民放公式テレビ配信サービス・TVer初の完全オリジナル番組「最強の時間割〜若者に本気で伝えたい授業〜」シーズン2のLesson19が3月29日に放送された。数々の輝かしい功績を持つ元女子短距離選手の福島千里が講師として登場。かつては全国大会で1番になることができなかった彼女が日本女子最速スプリンターと呼ばれるまでになったメンタルの保ち方や、早く走るための姿勢作りを紹介した。

■「最強の時間割」とは

「最強の時間割 〜若者に本気で伝えたい授業〜」は、さまざまな業界のトップランナーを講師として招き、学生や社会人に「知っておいてよかった」と思える“考え方のヒント”を届ける民放公式テレビ配信サービス「TVer(ティーバー)」の完全オリジナル番組。

2022年12月から約半年にわたり、放送された同番組が好評を受けて帰ってきた。シーズン2は11月3日よりスタートし、シーズン1に引き続きラランド・ニシダが副担任役、ラランド・サーヤが生徒役。そして新しく生徒役として元乃木坂46の秋元真夏が参加する。

■万年2位の選手が日本一になった理由とは

今回の講師は、陸上女子100m・200mの日本記録を樹立し、日本女子最速スプリンターの称号を持つ元女子短距離選手の福島千里。 2010年には11秒21を記録し、以降その記録は14年間破られていない。

ほかにも日本選手権女子100m7連覇、オリンピック3大会連続出場など、輝かしい経歴を持つ福島。しかし、意外にも小さい頃は県大会の決勝に行けても一番になった経験はないという。中学3年生の頃に初めて全国大会に出場するも、万年2位が続いた。そこから福島はいかにして日本一となったのか。番組はオリンピアンの最強メンタルに迫った。

福島はまず、現役時代に大事にしていたこととして、「勝つことにこだわりすぎず、目標設定をすること」を挙げる。例えば、2008年に開催された織田幹雄記念国際陸上競技大会では、ライバルである高橋萌木子が後半で追い込んでくるタイプの選手だったため、スタートダッシュで差をつけるべく練習に励んだという。

前年の冬にはリレーのナショナルチームの合宿にも参加。北京オリンピック出場を懸けた合宿ゆえに相当厳しかったようで、福島は「色々言えないこともある」と前置きした上で、「世界を目指すチームの一員になれたことはすごく大きな刺激になり、練習の質も上がった」と語る。結果、織田幹雄記念国際陸上競技大会で福島は高橋に見事勝利し、優勝を勝ち取った。

そんな福島は見た目には現れないが、意外にも緊張はするタイプとのこと。だが、大事なのは緊張を悪いことと捉えるのではなく、緊張して当たり前と受け入れることだという。また、当時のストレス発散方法について聞かれると、「ストレスの原因は走れないことなので、練習するしかなかった」と福島は語る。他のことをやっても練習の事が頭から離れず、苦しくても向き合うことしかできなかったそうだ。

そうして着実に練習を重ね、勝ち星を増やしていった福島。勝ちを重ねるたびに負けることへの恐怖は増していく。そのため、現役時代はいつも「今日は負けるかも」という気持ちでスタートラインに立っていたそう。その上で、勝つ度に練習を増やし、技術面も磨いていった。

プライベートでの嫌なことが走りに影響することはないのか、という質問には「させません」とはっきり回答。良いことも含め、全ては経験。その経験をしたことでまた一つ成長できたと思って、目の前のやるべきことに集中するのが大事だとした。


■早く走るための姿勢づくりを伝授


番組内で生徒の秋元は昔から運動が苦手で、50m走の記録が13秒60であることを告白。そんな秋元から早く走るコツを聞かれ、福島は走りの基本は歩きであるとし、歩く時の姿勢づくりを伝授した。

まずはハンガーに吊られているイメージで立ち、肩甲骨を寄せて下げる。すると自然と胸が張った状態になるので、あとは顎を引き、胸から足が出ているイメージで歩く。この時、足と重心を一緒に前に出すのがポイントだ。実際に試してみた秋元は、普通に歩いている時よりも足が軽く前に出せるのを実感したという。歩きやすくなるのはもちろんのこと、ビジュアル面も美しくなる。


また、秋元は福島の綺麗に割れた腹筋が印象的とのこと。だが、意外にも腹筋を鍛えたことはないという福島。ただ体幹部分のトレーニングは50種類上行っており、その結果、腹筋が鍛えられていると明かした。

最後に、番組恒例の「カッコいい大人とは?」という質問に、福島は「挑戦し続ける人」と回答する。2022年に現役生活に終止符を打ち、現在は順天堂大学のスポーツ健康科学部で特任助教として活躍しているしている福島。指導者としても現状に満足せず、「新しい技術を学びながら選手たちに還元していけたら」と語った。

■文/苫とり子