中学1年生が強烈な爪痕を残した。

 12月24日、フィギュアスケート全日本選手権の女子フリーが長野市・ビッグハットで開催され、坂本花織がパーフェクト演技で合計233.12点。他を圧倒する内容で、大会3連覇を飾った。

 昨年の全日本女王が氷上で貫録の舞いを披露した一方で、大会最年少の13歳・上薗恋奈が大躍進を果たした。ショート6位につけ、坂本をはじめ北京五輪代表の河辺愛菜や昨年のグランプリファイナル女王の三原舞依ら多士済々な実力者が揃うなか、堂々最終グループ入りした。

 前日に全日本通算6度目の優勝を飾った宇野昌磨のコーチを務めた名伯楽・樋口美穂子の指導を仰ぐ13歳は、最終グループのトップバッターとして登場。同氏に「13歳で出れる全日本はこれで最後だよ」という言葉で送り出され、グータッチをかわした上薗は初出場の大舞台をまるで楽しむかのようにリンクで躍動した。

 最初のルッツ+トウループの連続3回転を決めて好スタートを切ると、3回転ループ、3回転フリップ+2回転トウループを次々に着氷。ジャンプだけでなく、中学生離れした大人びた表現力で会場を虜にすると、スピンはすべて最高評価のレベル4を獲得。高いスケーティング技術もジャッジを唸らせた。

 ミスの少ない演技でまとめ、フィニッシュが決まるとフィギュア界に誕生した新たなホープに会場は割れんばかりのスタンディングオベーション。13歳がシニア顔負けの素晴らしい演技を見せた。
  得点は驚異の200点超。この時点でジュニア世代のトップを走る島田麻央に次ぎ堂々の2位と、あわや表彰台も見えた。結果的に表彰台は逃したが、フリーは4位。合計で3位の島田とはわずか1.49点差の接戦で初出場の大舞台を4位で終えた。

 ミックスゾーンでは「自己ベストを出せたのは凄く良かったし、嬉しいです」とほっとした表情を見せた。自己ベストを更新(200.69)できたことについては「初の200点ですごくびっくりなんですけど。今できることを全部出せた」と満足し、あどけない笑顔で答えた。

 憧れのスケーターは「浅田真央さん」だと明かした13歳は「今も勉強させてもらっている部分がたくさんあるので、すごく嬉しかった」と話し、全日本で過去6度の優勝を飾り、2度のオリンピックに出場したレジェンドスケーターと同じ舞台に立てたことを喜んだ。

 クリスマスイブ決戦となった激闘を終え、「上手な選手を見習って頑張りたい。メンタルも強くしないといけない」としっかり前を見据えた13歳は去り際、「甘いものが食べたいな」と少女らしい本音も漏らした。

 歴戦のシニア勢ですら大きな重圧がかかる国内最高峰の舞台でショート、フリーともに、その溢れる才能とポテンシャルを解き放った上薗。憧れのスケーターと同じ道を歩み始めた彼女の成長に期待は膨らむばかりだ。

取材・文●湯川泰佑輝(THE DIGEST編集部)

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