今季序盤、鈴木誠也とともにカブス打線を牽引していた男がいる。正一塁手を務める26歳のルーキー、マイケル・ブッシュだ。現地4月10日から15日にかけては、何と球団タイ記録の5試合連続ホームランを放つなど、6本塁打&OPS1.073はチームトップ(OPSは規定打席以上)を走る。

 5試合連発の内容もすごかった。10日のパドレス戦では、2022年サイ・ヤング賞投票で2位の好投手ディラン・シースからライトスタンドへの豪快なアーチ。12〜13日のマリナーズ戦ではいずれも試合終盤に一発を放つと、14日にはマリナーズのエース、ルイス・カスティーヨの低めのチェンジアップをすくい上げ、約437フィート(133.2メートル)の特大ホームラン。そして、15日のダイヤモンドバックス戦でもバックスクリーン横のプールエリアへ放り込んでみせた。

 ルーキーの思わぬ猛打に全米から驚愕の声が上がっているが、ブッシュのポテンシャルを思えばそれほど意外ではないかもしれない。ノースカロライナ大での3年間で通算32本塁打&143四球を積み上げ、2019年のドラフト全体31位でドジャースに指名された際には「大学球界最高のオールラウンドヒッター」との声もあった。
  特にプロ入り後は、ドジャースの先輩でもあるマックス・マンシーと比較され続けていた。体格もほとんど同じ(マンシーは183cm/97kg、ブッシュは185cm/95kg)で、ともに右投左打。打率はそれほど高くないがパワーは折り紙つき、それでいて選球眼に優れている点も共通する。また、2人とも一塁、二塁、三塁に外野も守れる汎用性を持つが、その割にどこを守ってもそれほど上手くない点も似ている。

 23年には98試合で27本塁打をかっ飛ばしてチームのマイナー最優秀選手に選ばれたブッシュ。だが、ドジャースの一塁にはすでにフレディ・フリーマン、三塁にはマンシーがいることに加えて、大谷翔平の加入でDHも埋まり、さらにムーキー・ベッツが二塁転向(その後、遊撃に再コンバート)となるに至って、出場機会がほとんど望めない状態となってしまった。このため、今年1月にドジャースは2対2のトレードでブッシュをカブスへ放出。結果的にこれが転機となった。

 開幕からコディ・ベリンジャーやダンスビー・スワンソン、イアン・ハップら主力打者がいまひとつ調子が上がらない中、救世主的存在となったブッシュに対し、カウンセル監督も「ここ数日、まさにチームのオフェンスを牽引する活躍をしてくれた」と称賛を惜しまない。16日になって、ともに打線を牽引していた鈴木がIL入り。ブッシュにかかる期待は今後ますます大きくなっていくに違いない。

構成●SLUGGER編集部

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