市原隼人主演の「おいしい給食」シリーズ、劇場版第3弾となる「おいしい給食 Road to イカメシ」が5月24日(金)より公開。2019年より放送され、ドラマ、劇場版とシリーズを重ねた「おいしい給食」シリーズは、1980年代の中学校を舞台に、「給食」というほぼ全国民が体験した「食」をテーマに描く“笑って泣ける学園食育エンターテインメント”。このたび、WEBザテレビジョンでは、本シリーズの主人公・甘利田幸男を熱くコミカルに演じる市原、2023年10月期に放送されたシリーズ5作品目「おいしい給食 season3」より登場した帰国子女の英語教師・比留川愛を演じる大原優乃、そして甘利田の新たな食のライバルとなった男子生徒・粒来ケン役の田澤泰粋にインタビュー。本作への思い、撮影現場での裏話や互いの印象、思い出のご飯などを語ってもらった。

■今作のもう1つのテーマは…“全員が主役”

――まもなく公開を迎えますが、今のお気持ちを教えてください。

市原隼人(以下、市原):こんなに(スタッフキャストで初めて見る)試写が楽しいと思ったのは役者人生で初めてかも知れません。試写を見ながら「この時間が終わって欲しくないな」と思ってしまったんです。愛情や、お客様に対する想い、いろんな感情がこの作品にはたくさん詰まっていると、ひしひしと感じました。

コンセプトは変わらず、お子様が見ても目を背けさせるシーンがないように、人生のキャリアを積まれたご年配の方にもしっかり楽しんでいただけるものに…甘利田が給食に振り回され、滑稽な姿を見せながらも、恥ずかしい姿を見せながらも、好きなものを好きと胸を張って、精いっぱい人生を謳歌しようと生きてる、そんな彼を見ていただいて、多くの方が人生を楽しむきっかけにしていただけたらうれしいです。

今回、大きなテーマがもう1つあって“全員が主役”です。それはお客様も含めてです。お客様が主役である、皆様の人生の楽しみのひとつに「おいしい給食」という作品を入れていただける事を心から願っています。

大原優乃(以下、大原):コメディーではあるんですが、給食を通してさまざまなドラマが生まれる中で、給食のことを言っているようで、社会や教育に対しても言っている…刺さる言葉やセリフがたくさんあって、改めてこのシリーズが世代問わずたくさんの方に愛されているのが分かる映画だなと思いました。

田澤泰粋(以下、田澤):スタッフの皆さんと過ごした撮影の日々が映画として形になっているのを見て、感動しています。撮影は大変だったんですけど、すごい楽しかったなって思える日々で、スタッフの皆さんと綾部(真弥)監督、俳優陣の皆さんが作り上げてきたたまものだなと改めて思いましたし、それを皆さんにも観ていただきたいなと思います。

■大原優乃「市原さんの存在があるからこその景色」

――大原さんと田澤さんは本日の完成披露上映会で、市原さんは全国行脚でもファンの方々と交流されましたがいかがでしたか?

市原:やっぱり我々エンターテインメントの中で生きている人間として、お客様のために現場で奮闘し続けるということが一番やらなければいけないことなんだと改めて感じさせていただきました。「Season1」が終わった時に、続きをやる勇気が本当は僕にはなかったんです。ですが、たくさんのお客様から「『おいしい給食』見てます」「甘利田先生大好きです」と笑顔で言っていただき、この笑顔を絶やしたくない、この笑顔をいつまでも守りたいという思いが湧いてきて、「おいしい給食」を熱望してくださるお客様に恩返しをしたい、その一心でこれまでも、そして今作も創り切りました。本当にお客様からはいろんなことを学ばせていただきました。

大原:私は「Season3」から参加させていただいた身なので、今日の舞台あいさつで改めてたくさんの方に愛されている作品なんだというのをより感じました。ここまで真ん中に立って、作品を背負われて、引っ張ってくださっている市原さんの存在があるからこその景色だったと思うので、今日同じ舞台に立たせていただいたことを光栄に思います。

田澤:(会場に足を運んだお客さん自作の)「おい給」とか「給食愛」って描かれたうちわを見ていると、それは「Season1」「Season2」と作り上げてきた市原さんや現場の方々がやってきた努力の結晶で、本当に作品が愛されているのを感じました。たくさんの方に観ていただけるとなると緊張するんですけど、お客さんに届くのがとても楽しみです。

■市原隼人&大原優乃が田澤泰粋にびっくり!

――「おいしい給食」はドラマシリーズからの映画化ですが、ドラマと映画では作品へのアプローチ方法は変わるのでしょうか? また、違いを感じたところはありましたか?

市原:僕は変わります。やっぱり映画は特別感があると思っていて、お客さんが映画館で楽しみたくなるような意義を作らなきゃいけない。さらに、映画では必然的に物語性が深く掘られていて、ドラマでは見ていただけないそれぞれの登場人物の表情も見ていただけますし、甘利田先生としてもより多くの面を見せていきたいので、もう1個ギアを上げます。

大原:今回、映画を拝見した時に、ドラマと同じ世界観で同じキャラクターのはずなのに息遣いだったりとか、足音までもがお芝居としてより鮮明に散らされていて、映画ならではの魅力が詰まっているなと思いました。

田澤:映画になるとシリアスなシーンが増えてくるので、難しいシーンもたくさんあったんですけど、市原さんにアドバイスをいただいたり、スタッフの皆さんに雰囲気を作っていただいて、僕にできる最大限の演技ができたかなと思います。

――田澤さんが特に難しいと感じたシーンをネタバレにならない範囲で教えてください!

田澤:シーン35の海辺の道の…。

市原&大原:すごい…!

田澤:(照れ笑い)。ケンが甘利田先生に自分の気持ちを伝えるけど、本当に伝わっているか分からないという中学生ならではの心情が表れたシーンで、台本をもらった瞬間からずっと考えてきて、綾部監督ともずっと話してました。とても難しいシーンで、そのシーンの撮影日もずっとそのことが頭から離れない1日でした。

市原:今までドラマにも無かった、粒来ケンが給食に対する本当の気持ちを吐露してしまう、ちょっと感情的になってしまうシーンなのですが、それを甘利田がどのように受け止めるかという…その日、僕の近くにいた泰粋が小さい声で「来た!」って言ってて、あぁ、ずっとこのシーンを構えてたんだなって。本当にすてきなシーンで、今だからしか撮れない、当時14歳の多感な泰粋にしかできない芝居を演じていて、たくさん学ばせていただきました。

■市原隼人「一緒に過ごさせていただいたことは、僕の財産」

――ドラマから映画とシリーズが続いていく中で甘利田先生と愛先生、甘利田先生と粒来君の関係にも変化が起きました。皆さんは、お互いの印象に変化はありましたか?

市原:優乃ちゃんにはまだ、多くの方々に知ってもらえてない面がたくさんあるのではないかと思いました。自分の撮影シーンが終わってからも「もう少し作品を見させてください」「勉強させてください」って仰って撮影現場に残られていたんです。こんなに真摯(しんし)に目の前の作品と向き合っている方は僕は初めてだったので、本当にすてきな方だなと思いました。

同時に、現場で技術スタッフや制作スタッフ、生徒たちや全ての共演者、どんな方に対しても分け隔てなく変わらない愛情で接していて、みんなから愛される方だったんです。いつどんな時も笑い声ですぐどこにいるか分かる(笑)。そんな天真らんまんな笑顔が僕はすごく大好きで、その笑顔に救われた方たちが今回の現場にはたくさんいたと思います。大原優乃にしかできないことがたくさんあって、僕も胸を借りてましたし、だからこそ引っ張っていけた部分もあります。すごく敏感で繊細な感情を持っている方で、ちょっとした芝居のズレも感じていただけて。一緒にお芝居をさせていただいて安心感を持たせてくれる。それはずっと変わらなかったです。

泰粋は初対面の時、その年齢ならではの緊張感を持っていて、もう僕にはできないお芝居をたくさん持っているのだろうと。僕は何をしても勝てないと思ってしまうほどでした。周りにも流されず、誰かに言われて何かをやらされるのではなく、つねに前のめりで、自分のやらなければならないことを模索して、やるべきことをしっかりやる。すごく真面目で純粋なんです。そんな姿を見て、すごく奮い立たせられました。この二カ月、青春の大事な期間を一緒に過ごさせていただいたことは、僕の財産です。

あと、食べることが本当に大好きで、撮影が終わってからも食べてる姿を見ると、その人間臭い姿にもほれちゃいました。変に作ることなく、リラックスしている姿を見ると、もっと楽しんでほしい! もっと楽しんでほしい!って。本当は仕事なんかしなくていい14歳が、どうやったら現場をもっと楽しんでくれるんだろうということをずっと考えながら、現場に来たくなるような現場を作りたいと奮闘していました。

大原:愛先生は甘利田先生に対していろんな気持ちの変化があったんですけど、私としては市原さんに対しての変化はないんです。現場に入ってすぐの頃から今も市原さんの姿は変わらずで、カチンコがなる直前まで役と向き合い続けてらっしゃって…こんな役者になりたいなって思うような姿をたくさん見せていただいて、財産だなって思っています。撮影が終わってもう1年くらい経っているんですが、この1年間もご一緒させてもらった時間を思い返して、奮い立たせてもらう瞬間がたくさんあったので、これからもずっと救われるんだろうなって思っています。

田澤:(かみ締めるように)市原さんは、ずっとかっこいいです!

市原:いやいやいやいやいや!

大原:(笑)。

田澤:とにかくかっこよくて、優しくて…市原さんが役に入る瞬間は、心の切り替えが必要だなって僕までもが思う場面が何度もありました。あと、ずっと役のためにできることをされていて、映画の撮影の休憩中にも筋トレをしていたり、そういうところもすごいなって思ってました。

■田澤泰粋「いや、もう本当にかっこよくて…」

――お三方といえば、シリーズ内でおなじみの甘利田先生が近距離で迫ってくるシーンがありますが、撮影現場での様子はいかがでしたか?

大原:やっぱり画面で見るよりも迫ってくる迫力がすごくて、気持ちがひよってしまって後ろに下がるとまた詰めてこられたので…(笑)。

市原:危ないヤツじゃん(笑)。

大原:最初は愛先生の弱さを表現してひるんでしまったんですけど、映画ではその距離感の変化を表せていると思います。でも、私たちは迫ってくる甘利田先生の姿にある意味ちょっと慣れているかも知れないけど、ゲストでいらっしゃる方は…。

市原:そうですね。みんな避けて…でも、避ければ避けるほど僕が詰めるので(笑)。

田澤:僕はドラマで見ていたシーンだったので、まず最初にうれしいっていうのがあって、あとはかっこいいなって…。

市原&大原:(笑)。

田澤:いや、もう本当にかっこよくて…迫力もすごくて、熱気もすごいので役としてできることをしっかりと考えたうえでかっこいいなって思って見てました。

市原:今の時代は、顔と顔を突き合わせる時間も少なくなっているので、時代の象徴としてわかりやすいんですよね。コメディーだけど、本質を捉えている甘利田の距離感…より相手の奥に踏み込んで、しっかりとひざを突き合わせて話し合う時代を象徴したアプローチとして僕は作ってました。

――ゲストの方がためらっている感じって伝わってきますか?

大原:みんな最初は笑っちゃうので、それを見て「ですよね!」って(笑)。でも、確かにあのシーンはうれしいです。これだこれだ! ってなりました。

■市原隼人「やっぱり給食は楽しい時間であってほしい」

――これまで、数々のおいしい給食が出てきましたが、今回は「おいしくない給食」が登場します。実際に食べてみていかがでしたか?

市原:給食には栄養面や経済面、後世に残しておきたい食材や文化も含めて、いろんな方が考えて、いろんな食材を子供たちに食べてもらいたいという切実な思いが込められていると思いました。ですが、その思いも無理に押し付けることで傷付けてしまう人もたくさんいる…どんなことにおいても押し付けることはダメなことだと感じました。

「食」は生きるうえで欠かせないことだと思います。食材をおいしく食べるために煮たり、焼いたり、蒸したりしているのは、地球上に人間だけだと思うんです。おいしく食べるために工夫していることには必ず意味がある。給食の在り方をいろいろ考えさせられました。大人でも食べたくないものは食べたくないって思いますし、やっぱり給食は楽しい時間であってほしいです。

大原:それぞれの価値観がぶつかるシーンだったので、「おいしくない」「おいしい」を通り越して、切なかったですね。それぞれがおいしくない給食を目の前にして歌う校歌のシーンも印象的でした。

田澤:おいしくない給食でもあって、楽しくない給食でもあったので、いつも食べている給食がどれだけ幸せで楽しいかというのを改めて実感しました。

――今作はタイトルにもあるように、甘利田先生が念願のイカメシにたどりつけるのか…つけないのか…が描かれます。そちらにちなみ、皆さんにとって憧れの食事や思い出のご飯はありますか?

市原:僕は定番になってしまうのですが、母が作ってくれたご飯が食べたくなります。実家に帰った時に作ってくれるご飯はすごく安心しますし、よりおいしく感じます。料理そのものもそうですが、環境やその食事を誰と共有するかでおいしさも変わってくると思うので、食の大切さをいつも実家に帰るたびに感じています。おなかがいっぱいでも食べたくなってしまう。食事を通して体調もメンタル面も改善してしまう。そんなことができる「食」ってすごいと思いながら、この間も母のご飯を食べてました。

――大原さんも今、強くうなずかれていました。

大原:私もお母さんのお弁当が浮かんでいますね。私、小学校が給食で、中高がお弁当で、中高は購買で買ったりすることもあったんですけど、やっぱりお母さんのお弁当が好きで、甘えて毎日作ってもらっていました。お母さんのお弁当って、学生の時しか食べられないので、思い出ですね。

田澤:僕は、お母さんが作ってくれるローストビーフと…。

市原:すごい!

大原:えぇぇ!

田澤:あと、お父さんが朝作ってくれる汁もの? みそ汁とかそういうのが思い出に残っていますね。今、高校生になって朝練がないんですけど、中学の時は部活で朝練があって、朝、気づいたら汁ものが作ってあって…その時は当たり前に感じていたんですけど、今考えるとそれって本当に幸せなことだったんだなって思います。汁ものを飲むと頑張っていた部活のことも思い出して、いつまで経っても忘れられない味になってます。


■市原隼人「希望となるような存在でありたい」

――今作は、本当に涙あり、笑いありでした。お三方が「ここが好き!」「ここに注目してほしい!」というシーンやセリフがありましたら教えてください。

市原:僕のセリフではないのですが、「甘利田先生はシンプルだけど、世の中はシンプルではない」というようなセリフがあるんです。そのセリフが今作の全てを象徴しているように思えて…シンプルで当たり前なことが通じない社会がある。そういうものに打ち勝っていかなきゃいけない。でも、子供たちが飲み込まれてしまうかもしれない。そんな時に、甘利田先生がそれを助けてあげられる希望となるような存在でありたいと思いながら「Season3」を作りました。

大原:印象深いシーンで言うと、甘利田先生とのシーンで“エビぞり”になっているシーンですね。あそこのシーンは王道のロマンスのシーンではなく、違った意味のラブシーンになっていて、自分でも衝撃的で体を張ったシーンでした。

田澤:最後のエンドロールでローラースケートをやってるシーンは、甘利田先生とケンの友情が表れているような長い1カットだったので印象に残っています。ローラースケートは結構練習しました。

■大原優乃「この作品に出会えたことを感謝しています」

――最後に公開を楽しみにされているファンの皆さまにメッセージをお願いします!

市原:今できる自分の全てを尽くして、今作を制作いたしました。お客様に必ず楽しんでいただける唯一無二のコメディーでありながら、しっかりとした社会派としてメッセージが詰められた作品になっています。ぜひ、劇場にお越しください。

大原:笑っていたはずなのに気づいたら涙しているような、給食を通して起こるさまざまなドラマの中にいろいろなメッセージが込められている作品です。おこがましいですけど、私にとっての代表作と思っているくらい大好きで大切な作品なので、改めてこの作品に出会えたことを感謝しています。1人でも多くの方に届くことを願っています。

田澤:ドラマを見ていた方でも、見ていなかった方でも絶対に楽しめる映画だと思っていますので、多くの人に何回でも見ていただけたらなと思います。