鮮やかなカラーリングがカッコいい新幹線「E5系」(写真:T2 / PIXTA)

カジュアルな鉄道ファンとして「東京駅、いいな」と思えるのは、様々なカラーリングの新幹線と出会えること。

もちろんホームの場所が全然違うので一度にまとめて見られるわけではありませんが、伝統的な青と白をまとった東海道新幹線、銅色のラインも混じった北陸新幹線、連結する緑と赤の新幹線……色とりどりの新幹線車両が巨大なマンモス駅に集まる様を想像するとわくわくしてきます。

最近ではかつての銀色を復刻したE3系を見ることも。「200系新幹線」カラーを復刻したE2系車両は2024年春のダイヤ改正で引退しましたが、銀のつばさはまだもう少し走りそう。もっとレアなケースを挙げると、東海道新幹線のホームに行けば大人気の事業用車「ドクターイエロー」に出会うこともありますね。

そんな東京駅で個人的に一番目を引かれるのは、鮮やかな色合いの「E5系」――東北新幹線の最速達種別である「はやぶさ」などで使用されている、JR東日本の車両です。いつか「グランクラス」に乗りたいな、と思いつつもそのロングノーズと鮮やかな緑色の車体を目で追うだけの日々が続いています。

配色の元は「FASTECH 360 S」

車体上部は緑色、下部は白色、その二色に挟まれる帯はピンク色――というのがE5系のイメージですが、これらの色はそれぞれ「ときわグリーン」「飛雲ホワイト」「はやてピンク」というそう。「常磐線」の「常磐」ではなくJR東日本のコーポレートカラーを意識した「常盤(色)」なのはちょっとしたひっかけですね。

実に鮮やかなカラーリングで、見るたびに斬新な気持ちになるのですが、実はこの組み合わせの新幹線車両は、厳密に言えばE5系が初めてではありません。JR東日本が2009年に発表した資料によると、E5系のデザインは「ある試験車両」の色彩をもとに、「未来を感じさせる先進的イメージとスピード感」を表現したものなのだそう。

その試験車両とは? 鉄道ファンの中にはご存知の方も多いでしょう。2005年に落成したE954形「FASTECH 360 S」――技術上の目標を360km/h運転と定めデータ収集のために使用された、E5系のプロトタイプです。翌年には新在直通用のE955形「FASTECH 360 Z」も出てきます。

試験車両ということで青森方面と東京方面で先頭車の形状が異なる、空気抵抗を増加させる「ネコミミ」を付けていたなど、面白いネタがたくさん出て来る車両でもあります。すでに解体されてしまったため、今ではもう直接お目にかかることはできませんが、先人が残してくれた当時の写真や動画などで今もその姿を拝むことができます。

北海道の車両とは帯色が違う

そんなE5系のカラーリングに関する小ネタを1つ。E5系だと思って近づいて見ると、帯の色が何かおかしい、と違和感を覚えることがあります。

よーく見ると帯の色が違う……?(写真:tarousite / PIXTA)

そう、JR北海道が所有する「H5系」です。こちらは2016年の北海道新幹線開業にあわせて投入された車両で、平たく言えばE5系のJR北海道版なのですが、外観や内装(座席や床面のデザイン)でほんのわずかな違いがあります。

H5系では帯色に北海道のライラックやルピナス、ラベンダーを思わせる「彩香(さいか)パープル」を採用しており、慣れた方はここを見るだけでE5系・H5系の区別が付きます。

車体のロゴも北海道と「シロハヤブサ」をイメージした形になっているので、初めて気付いたときはちょっとした「アハ体験」のように感じるかも。H5系はE5系に比べて本数が少ないため、出張族でもなければあまり遭遇する機会はないかもしれませんが、もし東北新幹線や北海道新幹線に乗車する機会があればぜひそんな細かな違いにも注目してみてくださいね。