世界の歌姫としての活躍は言わずもがな、俳優としても並々ならぬ存在感を発揮しているレディー・ガガ。初主演作となった「アメリカン・ホラー・ストーリー」シーズン5でゴールデン・グローブ賞を獲得、そして「アリー/ スター誕生」ではアカデミー賞歌曲賞を受賞。歌手・俳優の両面で歴史に名を刻む世界屈指のエンターテイナーといえる。3月28日に38歳になる彼女のキャリアを、俳優としての活動を中心にプレイバック。

■世界の歌姫ガガ誕生

3月28日、ニューヨーク生まれのガガ。幼い頃からピアノを弾いたり歌うことができた彼女は、14歳の頃にはナイトクラブやバーでマイクの前に立ちパフォーマンスするように。17歳でニューヨーク大学ティッシュ芸術学部へ早期入学した彼女は学業に励むが、中退して本格的に音楽の道を目指すことを決断する。

挫折にもめげずドラァグやネオ・バーレスクショーなどを盛り込んだガガならではのエンターテインメントのスタイルを作り上げる実験的な挑戦を続けてきたガガ。シンガーソングライターとして楽曲提供などをした後、その圧倒的な歌唱力がレーベル幹部の目に留まりデビュー盤「The Fame」を発表。翌年の「Just Dance」でセンセーショナルにブレイクを果たすと、音楽はもちろんミュージックビデオでの独創的な世界観が世界中に衝撃を与え、次々とファンを獲得。5600万人を超えるInstagramのフォロワー数を獲得している。

そんなポップスターとしての活躍の一方で、近年目覚ましい功績を残しているのが俳優としての活動。誰にもまねすることのできないカリスマ性溢れる彼女の魅力で歴史に残る偉業を成し遂げている。

■謎めく妖艶な美女“伯爵夫人”で視聴者を釘付けに

「歌手になる前ずっと俳優になりたかった」というガガが俳優として映画初出演を果たしたのは2013年に公開されたロバート・ロドリゲス監督の痛快B級アクション「マチェーテ・キルズ」にて。翌年、再びロドリゲス監督に起用され「シン・シティ 復讐の女神」にカメオ出演。そして2015年に「アメリカン・ホラー・ストーリー:ホテル」(ディズニープラスで配信中)で主役に抜擢されたガガは俳優としての才能を華々しく開花させる。

「Glee」や「アメリカン・クライム・ストーリー」、最近では「9-1-1:LONE STAR」も手掛ける敏腕クリエイターのライアン・マーフィーによるアンソロジーシリーズ「アメリカン・ホラー・ストーリー」。シーズン毎にテーマとキャストを変えて様々な怖い話を描く本作は全12シーズン製作されるほど大ヒット。

その中でガガが初主演を務めたのは不気味なホテルを舞台にしたシーズン5で、ペントハウスに長く住んでいるが実は生き血を吸って100年以上生きているという謎めいた妖艶な美女“伯爵夫人”という役どころを演じた。

キャシー・ベイツ、アンジェラ・バセット、マット・ボマーなど超豪華俳優と共演することになったガガは入念に下準備をしたそう。「私にあったのは準備する時間と神へ祈ることだけだった。台無しにする可能性から自分を救うためにね」と話す彼女は、抗えぬ危険な魅力を放つミステリアスなキャラクターを見事に演じきり、批評家からも高く評価されゴールデングローブ賞最優秀女優賞に輝く。


■「アリー/ スター誕生」でアカデミー賞歌曲賞受賞&主演女優賞ノミネート

そして俳優ガガの名を絶対的なものにしたのが2018年公開の映画「アリー/ スター誕生」。ブラッドリー・クーパーにとっての監督デビュー作であり、ガガの映画初主演作である本作は1937年の「スタア誕生」を原作にした音楽映画。

歌手を夢見るアリーを演じたガガだが、役に愛着が湧きすぎてしまったそう。役から抜け切るために撮影が終わった夜に髪の毛をブロンドに染めたのだとか。それほどまでに役と一体化して観客を感動させた彼女はアカデミー歌曲賞を受賞し、主演女優賞にもノミネート。女優として快挙を成し遂げる。
■主役級女優としてハリウッドに君臨

スターならではのオーラで世界中の視線を引き付けてやまないガガ。2021年公開の映画「ハウス・オブ・グッチ」でも実在したグッチ家の嫁パトリツィア・レッジャーニを演じ主役を務め、賞レースを席巻する。「監督とあれほどまでに素晴らしい経験をしたことはこれまでにない。彼はアーティストを愛している」とリドリー・スコット監督との仕事を大いに楽しんだそう。

自身もイタリアの血筋を引いている彼女だが、役作りは余念なく徹底的に行いたかったようで、イタリア訛りの英語を習得するために6カ月半ほど特訓したほか、撮影前に講師をつけて演技の練習を半年以上したり、脚本を100回以上読み直したりしたという。

パトリツィアの独特なアクセントを自然と話せるようになるまでは何カ月もかかったというガガ。それでも彼女を“演じる”のではなく彼女に“なる”ためには譲れないポイントだったそう。何度も繰り返して心から放てるようになる過程は「歌みたいなもの」と話しており、歌手として磨き上げた表現力が俳優としての演技力にも活かされているようだ。

「私は学ぶ者として死ぬと思う」と話す通り、常に学び続けているガガ。ホアキン・フェニックスと共演した「ジョーカー」続編「Joker: Folie a deux(原題)」の公開も控えている。震災の復興支援を積極的に行ったり、日本のファンへの愛を度々発信するなど親日家としても知られるガガの久しぶりの来日にも期待が高まる。歌手としてだけではなく、俳優としても進化し続けるガガから目が離せない。

◆文=KanaKo