昨年、パリーグの5位と苦しんだ西武。今年は高橋光成、平良海馬、今井達也らを中心に「投手王国」と呼ばれるほど投手陣が充実しているが、野手陣はどうなのか。

 1980年代から1990年代にかけて、黄金時代の西武をチームリーダーとしてけん引した石毛宏典氏に、今季の注目野手を聞くと共に、2024年のベストオーダーを選んでもらった。


3月24日に支配下登録された西武のブランドン photo by Sankei Visual

【内野手の問題はサード】

――今季の西武について、どう見ていますか?

石毛宏典(以下:石毛) 投手陣は、ドラ1ルーキーの武内夏暉もいい球を投げていますし、もともとよかった先発ピッチャーがさらに充実してきました。あとは打線が援護できるかどうかですが、現状でレギュラーと言えるのは源田壮亮と外崎修汰ぐらいでしょう。森友哉が抜け、山川穂高が抜け......という状況ですが、もっと新しい選手が出てこないといけません。

――野手に関して、石毛さんが開幕から起用するとしたら誰になるでしょうか。内野からお願いします。

石毛 まずキャッチャーは、ベテランの炭谷銀仁朗が戻ってきましたが、経験を積ませたいので古賀悠斗です。昨季は100試合に出て、さまざまな経験を積んだはず。侍ジャパンにも選ばれて国際大会の経験もできましたが、来年以降も見据えてレギュラーに定着するためには今季が重要です。

 ファーストは新外国人のヘスス・アギラー。巨漢ですが、案外シュアなバッティングをしますし、力にまかせて大振りしないところもいいですね。セカンドは外崎、ショートは源田で、問題はサードですね。

 個人的には、渡部健人に入団当初から期待しているんです。中村剛也と同じでバットがスムーズに出るし、スイングの軌道も似ています。ただ、長打力という面では、オープン戦で好調だったブランドンもいい。昨年オフに育成契約となって、また支配下登録された(3月24日)ので、開幕戦はサードで出る可能性もありそうですね。ただ、どちらも一軍での実績がないので、切磋琢磨しながら突き抜けるような成績を残してほしいです。

【課題の外野も含めたベストオーダーは?】

――外野はいかがでしょうか?

石毛 先ほど新しい選手が出てこないと、と言いましたが、それは特に外野手です。1シーズンよくても次のシーズンがダメだったり、数カ月は調子がよくても続かなかったり......。やはり3年、4年、5年と続けて成績を残していかないとレギュラーとは呼べません。長谷川信哉、西川愛也、岸潤一郎らは時折光るものを見せるのですが、なかなか定着しません。

――オープン戦では、金子侑司選手が結果(打率.360、出塁率.407)を出していました。

石毛 ここ数年の成績は低迷していますし、年を重ねるにつれてチャンスは少なくなっていくでしょう。そんな尻に火がついた状態で、オープン戦で結果を出しましたし、まずは使うべきかなと。

 それと、気になっているのは若林楽人です。足があるし、肩もいい。長打力も案外あるんですが、見ていて「もったいない」んです。ポテンシャルを発揮してほしいですし、彼のような選手が外野の一角を占めるようにならないとチーム力は上がっていきません。

――打順もお聞きしたいのですが、どうなりますか?

<石毛宏典が考える西武の2024年ベストオーダー>※開幕戦を想定

1番 金子侑司(センター)

2番 外崎修汰(セカンド)

3番 ブランドン(サード)

4番 アギラー(ファースト)

5番 中村剛也(DH)

6番 若林楽人(ライト)

7番 コルデロ(レフト)

8番 古賀悠斗(キャッチャー)

9番 源田壮亮(ショート)

石毛 シーズンを通して同じメンバーが出るとは考えにくいので、とりあえずは開幕戦の想定で考えてみました。やはり点を取らないと勝てないので、ある程度現在の状態がいい選手を上位に並べました。

――若林選手を6番に入れていますね。

石毛 新外国人の(フランチー・)コルデロでもいいのですが、そうなると足の遅い走者が続くので渋滞してしまいますよね。なので、足のある若林を間に入れておきたいなと。コルデロは、オープン戦では日本のピッチャーに苦労していましたが、開幕前の最後のオープン戦(3月24日のヤクルト戦)でホームランが出たので、気持ちよくスタートできるのではないでしょうか。本来であれば外国人選手に頼りすぎない打線がベストなのですが、現状はアギラーとコルデロにかかる比重が大きいでしょうね。

――5番はベテランの中村剛也選手ですね。

石毛 いつまでも彼に頼りっぱなしではいけないとは思うのですが、彼はまだまだ元気です。相手のピッチャーも5番に中村がいるのは嫌でしょう。500号本塁打まで手が届くところまできていますしね(昨季まで通算471本塁打)。ただ、休ませながら使わないといけないので、その場合にどんな打線を組むのかも課題です。

――源田選手を9番での起用としたのは?

石毛 2番も考えたのですが、今の状態(オープン戦の打率は.128)なら9番がいいのかなと。ただ、あくまで開幕時の想定なので、新外国人たちやブランドンなど未知数のバッターが不振に陥ってしまった場合、外崎をクリーンナップに入れて、源田を2番にすることも考えられます。いずれにせよ、守りでは外せない選手ですから、なんとかバッティングの状態を上げていってほしいです。

――石毛さんが現役時代の西武も、2018年〜2019年に優勝した時の西武も、ポジションと打順はほぼ固定していました。昨年に日本一になった阪神もそうです。そのあたりはどうお考えですか?

石毛 個人的にはそれが理想的だと思います。自分も実際にそれを体験して、結果として成功していますからね。役割が明確であれば仕事がしやすい。守るポジションが固定されていれば落ち着いてプレーできます。

 ただ、それがベストなのかはわかりません。リーグを3連覇しているオリックスは日替わりオーダーで、ポジションも目まぐるしく変わるじゃないですか。ただ、本当に実力のある選手が揃えば、必然的にポジションも打順も固まっていくものではないかと思っています。

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【プロフィール】

石毛宏典(いしげ・ひろみち)

1956年 9月22日生まれ、千葉県出身。駒澤大学、プリンスホテルを経て1980年ドラフト1位で西武に入団。黄金時代のチームリーダーとして活躍する。1994年にFA権を行使してダイエーに移籍。1996年限りで引退し、ダイエーの2軍監督、オリックスの監督を歴任する。2004年には独立リーグの四国アイランドリーグを創設。同リーグコミッショナーを経て、2008年より四国・九州アイランド リーグの「愛媛マンダリンパイレーツ」のシニア・チームアドバイザーを務めた。そのほか、指導者やプロ野球解説者など幅広く活躍している。

著者:浜田哲男●取材・文 text by Hamada Tetsuo