コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、カドコミにて連載中の作品、やませちかさんの「宝石商のメイド」。

この作品は「宝石商のメイド鑑定対決する」として、2024年3月15日にX(旧Twitter)に投稿されると、瞬く間に1.9万以上のいいねを集めて話題になった。このポストには「こんな素敵な漫画があったなんて」「この作品に出会えて感謝」「すごく面白かった」といったコメントが殺到。この記事では作者のやませちかさんに、作品のこだわりなどについてインタビューを行った。

■会長からの挑戦状

エリヤは優秀な宝石商として名を轟かせていた。そんなある日、エリヤの能力を試すべく、会長直々に問題を3問を出すという、鑑定対決をすることに。会長直々の挑戦状に会場には緊張が走る。

第1問は、2つの宝石のうちガラスを見破れというもの。大勢が見守るなかで、気泡の形から見事に宝石名までぴたりと言い当てた。

続く第2問。
30個あるルビーの中からビジョン・ブラッドを全て選別するというもの。微妙な赤色の差を見分けなければならず、普通なら宝石研究所に送って鑑別することもあるほどの難問である。観客も、一流の鑑定士でも正解できる人は中々いないと固唾を飲んで見守るが、難なく正解するエリヤ。あの若さで正解できるなんてと称賛する声があがる。

そしていよいよ最終問題。
問題は、”どちらが本当のダイヤモンドか”というもの。「ダイヤモンドの目視だけでの正確な鑑定は不可能」と言われるなか、エリヤは果たして正解することができるのか。物語はまさかの展開へと転じていき…。

エリヤの見事な振る舞いと、完璧なオチに「こんな神作品に出会えるなんて」と絶賛の声続々。

■作者・やませちかさん「素人だった私が漫画家になれた。本当に奇跡的なこと」

ーー『宝石商のメイド』を創作したきっかけや理由があればお教えください。

もともとメイドが好きでよく描いていたのですが、ある日ふと「メイドが宝石を売ったら面白いかもしれない」と思い付いたことからこの漫画は生まれました。下働きで主人に仕える身であるメイドは着飾るのはご法度というイメージがあるので、逆にエプロンに目立つように宝石を付けたらインパクトがあるなと。コンセプトが決まるとお話やキャラクターは湧き上がるように決まっていきました。

ーー今作を描くうえで「こだわった点」や、「ここに注目してほしい!」というポイントがあればお教えください。

宝石漫画だと解説を多く入れたくなりますが、やり過ぎると図鑑のようになってしまうので簡潔で最低限に、メインとなる物語自体に魅力が出るように意識しながら描いています。物語全体に漂う空気感と、ただ展開が進むのではなくあえて空白を入れるような「間」を大事にしています。また宝石を売る漫画なので派手なシーンはなく、ただ登場人物が話している展開が大半を占めるのでキャラクターをきちんと立ててただ会話しているだけでも面白いと感じるような、心地よい作品になるよう心掛けています。

ーー今回の作品のなかで、特に気に入っているシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

3巻に収録されている「宝石商のメイドと名匠の右腕」というお話で革命で国を追われ職を失い、失意の底にある宝石研磨職人をエリヤが励ますシーンがあるのですが「人が人である限り美しいものを求める心は永遠に消えない」というエリヤの台詞が特に気に入っています。宝石は生活必需品ではないので人に余裕があるときにこそ需要が生まれます。それでもどんな世の中になっても宝石を美しいと思う人の心が失われることはないという意図で描いたお話ですが、「人にとって宝石とは何か」という問いかけはこの作品の根源的なテーマになっています。

ーーやませちかさんが漫画を描く際に大切にしていることがあればお教えください

自分が面白く感じなければ人にとっても面白くない、と意識しながら描いています。どんな意図で描くのかテーマは分かりやすいか、心から情熱を持って取り組めているか。キャラクターのセリフや行動一つをとっても矛盾がないか…。もやもやと生まれた自分の中の妄想を形にするので第三者が読んでもきちんと伝わるよう気を付けています。

ーーやませちかさんご自身や作品について、今後の展望・目標をお教えください。

当初は「毎回違うお客様が訪れて出迎えるミステリアスなメイド」というコンセプトで始まった作品ですが4月に発売する5巻では主人公のエリヤの過去が詳細に語られます。生い立ちまで明かされるとエリヤはミステリアスな存在ではなく人間味あふれる一人の女性として描かれていく面が強くなります。お話自体もお客様からエリヤと店主のアルフレッドが中心に動いていく感じになります。そうなると当初の『面白み』みたいなものが薄れていくと感じる読者の方もいらっしゃるかもしれません。視点が切り替わっても面白い作品になるようこれからも物語を盛り上げていきたいです。そしていつの日か綺麗に物語を完結させることが最大の目標です。

ーー最後に、作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。

この作品は個人連載で始まりました。誰にも読まれなくても自分のために描こうと決意して生まれた作品が今では単行本を出して頂き、素人だった私が漫画家になれた。本当に奇跡的なことです。読者の皆様の応援がなかったら自分が読んで満足するだけのお話で終わっていたでしょう。ファンの方々には感謝してもし切れないです。読んで下さってありがとうございます。これからも楽しみにして頂ければ嬉しいです。頑張ります!