる。1階席も2階席も、ここからは見えないがたぶん3階席も、手を叩き、叫び、歌い、飛び跳ねる。叫びは「ウェイ」じゃない、「オイ!」だ。リズムに合わせて振り上げるのは手のひらじゃない、拳だ。

ギターソロを弾きまくる純太の肩を抱くように、和弥が笑いかける。純太が市川を指さし、市川がうなずく。和弥がマイクスタンドを器用に操る足技を見せる。「ひとつ抱きしめて」の歌詞を、「ぐらついた渋谷を僕と歩こうよ」と替えて歌う和弥。「だから自由はここにある」で、華麗なウィンドミルを見せる純太。なんでもないシーンにいちいち「ロックバンドだなぁ」と思う。骨の髄までバンドに染まった男たち。

「僕たちがJUN SKY WALKER(S)です。こんなに集まってくれてありがとう。今日は新しい曲もやるけど、懐かしい曲もたくさんやろうと思います」(宮田和弥)ここからはテンポを落としてゆったりと。「みんな大好き、俺も大好き」と前置きして歌った「砂時計」の、和弥の歌声の何とも言えない切なさ。「さらば愛しき危険たちよ」は、小林のドラムの気迫が尋常じゃない。「言葉につまる」も、ミドルテンポながら尖った切なさをはらむ曲。和弥のロングトーンもばっちり決まった。そして何と言っても、ソロもバッキングも区別なく弾きっぱなし、エモーション溢れる純太のギターが凄い。ギターソロを飛ばしたら曲にならない。ジュンスカの曲は絶対にカットできない。

小林雅之(Dr)

小林雅之(Dr)

昨年リリースした新曲「GET HAPPY!」は、ギターや打ち込みのリズムが入ったトラックと、生演奏をミックスしたダンスロック。間奏で和弥がご機嫌なハーモニカを吹く。2022年発表の「トラベリンバンド」も最近の曲だが、逆にスタイルは80年代ふうで、青くさい若さがいっぱいだ。オレンジ色のルイスレザーに着替えた和弥が、疾走感みなぎるエイトビートに乗って歌いまくる。純太と市川がポジションをチェンジして盛り上げる。市川が生み出すタイトながらも太いうねりが小林の直線的なリズムに陰影をつける。今日は音響がとても良くて、耳のストレスがまったくない。

「今日ジュンスカを初めて観る人? けっこういますね」(宮田)

このツアーの、特に大都市以外の場所では、初めての観客の率がかなり高かったらしい。様々な理由で今まで来られなかった人、足が遠のいていた人も、それぞれの人生の転機を経て、同じ場所で同じバンドを聴く。その尊さは、やり続けることでしか確かめられない。

森純太(Gt)

森純太(Gt)

この日、初披露された新曲「ヒカレ」(NHK「みんなのうた」4-5月オンエア)は、歌詞は希望に満ちてストレート、演奏は打ち込み+アコースティックで、和弥、小林、純太がリードボーカルを歌い繋ぐ、かつてのジュンスカらしさと新しさが入り混じった曲だ。小林はグロッケンシュピール(鉄琴)も器用に叩く。3人のボーカルの味わい深さが胸に沁みる。座ってゆったり和めるジュンスカ、いい感じだ。

長めのMCでは、先日のNHK「うたコン」出演時のエピソードで盛り上がる4人。35周年を迎えても新しい経験があり、互いに笑い合える仲間がいる。そして一緒に歌うファンがいる。2010年代にリリースした「One-Way」も「Fanfare」も、年を重ねる現実を見つめながらも、力強く未来への道を歩むメッセージソングだ。和弥が客席にマイクを向ける。みんな歌える。よく手が上がってる。ステージ後ろ、星型に縁どられた電飾がギラギラ輝く。しっかり聴かせる中盤を経て、またスピードが上がって来た。

JUN SKY WALKER(S)

JUN SKY WALKER(S)

「2023年からトイズファクトリーと一緒にやらせてもらうことによって、いろんな動きをすることができました。すごく気持ちが上がったし、みんなの顔を見ていると「ジュンスカが帰って来た」みたいな感じがあって、とてもうれしい1年でした」(和弥)

ここからも止まらずに、40周年に向かって駆け上がっていこうと思いますーー。力強い宣言と大歓声のあとに歌う「START」に、懐メロの匂いはまったくない。「歩いていこう」を歌う和弥の声の伸び、艶、パワーも、今が最高じゃないか?と思えるほどに圧倒的だ。続く「SUICIDE DAY」「いつもここにいるよ」は、どちらもバンド初期から存在する曲で、激しい曲調の裏側に少年の苛立ちと悲しみがべったりと張り付いて、今も胸をざわつかせる。「SUICIDE DAY」の歌詞はある意味、現代のコンプライアンスからははみ出しているが、それを今歌うということは、これからも歌い続ける宣言だろう。歌い続けてほしい。

宮田和弥(Vo) / 森純太(Gt)

宮田和弥(Vo) / 森純太(Gt)

和弥がモニターに駆け上がって蹴りをかます。純太が腕をぶんぶん振り回してウィンドミルを決める。本編ラストは、和弥いわく「ジュンスカがジュンスカをオマージュした曲」の「もう一度 歩いていこう」だ。「START」「歩いていこう」などの歌詞を散りばめ、35年の思いを詰め込んだジュンスカ純度100%の明快ビートロック。かつての疾走感と現在の安定感が絶妙のバランスで共存する、それが今のJUN SKY WALKER(S)。

「何があっても、この4人の気持ちで乗り越えていけそうな気がします」(宮田)

演奏にはほぼ影響はなかったものの、今日は機材トラブルが頻発。それをアンコールの最初のMCで、「でも人生ってそういうもの」と笑い飛ばす和弥。能登半島地震のチャリティのために募金を呼び掛ける純太。「夢をかなえてくれてありがとう」と笑顔で伝える市川。「みなさんに感謝します。それだけです」と小林。

「あと2曲。終わったらとっとと帰ってください(笑)」と和弥。それぞれが言いたいことを言い終えると、あとは全力で楽しむだけ。

市川勝也(Ba) / 宮田和弥(Vo) / 森純太(Gt)

市川勝也(Ba) / 宮田和弥(Vo) / 森純太(Gt)

黄金のエイトビートで突っ走る「そばにいるから」は、「GET HAPPY!」「もう一度 歩いていこう」と同じく、35周年を迎えたJUN SKY WALKER(S)の決意表明。そして「MY GENERATION」は、35年前も今も「僕たちみんなの時代です」と宣言する永遠のアンセム。和弥がモニターに駆け上がって高々とジャンプする。勢いをつけてもう一度。ちょっと危なっかしいぐらいがかっこいい。飛べる限り、飛び続けてほしい。

終わってみれば2時間超えで19曲。80年代から2010年代までの代表曲に新曲も加えた、2024年のジュンスカを強く印象づけるセットリスト。ファイナルのあと、沖縄と東京・福生で「STAND BY YOU “EXTRA”」と題したアンコール公演も決まった。「このあともたくさんライブをやります」と和弥は約束し、バンド初の対バンツアーもこの日発表された。JUN SKY WALKER(S)は進み続ける。転がり続けろ、毎日がスタートだ。

取材・文=宮本英夫

JUN SKY WALKER(S)

JUN SKY WALKER(S)