5月26日に開幕するテニス四大大会「全仏オープン」(5月26日〜6月9日/フランス・パリ/クレーコート)の本戦に先駆け、20日にスタートした全仏予選。大会3日目の22日は予選2回戦全試合が行なわれた。日本勢では、女子は内島萌夏(世界ランキング80位)、齋藤咲良(同251位)、そして男子の望月慎太郎(同163位)がいずれもストレート勝利。

 内山靖崇(同214位)はロマン アンドレス・ブルチャガ(アルゼンチン/同145位)に2-6、4-6で敗退。本玉真唯(同114位)はクリスティア・ディヌ(ルーマニア/同229位)との対戦で、大会前から痛めていた左足のケガのため、第1セット2-5の場面で棄権を決断した。

 自信と精神的余裕――それが、2回戦で快勝した3選手に共通する、手にした勝利への鍵だろう。

 2年連続2度目の全仏予選参戦の望月にとり、初戦で得た逆転勝利は、3週間ぶりに手にした勝利。それまで「テニスの状態は悪くないが、何かが噛み合わない」と感じていた戦略家が、苦しみながらも解を見いだした成果だった。

「プレーは悪くなかったと言っても、実際に勝てないと試合数もこなせないし、自信の面でも難しかった。1回戦も、ファーストセットを落とした時は『やっぱり今回もダメかな』と正直思ったところもあったんですが、『全力でやって負けたらしょうがない』と思って、最後まで出し切りました」
  そうして苦しみ得た勝利が、次のパズルを解くカギとなる。

 2回戦で対戦したステファノ・ナポリターノ(イタリア/同125位)は、29歳のベテランながら今がキャリアの最高位。ただプレーはやや単調で、「何かをしてくる怖さはなかった」と望月は言う。立ち上がりでブレークすると、リードを守り第1セットを奪取。

 第2セットは中盤のブレーク合戦を抜け出すと、一気にリードを広げた。マッチポイントでは突如の雨に襲われるも、「焦らず、でも中断前に決めてやろう」と勝負を掛ける。狙い澄ましたバックハンドのリターンウイナーで、6-3、6-2の快勝を締めくくった。

「内容的には、ブレークされそうになった場面もたくさんあったし、ちょっとイライラした時もあった。それを耐えてあのスコアで勝てたところは、最近の試合で一番良かったと思います」

 持ち味と勝ちパターンを取り戻し、3度目のグランドスラム(四大大会)本戦を期して予選決勝へと向かう。
  ITF3大会連続優勝でパリに乗り込んできた内島は、揺るがぬ自信を全身にまとい、試合そのものを支配した。度重なる降雨で試合開始が遅れ、試合終盤でも中断に見舞われる。それでも試合開始前も、そして中断中ですら、内島の表情は柔らかい。

 その精神面のゆとりは、確実にプレーにも反映される。ペトラ・マルチンコ(クロアチア/同225位)との対戦は、第1セットを逆転で奪うと、第2セットは序盤のブレークを機に4ゲーム連取で6-4、6-2で勝利。貫録すら漂わせ、連勝を17に伸ばした。

 内島らの活躍に、「日本人選手の良い流れがあるので、自分も乗りたい!」と奮起したのが、17歳の齋藤だ。開幕2日前に滑り込みで出場が決まり、初めて挑戦するグランドスラム予選。初戦から中1日挟み迎えた2回戦では、「1回戦とは全然違う感覚でコートに入れた」と目を輝かす。
  初戦は、相手への声援が多かったこともあり、「自分のプレーに集中しよう」と、周囲を遮断した。だが「ローランギャロスを楽しめた」という2回戦では、客席の状況を把握する余裕すらあった。

 試合内容的にも、戦前のイメージ通り。一発必中の強打があるもミスの多いアリシア・パークス(アメリカ/同135位)の特性を理解した上で、「ミス待ちだと相手に流れがいきかねない。自分からも攻め、結果的にミスしてくれればいいな…くらいな気持ち」で戦ったという。相手の心理のみならず、コート全体の空気感までも掌握した、6-2、6-2の完勝だった。

 試合後にはサインの求めに笑顔で応じ、Vサインをかざし写真に納まる。その姿からも、全ての瞬間を楽しむ高揚感が爆ぜるよう。成熟のテニスに天真爛漫さをブレンドし、日本勢最年少が、チームに熱と勢いをもたらす。

現地取材・文●内田暁

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