宮城県南三陸町にあるおよそ2億5千万年前の地層から、見た目がエイリアンのような古代生物の新種の化石が発見されました。見つけたのは、南三陸町を化石で盛り上げようと活動する男性で、今回の発見が町おこしの追い風になればと期待を寄せています。

新種の化石「パリシカリス・ナオヤイ」見つけたのは…

東北大学青葉山キャンパスにある総合学術博物館。化石や鉱物などおよそ1500点の展示品が並ぶなか、4月4日から一般展示が始まったある化石。2022年、南三陸町で見つかり、3月末に「新種」と発表されました。

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線が入っている3センチほどの部分が化石で、「パリシカリス・ナオヤイ」と新たに命名されました。

この時期三陸ワカメの水揚げが行われる南三陸町歌津。収穫作業に励む漁師の高橋直哉さん(43)です。

漁師 高橋直哉さん

漁師 高橋直哉さん:
「これは外洋のワカメで、歯ごたえが全然違うので是非皆さん食べてください」

高橋さんには、漁師ではないもう一つの顔があります。それが…。

化石マニアとしての顔です。これまでに見つけた化石は1万点以上地元で知らない人はいないほど、化石の発掘に精通しています。

化石マニアの高橋さん

高橋直哉さん:
「(化石の)発掘体験会があり、自分も化石の発掘体験に参加したら、簡単にアンモナイトの化石が見つかって。これは面白いぞと思うようになり、化石の発掘に目覚めた」

高橋さんは漁師として働く傍ら、2018年から南三陸町歌津で化石発掘体験ツアーを開催するなど、化石を活用して町を盛り上げようという活動にも取り組んでいます。

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今回新種とされた化石を見つけたのは誰あろう、高橋さんなのです。

高橋さんに、化石を見つけた町内の場所を案内してもらいました

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高橋直哉さん:
「ちょうどこの辺りですね。ここにこういう地層があるのですが、この地層から出てきたのかと思われる。普段見ていた化石とちょっと違うなという何か違和感を覚えて…」

化石の種名に高橋さんの名前が!

新種の化石の種名「パリシカリス・ナオヤイ」のナオヤという部分は、高橋さんの名前からとられています。

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高橋直哉さん:
「新種かもという風に先生が言っていたのでドキドキしていたが、私の名前から取って名前を付けてもらったというのは、えーーとちょっとびっくりした。でも本当に嬉しかった」

高橋さんが発見した化石を2年かけて分析したのが、化石や地質について研究している東北大学の永広昌之名誉教授です。

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東北大学 永広昌之名誉教授:
「高橋さんが見つけたいくつかは、比較的保存が良くて、甲皮の形や上線、肋と呼ばれる模様がこれまでに見つかったものと全然違う。完全にこれまでに見つかっていない新種だということがわかる」

まるでエイリアン「のうとう類」

新種と発表された化石は、およそ2億5千万年前の前期三畳紀の地層から見つかっていて、エビやカニが属する甲殻類の仲間で「のうとう類」と呼ばれています。

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復元模型では眼や脚があることも推定され、エイリアンのようにも見えると話題に。のうとう類の化石は国内で南三陸地域でしか見つかっていない貴重なものです。

のうとう類の模型

今回新たに見つかった化石には、従来ののうとう類の化石と比べ明確な違いがありました。2015年に同じ場所で発見されたのうとう類の化石と、新種の化石とは何が違うのでしょうか。

新種の化石の特徴は

東北大学 永広昌之名誉教授:
「今回見つかった新種と考えられるものは、甲皮表面の肋が前傾しているということ、やや前に傾いている。従来の北上山地から見つかっていた別の属ですが、ほぼ垂直に肋が入っていて垂直であるけれどややS字状、しかも今回の物にくらべると肋の数・密度が大きいという明瞭な違いがある」

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このほか、今回見つかったものは肋という線の模様が額角=角の部分に入り込む違いなども見られたため、新種の裏付けにつながったということです。

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東北大学 永広昌之名誉教授:
「新しいデータを世界に向かって提供出来るのは嬉しいし、地元(南三陸町)を売り出す貴重な材料の一つになるのではないかと思う」

化石で町おこし、高橋さんの夢ふくらむ

多くの化石が見つかっている南三陸町には、震災前、魚竜館という化石の博物館がありましたが、津波の被害によってなくなりました。

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いまは、ハマーレ歌津の施設などで化石が展示されていますが、高橋さんは今後、町内に化石の展示施設をつくり多くの人が訪れる場所ができればと話します。

高橋直哉さん:
「化石を町の宝としてどんどん発信して、『この町で何か学べるぞ』という風な思いで、観光にどんどん訪れてほしい」

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新種の化石を発見した経験を糧に高橋さんは、これからも化石を通して南三陸町の魅力を伝え続けていきます。

漁師 高橋直哉さん:
「新種の化石を見つけたいという子どもたちが多く、自分の名前を付けたいと言う子どもたちが多いが、まさか自分が身をもって子どもたちに伝えられるような経験をしたので、どんどん子どもたちに伝えていきたい」

漁師 高橋直哉さん

高橋さんが見つけた新種の化石は、甲殻類の仲間とされる「のうとう類」と呼ばれていますが、海で生活する節足動物だということがわかっています。パリシカリス・ナオヤ「イ」の「イ」はラテン語で男性を示す。およそ7千万年前の白亜紀後恐竜が絶滅したころと同じ時期に絶滅したとみられていますが、生態などまだわかっていないことが多いのも事実です。南三陸町でのうとう類の化石が更に発見されれば生態の解明につながるかもしれません。