フランスで起こった一大ハプニングは、遠くインドネシアでも小さくない話題となっている。

 現地6月4日、四大大会「全仏オープン」の女子ダブルス3回戦で、加藤未唯/アルディラ・スチアディ(日本/インドネシア)組はマリー・ボウズコワ/サラ・ソリベストルモ(チェコ/スペイン)組と対戦。加藤組は第1セットを落とし、第2セットを3−1とリードして迎えた第5ゲームだった。加藤が相手コートへ打ち込んだ球が、対戦ペアにボールを渡そうとしていたボールガールの頭部を直撃。少女は痛みとショックで涙が止まらなくなった。

 主審は加藤に警告を言い渡し、加藤はすぐさまボールガールの元に向かって謝罪したが、裁定が甘いとばかりに、黙っていなかったのが対戦相手のペアだ。ソリベストルモは「失格でしょ。わざとじゃない? 彼女は泣いているじゃない!」とまくし立て、ボウズコワは「血が出ているわよ。よく見てあげて」と促す。やがて大会のスーパーバイザーとレフェリーが登場して協議を重ね、加藤に失格処分が下ったのだ。しかも賞金とポイントをも剥奪するという、手厳しいペナルティも科された。

 すぐさま加藤の元には選手仲間たちから励ましやエールが続々と寄せられ、プロテニス選手協会も「失格処分は不当」「賞金とポイントは返還されるべきだ」との声明を発表して、彼女をバックアップした。一方で、ボウズコワとソリベストルモは容赦ないバッシングを浴びる。両者のSNSには合わせて1万件を超える非難の声が書き込まれ、加藤の相棒であるスチアディもインスタグラムで「彼女たちは間違いなく学校に行って、イチからスポーツマンシップを学ぶべきよ」と断じた。

 さらに、スチアディの母国インドネシアのテニス協会も怒りを滲ませる。同協会の国際部門でチーフを務めるゴファー・イスマイル氏は、地元メディア『Okezone』の取材に応じ、「彼女たちの失格処分と(加藤に対する)賞金・ポイントの没収は厳しい。罰則が過剰すぎる」と主張。「カトウはボールガールがボールを捕れるように打ったはずだが、少女は準備ができていなかった。人に危害や怪我を与えるための意図的なボールヒットではなく、純粋にどこでも起こりうる事故だった」と結論づけている。

 そして、ボウズコワ/ソリベストルモ組の振る舞いには次のように糾弾した。

「当初、審判はカトウに注意を促しただけだったが、私の意見を言わせてもらうなら、相手のペアは自分たちの利益のためにあの場を利用したのだと思う。警告で終わっていたところが、彼女たちふたりが関係者を呼ぶように強く嘆願したため、事態は長丁場となり、最終的に失格のジャッジが下されたのだ」
  イスマイル氏は最後に「カトウとスチアディへの過酷なペナルティが心の底から残念でならない」とコメント。国民的な人気を誇るスチアディの失格処分を受けて、やはりインドネシアのファンや関係者もショックを隠せなかったようだ。

 女子ダブルスで無念の敗退を余儀なくされた加藤だが、その後、ティム・プッツ(ドイツ)と組んだ混合ダブルスで快進撃。準決勝でスチアディのペアと戦って7−6、6−0のストレート勝ちを収めると、決勝でもビアンカ・アンドレスク/マイケル・ビーナス(カナダ/ニュージーランド)組を相手にマッチタイブレークの末に勝利を飾った。日本人選手による全仏オープンの混合ダブルス優勝は、史上3人目の快挙だ。

 表彰式のスピーチで感涙にむせびながら、加藤はボウズコワとソリベストルモのふたりについても言及。「サラとマリーには、またどこかで良い試合がしたいと私は願っています」と語り、「失格は残念でしたが、今後、良い結果が出てポイントが戻されることを願っています」と想いを明かした。

構成●THE DIGEST編集部

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