アタラシイものや体験の応援購入サービス「Makuake」を運営するマクアケによると、2023年の酒類関連のプロジェクトで最も購入総額およびサポーター数が多かったのはcamo (2024年にClandから社名変更)が企画・運営した日本酒イベント「若手の夜明け」だったという。

また、平和酒造が主体となって立ち上げた日本酒イベント「SAKE PARK」は昨年2回開催されたが、そのどちらもがトップ10入りした。また、「サポーター数」ではトップ3がすべてイベント関連のプロジェクトとなっており、コロナ禍が終わり、イベント開催の制限などが無くなったためとみられる。

また、日本酒は千代菊酒造が主体となって立ち上げたプロジェクト「【水と哲学でどう変わる?】日本酒の謎に9人の杜氏が立ち上がる|純米大吟醸9本」が購入総額4位となったほか、玉の光のグループ会社である京伝びとが実施した「【紀州徳川家御用達】350周年を迎える、京都の酒蔵が挑戦する最高級日本酒が誕生」が9位、梅錦山川の「琥珀色に輝き熟成香が薫る!「30年と20年の長期貯蔵酒と爽やかな新酒」の飲み比べ」が10位となった。

「Makuake」応援購入総額上位10プロジェクトのデータ

また、「クラフトサケ」の動きにも注目が集まっており、2位「100年の時が流れる国指定重要文化財「日詰平井邸」醸造所復活へ!酒造の自由に挑戦」は菊の司酒造で酒造りに携わっていた平井佑樹氏がスタートさせたプロジェクトで、購入金額は1,000万円を超えるなど注目を集めた。

この1年の動向と今後の見通し、また、プロジェクトを成功させるための秘訣を同社キュレーション局の鈴木楓氏(写真)と、セールス局 局長の武田康平氏に聞いた。

〈「ターゲットを細分化」し「広い間口」の用意が成功への近道〉

――2023年のプロジェクトの傾向は

鈴木=やはりコロナが5類に移行したことで、大規模なイベントプロジェクト(チケット販売など)は増加した。コロナ禍ではそもそもリアルイベントがほとんど開催されず、されても規模は小さかった。2023年に実施した酒類関連プロジェクトの中ではランキングの通り、特に「若手の夜明け」と「SAKE PARK」と、規模としても比較的大きいイベントに注目が集まった。

Makuakeを活用する際に、メーカーや団体がイベントを開催する上で課題としている「新規層・若年層の取り込み」だが、イベント(チケット販売など)については成功しているのではないかと見ている。20代の購入者も比較的多かった印象だ。その一方で「SAKE PARK」では、「アフターパーティー参加権」など、コアファンが喜びそうな企画も盛り込み、幅広い層に喜んでもらえる設計にしていた。

――プロジェクトを成功させるために重要なことを教えて下さい

鈴木=誰に届けたいかを明確にし、対象者はどういうリターンを望んでいるのかを把握してもらうことが重要。そういった意味で素材、特に写真や画像にこだわることも大切だ。「若手の夜明け」を例に出すと、ふらっと来られるように気軽に購入できるコースを設けたほか、深く話したい方に向けては比較的高額だがペアリングディナーを用意した。一言に「お酒が好き」と言ってもその実態はさまざま。

ターゲットを細分化し、幅広い層に対応するプロジェクトは成功しやすい傾向にある。意思決定が複雑な大企業でも、やはり実績がついてくるとその後の販売につながりやすいようだ。

プロジェクトページ公開から早いうちに実績を伸ばすのも大事なことで、特に日本酒は既存のファンに呼びかけて早い時期に購入者を増やしておくことも大事だ。プロジェクトのページの準備と告知は並行して行ってほしい。

――「Makuake」の強みは?

鈴木=まず270万人の会員がいるということ。これは生活者だけでなく、さまざまな業種の方にも見てもらえる機会が増加するということでもある。また、大手メーカーの方に特にアピールしたいのは、テストマーケティングツールとしても活用できること。清酒ではこれまで白鶴酒造や月桂冠が、若手のチャレンジの場として活用している。

また、このほど「プロジェクトレビュー機能」を実装した。今まではページ上で公開されている「応援コメント」だけだったが、実際に手にしたあとのコメントも拾えるようになった。大手メーカーが当社のサービスをテストマーケティングで活用することも多いが、そのフィードバックを多く仕入れやすくなった。このツールは当社ならではだ。

〈「ジャパニーズウイスキー」創業期の資金調達も〉

――清酒以外で注目している分野があれば

武田=酒類では清酒に関連したプロジェクトを多く取り扱っているが、他にはジャパニーズウイスキーも注目分野だ。

現在日本の蒸溜所は増え続けており、世界的にも注目を集めている。政府としても輸出重点品目に指定するなど、育成を急ぐ分野だ。ただ、“蒸溜所が増えすぎてどれを選べばいいのかわからない”ということもある。

そこで当社のプラットフォームを使っていただき、プロジェクトを実施し、操業から間もない時期でも身近に感じてもらうお手伝いができる。ここで重要なのは、最初に試飲してもらったときにわかりやすい印象が与えられないと今後の認知にも繋がっていかないということ。我々としても、お客様をどう味方につけるかを一緒に考えていく。

また、ウイスキーは熟成期間の関係上、少なくとも3年はキャッシュが入ってこないが、当社のサービスを活用し、リターンの設計次第では、その期間にキャッシュフローを作ることも難しくない。実際にそういった相談は入っている。

実際に成功したプロジェクトとして紹介したいのは、飛騨高山の舩坂酒造店が実施した、廃校をウイスキー蒸溜所にするプロジェクトで、金融機関が3社バックアップについたほか、地元の方の支援も多かったため、目標金額の増額につながるなどもあった。商品そのものでなく、会社に対するファンの反応が大きいのも当社のプラットフォームの特徴の1つだ。

――2024年の見通しは

鈴木=プラットフォーム全体の傾向を見ても、イベント系のプロジェクトは引き続き増加するのではないかと思う。他には酒類では酒粕など、本来であれば廃棄される予定だったものを有効活用するSDGs文脈のプロジェクトが支持を集めるのではないかと見ている。

武田=長期的な目線で酒類市場を見ていくと、日本酒メーカーがウイスキーやワインを造っていくなど、ジャンルをまたいだチャレンジも多くなっていくのではないかと考えている。そういった考えをお持ちのメーカーはぜひとも当社にご相談いただければ。

〈酒類飲料日報2024年4月30日付〉